ニュース 法律 作成日:2021年10月27日_記事番号:T00099190
台湾では、営業秘密の侵害による刑事告訴は通常は成立しません。しかし、その民事責任については異なる結果となる場合があります。
研磨剤メーカーの研究開発(R&D)部門の副総経理、李為成は、2017年5月18日、同社サーバーから8,000件を超えるファイルをダウンロードし、私物のハードディスクにセーブしました。17年9月12日、人事部から13日に会議があることを伝えられた後、同様に9,000件を超えるファイルをセーブしました。
会社側は翌日の会議時に、李に降格か離職の二択を迫りましたが、李がどちらにも応じなかったため、9月19日付で李を有給で停職とし、調査をした後、10月11日付で解雇を通知しました。
李はこれについて、離職手当と給与相当分の292万台湾元(約1,190万円)の支払いを求め、訴訟を提起しましたが、新竹地方法院(地方裁判所)は19年5月に訴えを棄却、台湾高等法院(高等裁判所)も20年5月に控訴を棄却、そして21年9月には最高法院(最高裁判所)も上告を退けました。
労働契約の範囲
台湾高等法院は判決で次のように説明しています。
1.被告企業の就業規則、係争データ管理規則、情報管理規則などの内容は、どれも法律上の強制または禁止規定に違反したものではなく、双方間の労働契約の一部であり、双方を拘束する効力がある。
2.原告は、同社内部技術レポート、研究開発中の研磨液の成分資料、製造コスト計算表、顧客側の研磨条件などを含む高度な商業価値のある機密データを、二度サーバーから個人のメディアにコピーし、規定に違反した。
3.「重大な状況にある」かどうかは、労働者の違反行為の態様、初犯か累犯か、故意か過失か、雇用主または営業所に発生した危険または損失、商業競争力、内部秩序と規律の維持、労働関係の緊密の度合い、就任からの期間の長短などから、懲戒性解雇の妥当性が判断される。
4.本件事実は明らかに「重大な事情」を構成するものであり、雇用主による解雇は合法である。
徐宏昇弁護士
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