独ビオンテック（ＢＮＴ）の新型コロナウイルス感染症ワクチンの台湾向け販売代理権を持つ中国の上海復星医薬は11日夜、子会社が、▽台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）、▽鴻海精密工業、▽鴻海系の慈善団体、永齢基金会、▽委託先の裕利医薬（ワクチン輸入資格を持つ医薬メーカー）──との間で、メッセンジャーＲＮＡ（ｍＲＮＡ）ワクチン合計1,000万回分を販売する契約を締結したと発表した。早ければ９月にも初回出荷150万回分が台湾に到着する。行政院の羅秉成・報道官は12日午前、ＴＳＭＣと鴻海に謝意を示すとともに、政府が米モデルナの次世代ワクチンを2022～23年に各1,500万回分追加購入する考えを示した。12日付工商時報などが報じた。

ワクチン接種の様子。中央流行疫情指揮センター指揮官の陳時中・衛生福利部（衛福部）長は11日、ビオンテックのワクチンについて、一部を12～18歳の青少年向けに充てると語った（12日＝中央社）

　ＴＳＭＣと鴻海は12日午前、ビオンテックの新型コロナワクチン各500万本を衛生福利部疾病管制署に寄贈すると発表した。寄贈額はそれぞれ最大１億7,500万米ドル相当の見通しで、ワクチン調達やコールドチェーン（低温物流）、保険などを含む。経済日報などによると、ワクチン１回分当たり30米ドル、コールドチェーンなどの費用を合わせて31～34米ドルとなるようだ。

　仏教系慈善団体の仏教慈済慈善事業基金会（慈済基金会）が６月下旬に申請していたビオンテックのワクチン500万回分の輸入申請についても行政院の羅・報道官は10日、９日に必要な法的書類に署名したと説明した。

　工商時報によると、ＴＳＭＣ、鴻海、慈済基金会の各500万回分、計1,500万回分は、来年２月までの台湾到着が見込まれる。９月に150万回分、10～12月に毎月250万回分、来年１月と２月にそれぞれ300万回分の出荷スケジュールで合意しているとされる。

　契約済み・予定の海外メーカーのワクチンは計3,970万回分（モデルナの次世代ワクチンを除く）となり、全てが到着すれば、海外メーカーのワクチンだけで台湾の全人口2,350万人の84％が２回接種でき、集団免疫を獲得できる見通しだ。

ワクチン接種率14％に

　中央流行疫情指揮中心（中央流行疫情指揮センター）は12日、現時点のワクチン接種人数は延べ350万人で、全人口の14.5％に上り、７月末には25％に達するとの見方を示した。

　11日付聯合報は、これまでに米国と日本からの寄付と、台湾政府が購入したワクチンで計約700万回分しか到着しておらず、７月末までの目標800万回分に届かないため、日本から３回目のアストラゼネカ（ＡＺ）のワクチン寄付があり得ると報じた。

郭氏「北京当局の干渉なし」

　鴻海の創業者、郭台銘（テリー・ゴウ）氏は12日未明にフェイスブック（ＦＢ）で、ビオンテックのワクチンはドイツからの直送だと説明。契約にこぎ着けたものの、今後も気を緩めず、早く届くよう時期と数量を督促していくと表明した。また、ワクチン調達交渉の過程で、北京当局の指導や干渉は何もなかったと記した。

　行政院は６月18日、ＴＳＭＣと鴻海系の慈善団体、永齢基金会にワクチンメーカーとの直接交渉権限を与えた。これに先駆け、蔡英文・総統は５月下旬、ビオンテックの新型コロナワクチンについて、「契約直前まで行ったが、中国の介入でまだ契約に至っていない」と発言し、台湾のワクチン調達を中国が妨害したとの認識を示していた。

　台湾は昨年、製薬会社の台湾東洋薬品工業（ＴＴＹバイオファーム）の代理権取得や、台湾政府の直接購入で、ビオンテックのワクチン購入を目指したが、いずれも不調に終わっていた。

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