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第325回 機密をダウンロードしたことによる解雇/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年10月27日_記事番号:T00099190

第325回 機密をダウンロードしたことによる解雇/台湾

 台湾では、営業秘密の侵害による刑事告訴は通常は成立しません。しかし、その民事責任については異なる結果となる場合があります。

 研磨剤メーカーの研究開発(R&D)部門の副総経理、李為成は、2017年5月18日、同社サーバーから8,000件を超えるファイルをダウンロードし、私物のハードディスクにセーブしました。17年9月12日、人事部から13日に会議があることを伝えられた後、同様に9,000件を超えるファイルをセーブしました。

 会社側は翌日の会議時に、李に降格か離職の二択を迫りましたが、李がどちらにも応じなかったため、9月19日付で李を有給で停職とし、調査をした後、10月11日付で解雇を通知しました。

 李はこれについて、離職手当と給与相当分の292万台湾元(約1,190万円)の支払いを求め、訴訟を提起しましたが、新竹地方法院(地方裁判所)は19年5月に訴えを棄却、台湾高等法院(高等裁判所)も20年5月に控訴を棄却、そして21年9月には最高法院(最高裁判所)も上告を退けました。

労働契約の範囲

 台湾高等法院は判決で次のように説明しています。

1.被告企業の就業規則、係争データ管理規則、情報管理規則などの内容は、どれも法律上の強制または禁止規定に違反したものではなく、双方間の労働契約の一部であり、双方を拘束する効力がある。

2.原告は、同社内部技術レポート、研究開発中の研磨液の成分資料、製造コスト計算表、顧客側の研磨条件などを含む高度な商業価値のある機密データを、二度サーバーから個人のメディアにコピーし、規定に違反した。

3.「重大な状況にある」かどうかは、労働者の違反行為の態様、初犯か累犯か、故意か過失か、雇用主または営業所に発生した危険または損失、商業競争力、内部秩序と規律の維持、労働関係の緊密の度合い、就任からの期間の長短などから、懲戒性解雇の妥当性が判断される。

4.本件事実は明らかに「重大な事情」を構成するものであり、雇用主による解雇は合法である。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw