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【ワイズリサーチ】AI台頭、台湾サービスロボット産業の発展戦略


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2017年12月29日

機械業界 技術応用

【ワイズリサーチ】AI台頭、台湾サービスロボット産業の発展戦略

記事番号:T00074781

一、急速に発展する注目度の高いサービスロボット産業
 2015年以降、人工知能(AI)の音声認識技術の成熟化に伴い、▽アマゾン・エコー▽グーグル・ホーム▽トヨタのKIROBO mini(キロボミニ)▽シャープのCOCOROBO(ココロボ)▽日立製作所のEMIEW3▽KDDI、中国の東方網力科技(ネットポサ)、台湾の宏碁(エイサー)、LGエレクトロニクスが出資するJibo(ジーボ)──など、各種のスマートスピーカー、ロボット製品が台湾内外で発表、発売されている。台湾でも鴻海精密工業が生産するソフトバンクの「ペッパー」▽華碩電脳(ASUS)の「Zenbo」▽威剛科技(Aデータ・テクノロジー)の「ibotn」──など、ハイテク大手のサービスロボットが家庭、百貨店、銀行、空港などでさまざまなサービスを提供している。ロボットは既に人の暮らしの中にあり、人とコミュニケーションを行っている。
 AI技術をベースにしたスマートロボットは人の仕事の効率を高め、生活水準を改善し、新たな10兆台湾元産業になると予想されている。

二、大企業が続々参入
 台湾の主なサービスロボットメーカーサービスロボットの研究開発(R&D)には多くのリソースを投じる必要があり、▽鴻海▽ASUS▽エイサー▽金仁宝集団▽広達電脳(クアンタ・コンピュータ)──などのハイテク大手はパソコン、ノートPCの製造力を生かし、新たなコンシューマエレクトロニクス市場を開拓するため、家庭用サービスロボットの普及を目指している。
 アシスタントロボットの価格は現在500~700米ドルとノートPC並みで、消費者も受け入れやすい価格だ。このようなロボットが将来的にスマートフォン並みの300米ドル以下まで価格が下がれば、家庭への普及が急速に進む見通しだ。また、ロボット掃除機で世界2位の松騰実業(マツテック)は台湾で家庭用サービスロボットが話題になるきっかけをつくっている。
 このほか、三緯国際立体列印科技(XYZプリンティング)や祥儀企業のように、商用の案内ロボットに参入する企業もある。台湾のロボットアーム最大手、上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)は飲食サービス業向けのロボットアームを展示したほか、医療用サービスロボットのR&Dも開始した。現在、台湾サービスロボット産業は家庭用と商用が中心だ。

台湾のハイテク大手がサービスロボットに大規模投資、家庭向け市場で前哨戦
(1)鴻海(FOXCONN)
 鴻海がソフトバンク、アリババと共同参入:ソフトバンクは仏アルデバラン・ロボティクスを2012年に買収した。ソフトバンクは15年6月、同グループのロボット事業を統括するソフトバンクロボティクスホールディングス(SBRH)に対して、鴻海と中国の阿里巴巴集団(アリババ・グループ)がそれぞれ145億円を出資することで合意したと発表した。SBRHへの出資比率はソフトバンク60%、鴻海20%、アリババ20%となった。SBRHが開発したヒト型ロボット「ペッパー」はIBMのコグニティブ(認知)・コンピューティング・システム「ワトソン」と連携しており、感情認識に優れたロボットとするため、アジアの使用者のライフスタイル、考え方、感情といったビッグデータを収集、分析している。
(2)宏碁(ACER)
 エイサーが海外の家庭用サービスロボット市場に参入:米国のロボットベンチャー、ジーボは15年7~9月にクラウドファンディングサイト「Indiegogo(インディゴーゴー)」で370万米ドルを調達した。16年1月には▽KDDI▽ネットポサ▽エイサー▽LG──などから計2,350万米ドルの出資を受けた。家庭用AIロボット「ジーボ」の価格は約749米ドルで、世界45カ国に出荷する予定だ。「ジーボ」はAIにより音声、映像認識機能を向上させることが可能で、「ジーボ」のエコシステム構築に向け開発者にソフトウエア開発キット(SDK)を配布している。
 エイサーはテレプレゼンスロボット「Kubi(クビ)」を手掛けるリボルブ・ロボティクスに15年10月に出資した。「Kubi」はエイサーのカスタマー支援システムと連携しており、タブレット端末を取り付けることでビデオ会議システムとして使用できる。価格は499~749米ドル。エイサーが投資する海外の家庭用ロボットはいずれもタブレット端末、映像認識、クラウドシステムを統合したもので、PC、ノートPC、タブレット端末の製造力、販路、およびクラウドプラットフォームを有するエイサーはロボット市場を急速に開拓することができる。
(3)華碩(ASUS)
 ASUSが家庭用ロボットのエコシステム構築に着手:ASUSの家庭用ロボット「Zenbo」はインテルのプロセッサー「アトム」、人の顔や手の位置・動きを認識する「リアルセンス3D(3次元)カメラ」などを搭載している。ロボットは現在、主に音声によるコミュニケーション、家庭内環境の観察を通じて人の生活習慣や行動パターンを学習している。「Zenbo」は幼児や高齢者のいる家庭を主なターゲットとし、付き添い、介護サービスを提供している。定価599米ドルとノートPC、スマホ並みの価格で、家庭への普及が進んでいる。ASUSは「Zenbo」エコシステムを構築するため、▽教育・学習▽娯楽・レジャー▽保健・介護▽スマートホーム──などの分野でサービスを提供できるよう開発者や提携パートナーにSDKを配布する方針を示している。

接客ロボットが商店、銀行、通信キャリア店舗などに導入
 XYZプリンティングはディープラーニング(深層学習)により顔認証モジュールとビーコン(電波受発信器)モジュールの機能強化を進めている。また、AI音声によるコミュニケーション、ロボットの用途開発で兆豊国際商業銀行(メガバンク)、中華電信などと提携しており、XYZプリンティングの接客ロボットは商店や銀行、通信キャリアの店舗などに導入されている。こうしたロボットは現在、視覚システムと自動制御の統合強化が課題となっている。

三、台湾サービスロボット産業の発展に向けた提言
 AIの導入により、モノのインターネット(IoT)を拡張したIoE(インターネット・オブ・エブリシング)のフレームワークがさらに複雑化するものの、機械学習の進化を加速すると予想されている。人のように意思決定やコミュニケーションを行い、関連のハードウエアとソフトウエアを一瞬でスムーズに駆動することが可能なサービスロボットは、世界的に注目を集める新たな産業になる見通しだ。台湾がサービスロボット市場に参入できるよう、以下の提言を行う。
(1)既存技術の強みを生かし、サービスロボットの機能を向上させる
 サービスロボットは▽HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)▽行動計算▽検知・検出モジュール▽機構・制御・多相システムの統合──など、ハードウエアとソフトウエアを高度に統合したものであり、これらを支える技術はさらに細分化できる。
 サービスロボット自体の開発コストは高いため、台湾は重要部品、インターネット接続機器、機械設備などから参入すべきだ。例えば、▽光学モジュール▽タッチパネル▽環境センサー▽ゲートウェイ▽ロボットアーム──などの強みを結合し、これら重要部品の改善を進め、AIによってソフトウエアモジュールを開発すれば、AIとIoTを融合した高付加価値型のAIoT機器・部品を推進することができる。将来的にはロボット以外のスマート機器にも応用可能で、台湾の競争力向上につなげられる。 (2)AI・IoTの枠組みの中でロボットが自ら学習するHMI技術を開発する
 現在、「人のようなコミュニケーション」がサービスロボットの開発目標の一つとなっている。使用者の感情と行動を鋭く、的確に感知、分析、予測した上で最適な反応をすると同時に、毎回のやり取りから蓄積したデータを利用してサービスロボットが自ら学ぶモデルを開発する必要がある。ディープラーニング技術によって音声の認識、言語の翻訳、視覚というサービスロボットに必須の基本的機能が急速に向上している。欧米の大手企業はAI音声アシスタントを利用した製品・サービスの開発を強化しているが、西洋言語によるものが中心で、中華圏に十分に参入できていない。このため、台湾メーカーは中国語の音声アシスタント・語意認識機能を持つAI技術プラットフォームを開発すべきだ。また、台湾は光学部品の強みを生かし、ロボットの視覚情報認識技術を強化すべきだ。同技術はロボットの行動誘導、対象物の認識、出来事のタイムリーな分析などに応用できる。
(3)AIでハード・ソフト技術を統合し、台湾のロボットエコシステムを強化する
 AI、IoT技術により、台湾ではコンシューマエレクトロニクスの▽重要部品▽システム統合▽ソフトウエアインターフェイス▽サービス設計──のバリューチェーン再構築が進んでいる。また、世界の産業界ではB2B2C(仲介企業を介した企業・消費者間の取引)のビジネスモデル構築に向け、オープンアーキテクチャー、オープンソースのソフト・ハードウエアが利用されており、これはバリューチェーンを構成する全ての企業の価値を高め、共同でエコシステムを強化する取り組みである。
 台湾企業と政府は▽物流・倉庫▽医療・介護▽安全・救災──などの特定の分野に照準を絞るか、▽人手不足の解消▽従来型産業のモデルチェンジ支援▽産業の競争力向上──という名目で産業用のサービスロボットを推進すべきだ。また、関連業者が共同で台湾のサービスロボットエコシステムを構築し、継続的にAI、サービスロボットの技術を向上できるよう、ソフト・ハードウエアのプラットフォームを開放すべきだ。

四、まとめ
 サービスロボットは技術的に参入障壁の高いブルーオーシャン(未開拓市場)と位置付けられており、世界的なサプライチェーンはいまだ形成されていないが、AI、IoT技術の進展により、▽重要部品▽システム統合▽ソフトウエアインターフェイス▽サービス設計▽マーケティング▽販路▽保守サービス──を含む新たなサプライチェーンが構築されつつある。  サービスロボットのR&Dには大量のリソースを投入する必要があるため、プラットフォームとエコシステムの構築を目標とし、オープンな技術的枠組み、ビジネスモデルによって第三者の開発者や提携パートナーと共同で技術向上、用途拡大を進めるべきだ。
 サービスロボットのビジネスモデルはいまだ模索段階にある。人とロボットのやり取りから使用者に関するビッグデータを収集、分析することで、既存の技術を向上させ、新たな機能を開発し、ビジネスモデルの手掛かりを得られる可能性もある。世界の大手企業は現在、瞬間的に関連のソフト・ハードウエアを駆動させ、意思決定や人間同士が行うような自然なコミュニケーションができるサービスロボットの開発を進めている。サービスロボットが正確かつ円滑に作動する鍵はAIシステム、AIプラットフォームにあるため、AIoTの枠組みの中で基本的な機械制御技術だけでなく、▽クラウドシステム▽B2B2Cのビジネスモデル▽人を中心に据えた人とロボットのやり取り──も念頭に、適切なタイミングで最適かつ人間らしいサービスをタイムリーに提供できるサービスロボットを実現する必要がある。

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