中華電信の新董事長である呂学錦氏は就任初日の20日、「当社は今後、LTE(Long Term Evolution)技術の発展に力を注ぎ、新たなサービスを展開する」という方針を表明した。LTEは現在、世界の通信市場で経済部の推進するWiMAX(ワイマックス)と新世代4G(第4世代)ネットワーク技術で主流の座を争っており、通信業最大手の中華電信がLTE支持の姿勢を示したことは、今後域内WiMAX事業の発展に少なからぬ影響を及ぼすとみられる。21日付工商時報が報じた。
引き継ぎ式で賀陳旦前董事長(左)から社印を受け取る呂学錦新董事長(右)(20日=中央社)
呂董事長は今後の事業展開について、最優先業務として本業であるICT(情報・通信に関連する技術の総称)事業と二酸化炭素(CO2)排出量削減に取り組むと語った。通信事業については、引き続き3.5Gサービスを展開するほか、LTE推進の方針も明確にした。ただ、LTEサービス展開のタイムテーブルについては、「未定だ」と語った。
「LTEは世界的趨勢」
世界の通信業界では、英ボーダフォン、米AT&T、米ベライゾン・ワイヤレスがLTEを採用しており、中国の中国移動通信(チャイナ・モバイル)も既に「LTEの発展に全力を尽くす」と宣言している。中華電信の石木標協理は、「世界的なモバイル通信市場の趨勢から見て、LTEへの支持表明は当然」と語った。ただし、「中華電信は、(WiMAXの普及に向け経済部工業局が推進する)『M(モバイル)台湾計画』にも関与しており、国家の発展への協力という立場から、今後WiMAX事業に参入する可能性もある」との考えも示した。
域内大手キャリアでは、昨年7月に経済部が実施した競争入札でWiMAX事業権を落札した遠伝電信(ファーイーストーン・テレコム)はWiMAX支持、台湾大哥大(タイワン・モバイル)はまだ支持対象を明確にしていない。
中華電信は、昨年のWiMAX事業権入札には参加したものの、入札金額が低く落選した。しかし市場の観測によると、中華電信の内部ではWiMAXの将来性に疑問の声が強く、入札価格を意図的に低く抑え、落選の結果も喜んだとされている。同社はこれまで、ベトナムなど東南アジアでWiMAX事業を推進する可能性を示唆しているが、これは最大株主である交通部への配慮だとみられている。
総経理制に移行へ
呂董事長はまた、企業の所有権と経営権の区別を明確にするため、これまでのように董事長が総執行長(CEO)を兼任せず、新CEOは今回副総経理から昇格した張暁東総経理が兼任すると表明した。これまで同社の経営は董事長が担ってきたが、今後は総経理主導の経営体制に移行するとみられる。呂董事長は、「株主側に立った出資者の役割を全力で果たし、張新総経理との間で政府の政策とコーポレートガバナンスのバランスを図っていきたい」と語った。CEOに就任する張新総経理は、海外支店での勤務経験があり、モバイル通信業務に長けているとされる。