(一般公開)台湾自動車産業の発展戦略


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2013年10月3日

機械業界 自動車・二輪車

(一般公開)台湾自動車産業の発展戦略

記事番号:T00062503

台湾自動車市場は横ばい、
完成車輸出は大幅成長

 2012年の台湾自動車市場は、経済成長の鈍化により需要が低下したものの、販売業者の強力なキャンペーン推進により、年間販売台数は36万5,800台と前年比3.3%の小幅減にとどまったが、2009年から3年続いていたプラス成長は止まった(図1参照)。なお、2013年の販売台数について業界関係者は、36万台前後を維持すると予測している。

 一方、台湾自動車部品産業の12年生産額は2,200億台湾元余りで過去最高を記録。さらに今後も成長が継続する見通しだ。また台湾からの完成車輸出は09年以降、大きく成長しており、12年も前年比29.4%増の7万1,000台と過去最高を更新した。さらに13年には8万台を突破する可能性もあると予測されている(図2参照)。



カーエレとEVが新たなチャンスに

 自動車のスマート化が大きな流れとなる中、ICT(情報・通信に関連する技術の総称)産業において優れた基盤を持つ台湾の車載電子機器(カーエレクトロニクス)産業は、2012年生産額で前年比9.1%増の1,124億台湾元と5年連続のプラス成長を記録。また近年、世界の主要国が電気自動車(EV)産業の発展を図る中、台湾政府も「智慧電動車発展策略行動方案」(スマート電動車発展戦略アクションプラン)を策定し、現在、全土各地の道路でEVの走行テストが進められている。これにより、動力システムなど主要部品、自動車用スマート機器といったEV向け製品の需要増が見込まれている。ただ、世界のEV市場へ切り込んでいくには、製品の応用実績を積み上げること、および中核技術の向上が必要となる。

それぞれの強みを生かした中台協力

 台湾自動車産業の強みは、十数年にわたる欧米市場への輸出経験で培った部品の設計・製造能力、および高品質な生産管理能力と柔軟な生産体制、政府支援に支えられたイノベーション能力、長年にわたるICT産業の蓄積といった面にある。こういった強みはカーエレクトロニクスやEV市場が拡大すれば大きな有利となる。一方、中国の自動車市場規模は年間2,000万台を超えており、同国は世界最大の自動車生産・販売国となっている。ただ、長く外国資本の影響を受けてきたため、現在も海外メーカーからの技術的支援が必要で、中国の独自ブランドは依然発展の途上にある。このため、同国が単なる巨大市場から独自の競争力に立脚した「自動車大国」となるにはまだ一定の期間がかかるとみられる。

 このように台湾と中国の自動車産業は異なる課題を抱えているが、双方の協力には高い将来性が期待されている。それぞれが部品の設計と製造を分担する独自ブランドを立ち上げ、共同で研究開発、製造、マーケティングを進めれば、台湾メーカーは中国へと市場を拡大でき、新たな発展のチャンスが見込める。また各企業の投資計画や経営に広がりが生まれ、台湾の自動車関連産業にさらなる経済力の向上や市場創造の可能性が生まれる。

 自動車関連業における中台協力は現在、以下の3タイプに分けられる。いずれも双方の強みを生かし、「ウィン・ウィン」の関係を目指すものだ。
1.中国自動車メーカーと台湾カーエレメーカーの協力。台湾メーカーがICT技術、EV動力システム、車載ネットワーク・システムなどを提供する。
2.中台自動車メーカー同士の協力。中国に工場を設置し、台湾メーカーの高品質な部品を使用して製造する。
3.中国バスメーカーと台湾車体メーカーおよび組み立てメーカーの協力。台湾で組み立て、世界へ向けて輸出する。

台湾自動車産業の発展戦略

 台湾自動車産業は近年、独自ブランドの立ち上げ、および完成車輸出の強化により業界全体のアップグレードを図っており、一定の成果を挙げている。以下では▽完成車▽カーエレクトロニクス▽電気自動車(EV)▽自動車産業全体——4項目に分けて発展戦略を論じていきたい。

完成車
1.台湾自動車市場は既に飽和状態となっており、2012年の余剰生産能力は20万台分に上った。このため、積極的な海外市場の開拓による稼働率の引き上げが必須となっている。例えば、年間27.5万台を超える自動車を輸入しているサウジアラビアは台湾にとって優良な輸出先となり得る※。(※2012年に台湾から輸出された自動車7.1万台のうち、大半を中東向けが占めた。)

2.台湾政府は現在、海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA、台湾と中国が締結した自由貿易協定)を基に、自動車産業において▽中核技術での提携▽認証の簡略化▽互恵貿易▽規格と規制のすり合わせ▽EVのテスト運用——といったトピックで中国側と協議を進めている。これが実現すれば、年間2,000万台超の中国市場が手に入ることになり※、台湾の自動車ブランド、省エネ車、カーエレ業界にとって大きなチャンスにつながる。(※中国市場でシェア1%を獲得するだけで、台湾自動車産業の余剰生産能力20万台が解消する。)

カーエレクトロニクス
1.急速に成長する新興国の自動車市場においては、価格重視の消費者が大半を占める中、研究開発およびコストコントロールに強みを持つ台湾メーカーは、地場自動車メーカーと提携して、低価格かつ高性能なカーエレクトロニクス製品を開発することが可能だ。カメラを使った安全システムやマルチメディアシステムのODM/OEMによる、東南アジア諸国連合(ASEAN)や「BRICS」(ブラジル、ロシア、インド、中国)市場参入が例として挙げられる。

2.新興国では自動車市場の急成長に伴い、今後アフターマーケット(AM)の拡大も予想される。中国ではここ数年の自動車市場の急速な成長を受けてAM需要も伸びており、その成長率はODM/OEM市場を上回っている。このため、台湾のAM向け中小メーカーは、こういった市場にいち早く進出して販路を確立すれば、大きな業績成長が期待できる。

3.世界カーエレクトロニクス業界の動向調査によると、省エネ、安全性、車載ICTが業界の主流となっている状況がうかがえ、台湾の関連メーカーはこの3分野における技術開発に注力して市場のトレンドと商機をつかむことが望ましい。

電気自動車
1.バッテリー式電気自動車(BEV)の普及が予想されたほど進んでいない中、世界の自動車メーカーはプラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)、航続距離延長型電気自動車(REEV)、電動バス(Evbus)、高汚染業務用車両の改造など電気自動車関連の開発で多様な取り組みを行っている。台湾メーカーは機を逃さずにハイブリッド動力システム、動力用バッテリー、モーターなど中核部品の技術向上や商品化を進め、いち早くビジネスモデルを確立すべきである。

2.電気自動車の生産コストが高水準にとどまる中、貨物税(物品税)やナンバープレート税の減免が販売価格の引き下げによる消費者の購買意欲向上には有効だ。また、政府や国営企業が率先してスマート型EVのリースを行うことが市場の拡大や温室効果ガス削減につながる。

3.世界的な流れに倣い、EV関連メーカーやユーザー企業による充電設備の設置に対する支援、電気バスの運行エリア拡大などの政策を実施することで、EVの将来性を示し、市場における受容度を高めることができる。

4.産官学のリソース結集、健全な利用環境の構築、技術開発力向上への支援、十全な認証体制の整備がEV産業の永続的発展につながる。

自動車産業全体
 台湾では既に、政府が太陽光発電、LED照明、風力発電、バイオマスエネルギー、水素・燃料電池、エネルギーに関するIT技術、省エネサービス、EVなどを促進する「緑色能源産業旭升方案(グリーンエネルギー産業サンライズプラン)」を推進し、同産業の発展を政策的に支援している。ただ、世界的に競争が熾烈となる中、台湾自動車業界はグリーンエネルギー関連の中核技術をいち早く掌握し、完成車、カーエレ、EVの各産業における競争力を強化しなければならない。以下に、台湾自動車産業の進むべき道を5項目に分けて指摘する。

1.政府の政策的バックアップの下、産官学の各界で▽「グリーンEQ」(省エネ・環境保護などへの意識)育成▽「グリーンデザイン」(環境にやさしいデザイン)の創造▽「グリーン材料」の使用▽「グリーン生産」の実施——を図り、「グリーエネルギー」および「グリーン経営モデル」の自動車への応用を進める。

2.発電と送電効率を向上させ、再生可能で低炭素、かつゼロエミッションのグリーンエネルギー利用を推進する。また風力発電、太陽電池、水素燃料などのEV充電スタンドやバッテリー交換スタンドへの活用を模索するほか、高効率なスマートグリッドを構築して利便性を高めるとともに、電力使用のオフピーク活用などを進める。

3.世界の環境保護・省エネ関連法規や産業規格を把握し、世界およびエリア経済共同体の標準規格策定に参与する。

4.さまざまな研究開発(R&D)および認証プラットフォームを活用し、重要部品、システムの応用、完成車の開発などに関する技術力強化、製品規格の把握、サプライチェーンの強化に注力する。

5.先進国や業界をリードする企業の経験と技術を獲得に向け、「適切な」パートナーを獲得すれば、中核技術、経営経験の取り込み、「適切な」ビジネスモデル構築にメリットが見込めるほか、インフラ整備、運転環境の改善、テスト走行、普及促進、充電設備の低炭素化などをテーマに交流や相互協力を進めることが可能になる。

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