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【ワイズリサーチ】米国再工業化が台湾製造業へ影響


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2014年9月4日

機械業界 製造業全般

【ワイズリサーチ】米国再工業化が台湾製造業へ影響

記事番号:T00062699

一、先進国の「再工業化」

 金融危機後、米国は世界市場における製造業の地位向上を図って再工業化を推進してきた。表1はその関連政策および方向性である。再工業化の主旨は▽キーテクノロジー▽製造装置▽製品——等の量産技術を向上させる以外に、▽軍事▽自動車▽航空宇宙▽医療機器——等の産業の競争力を強化して製品の開発を加速させ、コストを低減させることでもある。特に「積層製造技術の革新」は、カスタマイズおよびパーソナライズという業界の傾向に沿っており、今後は設計と製造の基本概念を変えて、新たなサプライチェーンを形成するとみられ、現存のOEM(相手先ブランド名製造)事業に衝撃を与えると見られている。



 中国製造業の海外移転および米国政府による再工業化政策により、米国製造業企業が本土復帰して工場を設置する傾向が現れてきており、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査によると、年間営業収益が100億米ドルを超える企業の中で、約48%の会社は米国本土復帰を実行、もしくは前向きに検討しているとのことである。

二.米国の再工業化が台湾に及ぼす影響

 革新的な技術力とシェールガスを武器に、米国経済は再び高度成長期を迎える可能性があり、台湾の輸出および投資環境にも影響を与えると見られている。再工業化による景気好転の恩恵を受けて、 しばらくの間台湾機械設備業界の対米国輸出は顕著に上昇するとみられ、輸出先は多様化し、産業の高度化へ好影響を与えている。なお、米国市場への進出を通じて、台湾企業は早期に積層製造と先端材料を含む商機を掴むことができ、米国で足場を固めてから世界市場へ進出することができるようになる。

 短期的には米国の再工業化が台湾に与えるマイナス影響は少ないものの、シェールガスの採掘により、米国本土の石油化学産業の原材料価格が著しく低下した為に米国プラスチック、農薬、医薬品産業の競争力が強化されたことを受けて、台湾化学材料/化学製品業界の利益は縮小すると見られている。なお、米国本土のサプライチェーンが再工業化を通じて強化されるため、今後台湾企業と米国部品/設備メーカーとの競争が激化するほか、コンピュータ数値制御とファクトリオートメーションの技術が日々改良されることも、台湾のOEM/ODM(相手先ブランドによる設計製造)企業に不利に働いている。

三.台湾製造業界の方向

 2012年台湾製造業界の付加価値率は僅か20.3%にとどまり、30%を上回った米国、日本、ドイツとは大きな差がついている、なお、最近20年間で台湾の製造業景気指数は連続的に下落して、そのマイナス幅は8.9%減にも達し、企業の運営と政策の実施という観点からみて看過できない数字となっている。

 再工業化は失業率を抑えるためではなく、製造業の技術向上および新興国市場への進出こそがその目的である。従って、米国が必要とするのは、▽速度▽品質▽納期▽価格——の全てにおいて優れるパートナーであり、台湾製造業界もこの方向に向かって、下記の方法を通じて発展している。

1.積極的に米国の大学や研究機関と協力して連携開発の機会を模索し、研究開発(R&D)を強化する。
2.長期にわたって、米国のシンクタンクと科学技術/産業政策を中心に交流して、米国に台湾の優位性を伝える。
3.米国企業と連携協力する。
4.特定分野の研究開発を強化する。例をあげれば、米国サプライチェーンへの参入および中南米の商機を模索し、ラウドサービスやインテリジェント製造システムを含むICT技術および積層製造を中心に強化する。

四.結論

 再工業化の実施に伴い、中国から米国へ移転する国際企業は益々増えており、国際分業体制における台湾の地位を維持するために、業界はこのサプライチェーンの変革で足場を固める必要がある。米国企業との連携協力を通じて、実力をつけて産業構造の調整を加速させる以外にも、台湾は先進製造に関する人材を育成して、業界と学界の連携を促進させる必要がある。

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