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【ワイズリサーチ】世界に広がるロボットブーム、
台湾産業の対処は?



リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2014年9月18日

機械業界 自動化・ロボット

【ワイズリサーチ】世界に広がるロボットブーム、
台湾産業の対処は?


記事番号:T00062709

ロボット産業サプライチェーンは既に整い、政府のバックアップを待つのみ

 世界各国はロボット産業の将来性に期待しており、台湾も数十年に渡って関連サプライチェーンの基盤を築いてきたが、政府、企業、労働者たちは本当に準備が整ったのか。

 ロボットブームは止まるところを知らず、各国政府はそれに応じてさらに資金を追加投入しているが、台湾政府はどうであろうか。果たしてロボット産業において、台湾は競争優位性を持っているのだろうか。以上の疑問について、今年7月20日から24日にかけてブラジルで開催された「ロボカップ2014」からヒントを得ることができる。同試合は最大級の国際ロボット競技であり、今年の参加チームは500にも上った。

 ロボカップ2014に参加した台湾の学校は7校で、合計8名の中学生と高校生が参加した。これらの学生は小型ロボットリーグで一位を獲得し、中型ロボットリーグでも最高得点を記録したが、決勝試合の前に失格を宣告されて、競技に参加できなくなってしまった。この事件に関して、主催者がチャンピオンを台湾チームにあげたくない噂もされ、最後は納得のいかない結果となってしまったが、台湾の若い世代の設計力と大きな可能性が同大会を通じて垣間見えた。

台湾の長所:整ったサプライチェーンと優れた技術力

 実際、過去数十年にわたって積み重ねられた製造力、および金属機械、ICT(情報通信技術)、化学産業の整ったサプライチェーンは、すでに台湾ロボット産業に優れた基盤を築いた。例を挙げれば、淡江大学ロボット研究所の翁慶昌教授が指導している院生が作品を提出する場合、院生は部品から研究開発(R&D)を他人に任せず、自分で光華商場に行けば材料をすべて購入できる。カナダに短期研修に行った院生も、バンクーバーで材料を調達する際は、いくつかの場所へ行かなければならなかったと嘆いた。

 「一台のロボットの約36〜40%の部分は、電子部品から構成される。」と台湾電機学科の終身教授の羅仁権は言った。台湾にはファウンドリとIC(集積回路)設計など完備かつ多様であるICT産業があり、ロボット産業の発展に有利に働いている。実際、ロボット産業に関する台湾のR&Dも著しく向上しており、製靴産業の接着剤塗装技術はその実例である。本来、靴はサイズが異なるため、人力で接着剤を塗装する必要があったが、最近このボトルネックが突破され、自動化塗装技術が開発された。

 台湾のサプライチェーンと多種少量生産への対応は、国外企業にとっても魅力的であり、日本のソフトバンクはフォックスコン(鴻海)にロボットのOEM(相手先ブランド名製造)を発注したこともその一例である。今年6月に、フォックスコンは世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」のプロトタイプをリリースした。その価格はわずか19万8,000日本円であることからして、フォックスコンはまさにソフトバンクの孫正義が指摘したように、生産コストの管理が世界一の企業である。

台湾の短所:市場の不足とキーテクノロジーの欠如

 長所もあれば、短所もある。産業用ロボットの世界市場はすでに開拓されており、うち8割の市場は一部の大手グローバル企業に掌握されており、そしてキーコンポーネントのコア技術も一部の海外企業に握られているため、台湾企業の勝機は、ロボット部品の国産化を確立して、コストを下げることである。並びに、市場の開拓も企業の一つの課題になっており、台湾の内需は市場規模が小さいため、同じ中国語を使っている中国市場を開拓した方が効率が良いだろう。2012年のデータによると、1万人あたりのロボット所有数の世界平均は58台であり、11位で124台もある台湾に対して、わずか23台で28位の中国は今後の発展可能性を秘めている。

 ただ、研華宝元数控(アドバンテックLNC)の郭倫毓総経理は、中国は台湾の主要取引先でありながら競争相手でもあり、とくにロボット産業に関する当地のサプライチェーンは急速に発展しているため、台湾企業は気をつけるべきであると指摘した。

台湾の商機:サービスロボットの開発

 産業用ロボット市場に比べて、台湾はサービスロボット市場で商機を掴む確率が高い。アドバンテックLNCの郭総経理のアドバイスによれば、台湾企業は「消費者が絶対持ちたい」という方向に向かって、消費者が本当に欲しい製品を開発し、コストを削減し、▽価格が手頃▽設置が簡単▽メンテナンスが便利——の3点を揃えれば成功できるという。

 ロボットブームの到来に伴い、▽上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)▽フォックスコン▽研華科技(アドバンテック)を含めて、積極的に市場を開拓している台湾メーカーもあれば、躊躇している企業もある。智慧自動化與機器人協会(インテリジェント・オートメーションおよびロボット協会)の陳文貞副秘書長の話によれば、これからはインテリジェント・オートメーションの時代が来ることが分かっても、コストを顧慮して躊躇している中小企業も数多くある。

 「少子化と高齢化により、インテリジェント・オートメーションは不可欠になっており、もし企業がそれを理解できないのなら、オートメーションを導入した同業が安定して、コストが低減され、その企業は競争力を失う。台湾大学機械学科の終身教授黄漢邦は注意喚起した。

台湾政府の対処は?

 投資額という面で、台湾は近隣の日本、韓国、中国に及ばなかった。韓国ロボット産業協会(KAR)の統計によれば、2010年に「2030年までは仁川をアジアのロボットランドに育成しよう」というスローガンを掲げた韓国は、2013年にロボット産業に1.6億米ドル投入し、そして2014〜2018年は更に27.3億米ドルを追加するつもりという。それに比べ、台湾政府は5年間でロボット産業に82億台湾元を投入して、年間予算は僅か韓国の10分の1である。

 黄教授の指摘によれば、政府が決心をつけないと、ロボット産業に与える予算は学界の研究を支援できないため、業界のみではなく、台湾政府も先陣を切るべきである。

台湾の問題:政策が曖昧で予算が少ない

 ロボット産業に対する台湾政府の政策は曖昧で予算が少ないほか、学界と業界の認知は差があり、関連学科から卒業しても採用されない人が多いと、陳副秘書長は業界の意見を整理して指摘した。企業と政府は衝撃を受け、下級労働者はロボット時代に深い影響を受け、転職する覚悟さえも持った方がいいと見られている。

 例を挙げれば、IKEAのサプライヤーである某台湾企業は、元々労働力不足の問題に悩まされ、高卒と外国人労働者を雇用していたが、生産ラインにロボットを導入してからは、もう納期と在庫の問題はなくなっている。その上に、生産ラインの労働力がロボットアームに取って代わり、ほかの仕事は給料が比較的高いため、逆に労働者の就職意欲が増えた。同企業の社長は職員の人事異動を支援するように、職員教育も行い、なるべく上級の仕事もこなせるようにサポートしているが、職員自身が勉強したくない場合はどうしようもなく、手放すしかないという。

 「第二次機械時代」の著者エリック・ブリニョルフソンは、これから労働者になる学生たちにこうアドバイスした。「テクノロジーと資源を通じて自分を充実させ、必要なスキルと能力を育成せよ。」実際、どの進化もゆっくり発展していくものであり、ロボット時代も例外ではない。過去の歴史を振り返れば、自動車産業がロボットを導入してからは既に30年も経っているものの、自動車産業の労働力は突然の致命的な衝撃を受けてはいなかったと郭教授は指した。従って、これからロボットの設置数はますます増えていくものの、政府、企業、労働者にはまだ準備して、対策を練る時間がある。

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