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【ワイズリサーチ】台湾産業用コンピュータメーカーの
ロボット市場参入


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2015年4月23日

機械業界 自動化・ロボット

【ワイズリサーチ】台湾産業用コンピュータメーカーの
ロボット市場参入

記事番号:T00062827

一.世界のロボット市場規模

 世界的に見ると、工業先進国、発展途上国にかかわらず、ほぼ全ての国家がロボットを核心とするオートメーション化を製造業の発展目標に据えている。国家が経済成長目標を達成する上でロボットを利用した生産力の向上が求められており、今後、ロボット産業は大きな成長を遂げると予想される。ロボットを導入する主な理由としては他に、高齢化が進む多くの工業国では、製造業、特に「3K(汚い、危険、きつい)産業」と呼ばれる分野において今後数年で労働力不足に直面する可能性が高いことや、賃金、離職、ストライキ、デモといった労働者に付随する深く低要素を排除する目的が挙げられる。こういった中、市場調査会社のウィンターグリーン・リサーチは、2013年時点で18万6,000台だった世界に存在するロボットの数は14年には19万3,500台まで増加したとみている。

二.ロボット市場への参入を図る台湾の産業用コンピュータメーカー


 近年小型POS(販売時点情報管理)システム業務においてタブレット端末による侵食を受ける台湾の産業用コンピュータメーカーは、事業転換を図る上で産業用ロボットのサプライチェーン参入に注力している。その事例としては、▽研華科技(アドバンテック)と上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)の戦略提携▽鴻海科技集団(フォックスコン)および関連企業の産業用コンピュータ・アライアンス▽威強電工業電脳(IEIインテグレーション)によるロボットコントローラメーカー、洋威数控(モーターコン)への出資▽凌華科技(アドリンク・テクノロジー)の3D(3次元)視覚誘導システム――などが挙げられる。

 アドバンテックは宝元数控(LNCテクノロジー)を買収してロボットコントローラ技術を取得し、ハイウィンと戦略提携を結ぶことで同社にロボットコントローラを供給。さらに鴻海傘下、樺漢科技(Ennoconn)のコントローラ技術が未成熟な現在、同グループにもロボットコントローラを供給している。

 一方、鴻海の産業用コンピュータ事業は樺漢科技および賜福科技(FOXNUM)から成るチームを結成している。賜福科技は台中本部のほか、中国に複数の拠点を構えており、そのうち比較的規模が大きい深圳、鄭州、成都の事業センターで保有する特許権は350項目を超える。同社の製品にはCNC制御システム、サーボ駆動システムなどが含まれ、工業技術研究院(工研院)機械・系統研究所との長期にわたる技術提携の下、市場において高い競争力を獲得している。また、威強電は昨年、モーターコン株の50%を取得。ロボットへの視覚誘導技術応用により、金属加工、吹き付け塗装などの分野で商機獲得を狙っている。
 

 この他、産業用コンピュータメーカーのアドリンクは2014年7月に、ロボット分野での展開についてロードマップを発表。今後、ロボットの「脳」および「目」、すなわち「制御装置」と「視覚誘導システム」の開発を進め、産業用ロボット分野での発展を図る方針だ。なお、同社は既に工研院と共同で3D視覚認識によるスマート型ポジショニングシステムを開発。市場において高速かつ高解析度を備えた産業用スマートカメラを投入している。

 この他、巨大な市場規模を好感し、慶鴻機電工業(CHMER EDM)、智研科技(INTEK)、新代科技(SYNTEC)、広積科技(アイベース・テクノロジー)、新漢(ネクスコム)、泓格科技(ICP DAS)、新唐科技といった産業用コンピュータ、制御装置メーカーが相次いでロボット市場に参入している。

 また、台湾の自動化システム統合メーカーはターンキー方式のサービスモデルを採用することで末端顧客の需要を把握して差別化に努め、それぞれが自社の得意分野において市場開拓を進めている。盟立自動化(Mirle Automation)、信邦電子(SINBON)、迅得機械(Symtek Automation Asia)、均豪精密工業(ギャラント・プレシジョン・マシニング、GPM)、和椿科技(Aurotek)、陽程科技(USUN TECHNOLOGY)、佳世達科技(Qisda)といった自動化システムの統合能力を備えたメーカーは、継続的に生産ライン統合能力の向上を図っており、この能力が各社の収益を分ける重要な要素となっている。顧客の需要を見極めることができず、大量の汎用品を経営の中心に据え続けた場合、将来、成長の余地は狭くなるばかりとなる。

三.まとめ


 台湾の産業用コンピュータメーカーがロボット市場に参入する上で、工研院からの技術移転が非常に重要な役割を果たしている。メーカー各社がいわゆる「束になってかかる」方式で戦略提携を結び、ロボット産業のサプライチェーンおよび産業集積を進め、システム統合メーカーを生み出していることは方向性としては適切と言える。ハイウィンを例に挙げると、同社は戦略提携を結ぶことで台達電子(デルタ・エレクトロニクス)や鴻海科技集団(フォックスコン)に対抗し、台湾ロボット産業をリードする地位を確立していることから、こういった方式で自社のイメージアップや製品競争力の向上を図ることはある程度効果を発揮していると考えられる。いわゆる「ロボット産業」は大きく分けて「産業用コンピュータ」と「ロボット用部品」という2つの分野に分かれるが、将来的なインテリジェント型ロボット産業への参入に意欲を有するメーカーは両方の分野を手掛ける必要があり、これは海外の強大な競争相手に立ち向かう上で基本中の基本となる。

 なお台湾の産業用コンピュータメーカーがロボット市場で商機を獲得するためには2つの方策が考えられる。第1に欧米や日本の先進企業との合弁、またはこれらメーカーのサプライチェーンへの参入が挙げられる。欧米や日本メーカーと共同で地域市場を開拓すれば、同分野へのいち早い参入が可能となり、短期内に成果を挙げることができる。またこの方式ならば、台湾の産業用コンピュータメーカーが備える製品設計能力やサプライチェーンのマネジメント能力、長期にわたり築いてきたグローバルな物流体制の強みが生かせる。そして第2の方策としては、制御装置やICなど重要部品のサプライヤーとしての役割を演じ、世界最大の市場を抱える中国メーカーとパートナー関係を築くことが考えられる。特に台湾の部品メーカーは価格、納品スピード、生産の柔軟性、高品質といった強みを有している上、総合的なソリューションを提供して現地メーカーの製品設計および組み立てを支援すれば、サプライチェーンの連携を高めることが可能だ。

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