ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

【ワイズリサーチ】南台湾を中心に発展する工研院の新技術


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2019年1月31日

機械業界 技術応用

【ワイズリサーチ】南台湾を中心に発展する工研院の新技術

記事番号:T00081819

 2019年1月4日、工業技術研究院(工研院)は経済部南台湾創新園区で約40項目の新技術を発表した。天然のような軟質サンゴの養殖技術や「R&D 100 Awards」を受賞したポータブルUVC LED水殺菌システムなどで、グリーンエネルギー、サスティナビリティ、3Dプリント、マイクロセンサーなど多様な分野にわたる成果が披露された。工研院はこれらの応用を台湾南部を中心として発展させていくことを目指している。
 工研院は台南市にある南分院の六甲院区、経済部南台湾創新園区、沙崙緑能科学城の3カ所に拠点を置いており、2019年は新たに「スマート農業」、「デジタル産業」、「地方創生」をテーマに掲げたイノベーション基地を設置する。台南市の5大方針に合わせて地方創生とスマートシティの推進、雇用機会の創出と経済発展を実現することが目標だ。
 工研院は台湾南部の企業多数と提携し、さまざまな成果を出している。例えば、工業グレードのメッシュWi-Fi、エネルギー資源管理システムなどによって異なる作業フィールドと設備を統合する産業制御システムSCADAがあるが、工研院は紡績メーカーの宏遠興業やエナメル線メーカーの大亜電線電纜の同システム導入をサポートした。このように、台南市における従来型産業のスマート化を推進している。
 宏遠興業の曽一正協理は「当社はコンプレッサー、電気、ボイラー、排水、防災システムなどの総合管理システム設置に関して工研院の支援を受けた。このほかにも当社の染色工場には1,000台を超えるカートがあるが、工研院が定位システム設置をサポートしてくれ、カートを手配する時間が20分から1分半に短縮された」と述べた。
 大亜電線電纜の邱栄焜副総経理も「当社は工研院の支援を受けたSCADAの導入によって生産ライン情報の可視化、製造プロセス管理の最適化、製品のトレーサビリティーと品質の安定性を高めることに成功した」と語っている。
 また工研院は、高雄市および同市の現地企業や学校、研究機関と提携して「南台湾産業跨領域創新中心」を設立し、これまでに風行海洋国際(ForCean)、雷豊熱電科技(Thunder)、智鷹科技、南翔創新顧問といったスタートアップ企業が誕生している。このうち、南翔創新顧問は国家発展基金管理会が1億2,000万台湾元を資金を投じて株主となった、政府資源による初の地方ベンチャーキャピタルだ。これにより、地場企業の強みを活かして産業を越えたイノベーションを促し、台湾南部を優秀企業を生み出すエリアとしていくことが狙いである。

「南台湾産業大進撃イノベーションフォーラム」で発表された新技術
ポータブルUVC LED水殺菌システム
 一般的な紫外線(UV)殺菌の給水器は水銀灯を発光源としているが、体積が大きくランプも割れやすい上に高圧であるため、持ち運びができない。工研院が開発したポータブルUVC LED水殺菌システムはLEDを発光源としており、従来型製品に比べて体積が小さく、除菌率は99.9%に達している。一般の蛇口に設置することもでき、すばやいオンオフが可能なLEDの特性を利用して水の流れる量からLEDをオンにするかどうか判断する。これによりエネルギーを50%以上節約し、安全性も向上させることにも成功した。

 同システムは一般家庭やオフィス、医療・介護施設での使用に適しているだけでなく、被災地や開発途上国など衛生状況の悪い環境でも殺菌済みの水を供給することができる。また、機器本体が異常検知と警告を行い、遠隔モニタリングによって水質を管理することが可能だ。同システムは今後、多様な分野における応用が期待できるとして、2018年の「R&D 100 Awards」に輝いた。

光学式PM2.5センサーシステム
 光学式PM2.5センサーシステムは、光散乱法で空気中のPM2.5濃度を計測する。2つの空気の通路で微粒子をふるい分け、シグナル式技術によってPM2.5を識別する。計測エリア内を流れる空気のスピードを安定させるだけでなく、光学センサーに対する光源と大型微粒子の影響を抑えて計測データの精度をより高めることを可能にした。このほか、空気の通路は埃が堆積しにくく、機器の寿命がより長くなった。また、環境保護署(環保署)の7日間に及ぶ野外測定では数値の誤差が大幅に改善され、小型のPM2.5測定基地として機能することが実証された。今後、政府が推進する「空気品質IoT(モノのインターネット)」計画で広範囲かつ高密度の空気品質モニタリングが行われるようになるため、同システムが大いに活躍するだろう。さらに、同システムを利用した空気品質監視モデルが台湾から海外へ広がることも期待できる。



機械IoT向けソリューション技術
 工研院は負荷が大きい環境における機械IoT向けに、OPC UAを基礎とするソリューションを開発した。とくに製造業のスマート化における応用に適している同ソリューションは、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を採用して、即時的で完全かつ有効なデータの伝達を行う。これにより企業が求める高度な情報共有が可能となり、生産ラインのデータをスムーズに伝達することができる。また、インタラクティブ性と操作性における問題も解決し、企業間の情報共有も容易となった。現在すでに繊維、金属加工、封止・テスト、電線・ケーブルなどの分野に導入されている。



省エネレーザークリーニング機
 台湾の気候は湿度が高く、機械の錆防止や除去は長年の課題となっている。海外製の高出力錆除去装置は1台が数百万台湾元と高額で、中小企業が購入するのは難しい。そこで工研院は、ナノ秒パルスのレーザー錆除去技術を開発した。パルスレーザーはわずか50ワットだが、瞬間ピーク値は5万ワットに達する。これにより機械の錆除去と表面の掃除を行うだけでなく、電気使用量が節約できるようになった。また、サイズも小さいという長所があり、海外製品と比べると使用できる材質も幅広い。鉄や銅、セラミックやガラスなど異なる材質の製品に使用する場合、ユーザーは設置や調整などを行わずともコンピューターのインターフェイスで作業パターン、レーザーの幅、強度と速度を選ぶことができる。

機械業界-技術応用

2週間無料モニター募集中!

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。