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【ワイズリサーチ】2015年台湾ファスナー産業の概要と今後の展望


リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2016年3月10日

機械業界 金属

【ワイズリサーチ】2015年台湾ファスナー産業の概要と今後の展望

記事番号:T00063700

一、2015年概況
 台湾ファスナー(締め具・留め具)産業では昨年、中国における株価下落、人民元相場の下落、および欧米市場の不景気、世界市場における競争激化などの要因を受け、台湾のねじメーカーは輸出受注が予想を下回るという事態に直面。これにより台湾中南部では小規模メーカーが15社以上、受注減により倒産に追い込まれたと伝えられている。特に家具、DIY用金物部品など一般向けファスナー製品で欧米顧客の発注削減が急激に進んだことで、大手メーカーが外部への生産委託を引き揚げたことに影響を受けたとみられる。

 なお当産業の2015年生産額は1,388億台湾元、輸出額は1,291億台湾元で前年比ほぼ横ばいとなった。ただ輸出額については、第2四半期に欧州向け輸出を主力とする一部メーカーで為替相場の変動による利益への打撃が浮上。第3四半期には全体的に景気が悪化した影響が顕著となり、第4四半期の輸出額は297億台湾元前期比10.5%減、マイナス幅が拡大した(表1参照)。


 輸出量も2015年通年では157万トンで前年比1.9%減にとどまったが、第4四半期は約13%のマイナス成長となった。

製造業者の市場見通しが悪化し、受注が低迷しており、回復には2017年を待つ必要があると予測される。


 一方、昨年通年の平均輸出単価は82.3台湾元/キログラムだったが、第4四半期は欧米自動車市場におけるファスナー需要の高まりに恩恵を受けて83.4台湾元/キログラムと、通年平均を上回った。このほか、当産業の2015年輸入額は前年比6.5%減の43億台湾元、国内市場の需要規模は同2.8%減の140億台湾元だった。

二、2016年展望
 現在、欧州連合(EU)および日本が「マイナス金利」時代に突入し、世界的に景気が冷え込む中、各国で公共工事や企業による投資姿勢が消極的になっている。ただ、2015年末のファスナー製品輸出状況は比較的平穏と言え、かつユーロ圏では圏内最大の経済規模を備えるドイツで景気が安定して拡張したことに支えられ、第4四半期GDP(域内総生産)が前期比0.3%のプラス成長を記録。また米国の15年経済成長率も2.4%を維持するなど、台湾製ファスナーの主要輸出先である欧米市場では経済状況が大幅な落ち込みをみせていない。さらに第1四半期はファスナー産業にとって例年の需要期に当たるため、台湾ファスナー産業の16年第1四半期の輸出額は前期比10.8%増の329億台湾元、同期生産額も356億台湾元と同11.6%の成長を見せると予測されている。

  また今後、短期的に世界経済は全体として緩やかな成長を持続すると予測されるが、地域によって状況は異なるとみられるほか、昨年下半期に比べ、景気の下振れリスクはより顕著となる見通しだ。ただ、中国鋼鉄(CSC)の宋智育董事長が「今年第1四半期の国内向け受注状況は予想を上回っており、受注量は104%に達している」と語っているように鉄鋼市場には回復の兆しが見える。このため2016年における台湾ファスナー産業の生産額は前年比1.9%、輸出額は2.1%のプラス成長を維持すると見込まれる。

三、業界企業の動向


1.華祺工業(RODEX)

 ステンレス製ファスナーの台湾最大手メーカー、華祺工業は欧米顧客がクリスマス休暇に入った影響で、昨年11月下旬より業績が下降した。12月に入り出荷量は上向いたものの、受注時にニッケル原料を購入していたため、その後のニッケル価格下落による粗利益率への恩恵は限られたものとなった。同社は昨年上半期、台湾元相場の上昇とユーロ安により利益に影響を受けた。ただ、今後はユーロの下落は限定的と予測されるほか、同社海外工場で十分な受注量を確保しており、なるべくユーロ建てでの受注を回避できる態勢となっている。このため、今年は為替相場の変動が大きくなりすぎず、台湾元相場が下落傾向を維持しさえすれば、まずまずの利益が期待できそうだ。

2.三星科技(SAN SHING)

 自動車用ナット大手の三星科技は現在、売上高全体の80%をナットおよびねじ、8%を線材、7%を金型、5%をワッシャーが占めている。同社は受注生産方式を採用しており、欧米、日本の大手自動車ブランド向けOEM(相手先ブランドによる生産)部品メーカーを直接顧客とする。同社の昨年第4四半期のねじ、ナット受注状況は前期比でほぼ同水準を維持したが、鉄鋼製品価格の下落にともなって線材の出荷が大幅に減少した。同製品は粗利益率は高くないものの、全体の約1割を占める売上高には影響があったとみられる。第4四半期の減収、同期利益が前期比マイナスとなったとみられること、および台湾元為替相場の下落が止まったことを考え合わせると、同社の今年第1四半期のねじ、ナット受注状況は前期比横ばいと予想される。

3.恒耀工業(BOLTUN)

 同じく自動車用ファスナー大手、恒耀工業(BOLTUN)のアモイ工場では現在、上海大衆汽車(上海フォルクスワーゲン)を最大顧客としている。フォルクスワーゲンによる排出ガス規制に関する不正問題が短期内に恒耀工業の受注全体に影響を及ぼすことはないとみられるが、長期的な経営見通しを考慮した場合、同社は今後、顧客の分散を進める可能性が高いと予想される。なお、全体的に見て同社の2016年の経営状況は安定して推移すると見込まれるが、短期間での成長を目指す上で、タイのファスナーメーカーに出資計画がいつ確定するかが注目されている。

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