台湾における電力供給の現状と課題


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2018年7月5日

機械業界 エネルギー

台湾における電力供給の現状と課題

記事番号:T00077982

 台湾はこのところの異常気象で猛暑が続き、電力使用量は過去最高を記録している。産業界では各社が株主総会を開催し、政府に対して電力の安定供給と品質維持を呼びかける一方で、1桁台という運転予備力の低さが企業の投資意欲を低下させている。  先般発表された全米商工会議所の「2018年台湾白書」も将来の電力不足について述べており、政府は「持続的かつ十分で、安定した価格と競争力を有する」電力供給を確保すべきだと強調している。また、さまざまな状況下で異なる電力源を組み合わせることによって突発的な問題に対応すべきであると指摘している。しかしながら政府は「台湾は電力不足ではない」としており、19年には供給予備力を15%、運転予備力を10%まで引き上げ、発電の完全非核化を実現して原子力発電所による発電分を再生可能エネルギーで代替するという計画を掲げている。
 実際、台湾北部ではこの半月間ですでに7回停電が発生しており、電力供給システムの電圧が下げられたことが社会の注目を集め、ハイテク産業に緊張をもたらした。台湾の電力不足は完全非核化を掲げるエネルギー政策が発端であるということを、経済部は明らかにしていない。運転予備力が低いからこそ電圧を下げざるを得ないのであり、さらにその発生率はますます頻繁になっている。このような措置は台湾電力(台電)の負荷が非常に高く老朽化した送電線を故障させ、たびたび停電を引き起こすことになる。
 さらに、長年使用されてきた発電ユニットの運転期間延長、桃園市の大潭発電所と高雄の興達発電所の供給過剰、そして電圧の引き下げや電力の買い戻しといった措置はもはや形を変えた電力使用制限といってよいだろう。直近2年で電力供給警報の発表日数は増加しており(表1)、2017年8月15日には大規模な停電が発生した。さらに全台湾の大気汚染の悪化を見れば台湾の電力供給には問題があり、現実的な解決方法を見出せていないのは明らかである。

 電力不足の解決方法は「使用量の削減」と「発電量の増加」しかない。しかし「使用量の削減」について、台湾の電力使用量はこの2年連続で2%以上増加している。産業活動による増加だけでなく、昨今の異常気象によって家庭の電力消費も増える一方で、政府の掲げる節電目標には遠く及ばない。電気料金を値上げしない限り、節電効果を高めることはできないのかもしれない。  「発電量の増加」については、政府は2025年までの完全非核化を掲げて、総供給量のうち原発による供給量18%を再生可能エネルギーで代替する計画である。同時に、石炭火力発電の割合を低下させて天然ガス火力発電の割合を引き上げ、最終的には供給量割合を再生可能エネルギー2割、石炭火力発電3割、天然ガス火力発電5割とすることを目指している。しかし発電所の増設状況を見ると、この数年間に設置された発電ユニットは続々と稼働開始しているが、22年から25年の間に増設・稼働されるべき発電ユニットについては未定だ。


 発電所増設計画には大潭、興達および台中市の天然ガス火力発電所、基隆の協和重油火力発電所(天然ガス火力発電所へ変更)、新北市の深澳火力発電所などが含まれるが、すべて行き詰まっている。このうち大潭と協和、深澳発電所は台湾の第一原発と第二原発の稼働停止後に台湾北部の電力を補うことになる。しかし、深澳火力発電所は大気汚染が問題となっており、大潭発電所は台湾中油の第3天然ガスターミナルが環境評価を通過していない。協和火力発電所の天然ガスターミナルは環境評価が始まったばかりだ。供給予備力は大潭発電所の8号および9号ユニットが全台湾の5%、深澳火力発電所が2.8%で合計7.8%が不足する計算となる。非核化実現の後、北部の電力は中部と南部の発電所に今まで以上に頼らざるを得なくなるだろう。
 将来、人々は電力不足の危機に直面するだけではない。完全非核化が実現された暁には、電気料金の値上げも避けることはできない。原発による供給分を再生可能エネルギーで代替し、石炭火力発電分を天然ガス火力発電で補う場合、発電コストは毎年2,500億台湾元、毎年1人につき10,870台湾元増加する計算となる。2016年の台電の売上高5,500億台湾元から計算すると、25年の電気料金は45.45%値上がりする。電気料金の値上がりは、少なくとも30年は使用者を苦しめることとなる(発電所の寿命は約40年)。
 このほか、再生可能エネルギー発電設備の建設も遅々としており、海外専門家によれば2025年に総供給量の20%をまかなうのは不可能で、最大でも10%だという。このため、政府は既存の火力発電所における発電時間を延長するだけでなく、大潭、台中、興達、新北市林口など台湾各地の発電所に新たな火力発電ユニットを導入している。また、石炭火力発電を減らして天然ガス火力発電を増やすといっても天然ガスターミナルの設置は時間がかかり、安全に貯蔵量を増やすことも難しい。よって石炭火力発電を増やすほかないのだが、これが大気汚染問題で批判を受けている深澳火力発電所の建設計画を行政院が強行突破する理由となっている。
 結果として、台湾に与えられる選択肢は2つだ。ひとつは電力不足と電力使用制限を受け入れること、もうひとつは電力不足を解決するために火力発電をフル稼働で行い、電気料金の値上げを受け入れることだ。前者は人々の生活品質を落として不便を強いることとなり、経済と産業に打撃を与えることとなる。そして企業は投資を見送り、雇用機会は減少する。後者は大気汚染を深刻化させ、二酸化炭素(CO2)排出量を増加させるだろう。
 世界各国の現状を見ると、韓国における原発の供給量割合は30%で、原子炉はあらかじめ計算された寿命まで使用される。ドイツはすべての原発を停止させて再生可能エネルギーを大規模開発するとしているが、2017年時点では石炭火力発電が供給量の39.7%を占めており、天然ガス発電は再生可能エネルギー発電の不足分を補うのみにとどまっている。一方、フランスは原発への依存度が高く、火力発電所を閉鎖してCO2排出量を抑制している。
 発電の完全非核化は電力を不足させることなく、電力使用制限を行わず、かつ合理的な電気料金を維持して実現されるべきである。そして国際社会のCO2削減条件を満たしながら、段階的に核を利用しつつ推進していくことでこそ、長期的に安定したエネルギー政策を実現できるのではなかろうか。闇雲に非核化を推し進め、ポピュリズム的な環境保護に走れば、電力不足、発電コスト増加、電力供給の不安定を招くのは必然のことである。政府は台湾内と海外からの声に耳を傾け、完全非核化は電力不足や電力使用制限など諸々の代価が伴うものであるということを人々に説明し、さらに電力不足の際にどのような対策をとるのか、その計画を明らかにする責任がある。

 

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