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【ワイズリサーチ】台湾工作機械業界——欧州工作機械展示会
「エモ・ハノーバー2013」での啓発


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2014年3月6日

機械業界 電機機械

【ワイズリサーチ】台湾工作機械業界——欧州工作機械展示会
「エモ・ハノーバー2013」での啓発

記事番号:T00062590

一.世界工作機械産業の発展

 台湾工作機械業界にとって、2013年は国際金融危機後の2009年以来最も波瀾万丈な一年であったといえよう。EU(欧州連合)の財政問題、米国の景気不安、日本円の切り下げ、さらに中国のGDP(国内総生産)がわずか7.5%に留まるなど世界経済の緩やかな減速が影響し、台湾工作機械業界の13年生産額は前年比8.3%減に落ち込むと予測されている。

 13年9月16〜21日、ドイツ・ハノーバーで欧州工作機械展示会「エモ・ハノーバー2013」が開催された。今年のテーマは「インテリジェントプロダクション(Intelligence in Production)」で、各国メーカーが工作機械製品、関連ソリューション、サービスを展示した。当展示会の責任者であるクリストフ・ミラー(Christoph Miller)によれば、取引先が世界中に点在している今、工作機械メーカーは各地に同じ水準の技術力を持つ生産拠点が必要である。生産拠点がどこであれ、クライアントにとって効率、品質、柔軟性のある生産能力、供給力が成功の基盤であり、さらにコストパフォーマンスが受注を左右する。これを実現するのは、工作機械メーカーのインテリジェント製造システムである。今後、世界の工作機械メーカーはより高い技術力を以てグローバル展開する取引先のパートナーという役割を演じることとなる。

 2014年、台湾工作機械業界は中国の産業構造の再構築と生産能力の過剰という状況に直面するだろう。台湾メーカー各社は「エモ・ハノーバー」で発掘した商機で、次の展開を計画するべきである。

二.「エモ・ハノーバー2013」
3つのアピール
 世界の製造業テクノロジーの未来に向けて、「エモ・ハノーバー2013」では3つの軸が掲げられた。

1.スマートな製造(Smarter manufacturing)
 「エモ・ハノーバー2013」がメインテーマとして「インテリジェントプロダクション」を掲げていることからも、製造業のスマート化がこれからますます重要となってくることが分かる。スマート化を加速させるには、生産設備の改善、つまり機械そのものに対する概念、制御技術、ソフトウエア、工具、製造工程といった点に関するたゆまざるイノベーションが必要である。また設備性能に対する顧客からの厳しい要求も新たな発想の源となるだろう。「エモ・ハノーバー2013」での生産技術スマート化の定義とは、システム内個別のスマート機器がいわゆる「インダストリー4.0」システムと統合できるということである。

 機械設備の進歩と共に機械操作の難易度も高まるが、スマート化された製造システムによって使用者が快適に機能設定できる。理想的なスマート生産システムは、マルチメディア監視システム、ネットワーク診断システム、遠隔支援サービスなど革新的な機能も備えるべきだ。クライアントにスムーズな操作で生産効率をアップしてもらうために、顧客の要望に合わせたトレーニングサービスも重要項目のひとつとなるだろう。

2.「ブルー・コンピテンス」と
省エネ・CO2削減
 本展示会では「ブルー・コンピテンス―より良い未来のために」と銘打ち、欧州工作機械業界とドイツ機械工程業界に省エネと二酸化炭素(CO2)削減を訴え、特別展示エリアに製造業界に必要な省エネ製品とソリューションを展示した。

3.インド市場
 インドは工作機械市場の成長率が最も高い国のひとつである。米調査会社ガードナー・パブリケーションズの調査によれば、12年のインド工作機械業界の輸入額は世界第4位の15.99億米ドルで、世界4大輸入国のひとつとなった。またドイツ工作機械工業会(VDW)の過去5年間にさかのぼる分析では、インドの工作機械市場の売上高は11年の3倍増である26億米ドルで世界7位、重要な輸出相手国となっている。インドは世界の工作機械メーカーにとって商機に溢れた市場である。12年には自動車製造業およびそのサプライヤー、電機・電子部品業、一般機械製造業に20億米ドルの取引をもたらしている。

 ただし、インドにおける業務開拓、輸出取引、経営拠点の成立には、現地状況を考慮する必要がある。「エモ・ハノーバー2013」では、インドの経済、政治、法律、税金制度だけでなく、売買取引、サービス、消費者分析に関する専門家を集めた説明会がVDWによって開かれた。

三.台湾工作機械業界の現状

 13年第3四半期、台湾工作機械業界の生産額は前期比1.5%小幅減、前年同期比8.6%減の354億台湾元と落ち込んだ。また13年第1四半期から、日本円切り下げの影響を受けて台湾製品と日本製品の価格差が25~30%から約10%まで縮小されたため、欧米市場にミドルエンド~ハイエンド製品を輸出する工作機械業者が打撃を受けた。また欧州の債務問題、米国の景気不安により外需市場は縮小している。さらには中国工作機械業界では在庫余剰と生産力過剰が問題となっているが、それらの過剰製品と台湾工作機械業界の主力輸出製品が重複しており、中国市場からの需要減に結びつき当業界に大きなダメージを与えた。このような状況から、台湾工作機械業界の13年生産額は前年比8.3%減と縮小するとみられている。

 13年第4四半期、台湾工作機械業界は中国市場では中国の政策「穏中求進(安定性を維持しながら進歩する)」、さらに6,000億~6,500億人民元にも達する鉄道建設投資に直面した。アジア新興国と東南アジア諸国連合(ASEAN)では各国市場によって需要が異なっている。しかし、新たな課題はやはり日本円の対米ドル為替急落である。この影響は第3四半期末から第4四半期初にかけて徐々に大きくなってきており、例えば最新為替レートを用いて製造された商品が第3四半期末にリリースされても、その時には市場に大きな変動が起きているだろう。さらに、中国機械業界の在庫余剰と生産力過剰も台湾の本業界に悪影響を及ぼしている。

 一方で、円安により部品調達コストが削減されて台湾メーカーの交渉に追い風になっている。また季節サイクルによって第4四半期の生産額が第3四半期より増加する傾向があることから、総合的にみて台湾機械業界の第4四半期生産額は第3四半期を上回る可能性がある。



四.今後の発展

 技術面では、機械、工具および機械部品の開発は加工工程の生産力と効率改善を目指すものである。「エモ・ハノーバー2013」で紹介された様々なソリューションは、特に航空宇宙とエネルギー産業といった成長分野に向けられたもので、キーコンポーネントの製造コスト効率に配慮するものであった。

 工作機械メーカーは今後、より高い柔軟性、より良い品質、製品に関する革新的な概念が必要である。例えば、チタンとその他の材料を使用したエコ設計機械のような商品で、機器、制御システム、駆動コンポーネント、計測器、IT接続器を含む完成機の設計概念から変えていく必要がある。機械の改良と生産系統の統合を通じて、関連する応用領域の製造能力を強化するべきだ。

台湾工作機械業界の完成機メーカーのマイクロ工作機械に対する応用戦略は、研究開発とマクロ工具やスマート化工作機械などのミドル~ハイエンド製品の製造研究に向けられるべきである。工作機械のスマート化によって自動化能力、加工の効率と品質が改善されるだけでなく、人工知能の導入により無人加工が実現できるようになる。その主要機能は下記の通りである。

1.加工のプロセス、ルート、条件を含む変数の自動計算が可能。
2.加工状況を監視して、対応を判断することが可能。
3.学習能力を備えており、加工技術を経験から改善できる。
4.即時性のあるオンライン検査で製品の品質及び均一性を確保できる。

さらに多軸的で複合化された機能の工作機械を開発し、競合会社との技術力に差をつけることで世界市場における台湾工作機械業界の優位性を維持することができるだろう。

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