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《新型肺炎》口元が見えるマスク開発、聴覚障害者の意思疎通改善に


ニュース 社会 作成日:2020年8月17日_記事番号:T00091615

《新型肺炎》口元が見えるマスク開発、聴覚障害者の意思疎通改善に

 新型コロナウイルス感染状況が落ち着いた防疫新生活でも、公の場でのマスク着用が求められている。ただ聴覚障害者にとって、マスクを着用している人は表情や口の動きが読み取りにくく、コミュニケーションに困難が生じやすい。そこで、桃園市のマスクメーカーが、口元が透明なマスクの開発に取り組んでいる。

 聴神経に先天的な障害がある台北市のある中学生は、補聴器を使用しているものの、会話で正確に聞き取れるのは3割程度で、残り7割は相手の表情や唇の動きによって発言の内容を理解している。ところが、最近は教師を含め全員がマスクを着用しているため、授業の内容が理解できず、学業に遅れが生じているという。

 重度の聴覚障害者の20歳の女子大学生も、両耳に補聴器を装着しているが、授業ではマスクを着用している教授の話が聞き取れず、他の学生との話し合いにも付いていけず、つらい思いをしている。仲の良い友人は唇の動きが見えるようにマスクを外して話してくれるが、他の学生には頼みづらく、言い出せずにいるそうだ。

 新型コロナウイルス感染症の流行が深刻化し、大学などでオンライン授業が増えた際にも、録音や通信の質が悪かったり、教師がマスクを着用していたりして、聴覚障害者の理解に困難が生じた。

 こうした状況を受けて聴覚障害者支援団体、蒲公英聴語協会が、海外で導入されている透明なマスクを生産してほしいと政府に陳情した。すると、桃園市のマスクメーカー、台湾康匠製造(台湾・コンフォート・チャンプ・マニュファクチャリング)が名乗りを上げた。

 台湾康匠の陳勇志総経理は7月中旬、手作りした試作品を数種類携えて、蒲公英聴語協会の謝莉芳理事長や聴覚障害がある子供たちと面会。感染予防とコミュニケーションを両立するマスク開発について話し合った。

 その結果、台湾康匠はまず飲食業で飛沫(ひまつ)防止に使用される曇り止め付きプラスチックシールドを使用した製品をテストし、その後、通気性や唇の動きの視認性、見栄えを考慮し、改良を重ねた。

 多くの企業が市場が小さすぎるとして透明マスクの生産をためらったが、台湾康匠の陳総経理は、透明マスクは聴覚障害者だけのものではなく、周囲の人が着用するものと指摘した。マスクを着用しても表情が分かるので、飲食、医療などのサービス業でも期待が高まっている。

 陳総経理は年内に発売し、量産化で8~10台湾元(約29~36円)まで価格を下げたいと考えている。