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【ワイズリサーチ】台湾におけるメタンガス発電の発展概況


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2018年4月26日

機械業界 エネルギー

【ワイズリサーチ】台湾におけるメタンガス発電の発展概況

記事番号:T00077045

一、バイオマス発電の概況
 台湾は2009年に「再生エネルギー発展条例」が施行され、翌年には25年までに再生可能エネルギー発電の設備容量を12,513メガワット(MW)に引き上げることが決定し、これに続く目標値もいくどか上方修正されてきた。表1の通り、現在、台湾の再生可能エネルギー産業は二酸化炭素(CO2)排出量削減のため、風力発電と太陽光発電に重点を置いている。バイオマス発電(廃棄物エネルギー発電を含む)の設備容量は20年に768MW、25年に813MW、30年に950MWを目標としているが、すでに16年末に727MWに達しており、20年の目標に届く勢いだ。16年の再生可能エネルギー発電の総電力量のうち、バイオマス発電は27.38%を占めて水力発電(52.07%)に次ぐ規模に成長しているが、風力発電と太陽光発電が占める割合は依然として低い。

◎バイオマス産業の生産額
 2010年の台湾バイオマス産業の生産額は81億8,500万台湾元であった。16年は103億7,700万台湾元で10年と比べて26.78%増、前年比では4.46%増と成長した。バイオマス産業の生産額は主に固体バイオマス発電によるもので、このうち廃棄物エネルギー発電による生産額が最も高い。
 液体バイオマス(バイオ燃料)発電は、経済部能源局(エネルギー局)が推進政策を一時的に取り止めたため、直近2年で生産額は大幅に減少した。バイオマス産業の生産額全体に占める割合は2010年には15.7%だったが、16年にはわずか0.7%に低下している。一方、気体バイオマス(メタンガス)発電の生産額は、行政院農業委員会(農委会)が導入を推進したため、16年は大きく成長した(図1参照)。

◎バイオマス発電市場
 直近10年、台湾におけるバイオマス発電の電力量に大きな変動はない。90%を廃棄物エネルギー発電が占め、残り10%をサトウキビの搾りカスや製紙廃水の繊維を用いた発電、さらにメタンガス発電が占めている。

二、台湾養豚産業のメタンガス発電
 台湾畜産業の生産額は約1,600億台湾元(2015~16年)で、農業全体の約3分の1を占めている。このうち養豚業の規模が最も大きく、生産額は毎年約700億台湾元に達して畜産業全体の43%を占めており、台湾の農業において最も重要な産業であるといえる。中央畜産会の17年の統計によれば台湾の養豚場軒数は7,407軒、飼育数は543万頭で、このうち約46%が中小型養豚場(1,000~4,999頭)、約24%が大型養豚場(5,000頭以上)で飼育されている。
◎メタンガス発電の補助施策
 現在、大多数の養豚場では畜産業の排水基準にのっとった廃水処理のみを行っており、メタンガス発電設備を設置している大型養豚場はごくわずかである。
 農委会は、養豚場の廃水処理設備を利用したメタンガス発電をより広く行うため、関連設備の導入に対して奨励補助金制度を設けた。また、養豚場を経営する個人事業主に対しても、奨励金や関連設備に対する補助金の支給を実施している。

◎三段式廃水処理システム
 現在、台湾のほとんどの養豚場は三段式システムの廃水処理設備を導入している。このシステムは農委会畜産試験所が開発したもので、洗浄に大量の水を用いる飼育方法を考慮し、物理処理と生物処理の技術を採用している。処理手順は、固液分離、嫌気性処理、好気性処理の三段階に分かれる。

◎今後の技術開発方向性
 中小型養豚場(1,000~4,900頭)の発電規模には限りがある。現在の三段式廃水処理技術で生産できるメタンガスは1頭当たり1日約0.1立方メートルで2,500頭を飼育する養豚場なら250立方メートルとなる。つまり発電できる電力は1日375キロワットアワー(kWh)で、これは1,875台湾元(年間56万台湾元)に相当する。この発電額から発電機や配線コスト、人件費、メンテンナンス費などを引くと経済効果は高くない。このため、中小型養豚場のメタンガス発電はメタンガス生産量を引き上げ、高耐久性を備える発電機を開発することが最も重要な目標だ。さらに高効率の脱硫技術によって利益率を高めれば、設備やメンテナンスコストを抑えることが可能となるだろう。
 中小型養豚場で使用している発電設備は、約20~50キロワット(kW)だ。現在、メタンガス発電設備は台湾で生産しておらず、欧州や米国、日本から輸入となるため、コストが高い。メタンガス発電を積極的に推進してはいるものの、発電技術や設備の開発など解決すべき問題を抱えているのが現状である。

三、メタンガス発電産業の概況
1、禾山林緑能
 2017年8月、山林水環境工程の子会社である禾山林緑能は、台中市外埔区の緑能生態園区(グリーンエネルギー生態園区)における堆肥工場のROT(改修・運営・譲渡)案件を落札した。山林水環境工程の郭淑珍董事長によれば、同工場は18年第3四半期から稼働予定で、台湾初のメタンガス発電所となるという。
 また、同社の呉人傑総経理は、「専門家によれば台湾全土の生ごみ、畜産業の廃水といった有機廃棄物から生産されるメタンガス発電量は、20万戸が1年間に使用する電力に相当します。当社は25年間のROT案件を落札し、有機性産業廃棄物事業とバイオマス発電市場に正式に参入することとなりました」と語る。山林水環境工程は6億3,600万台湾元を投じて生ごみ・稲わら処理設備とオペレーションシステムを導入し、生ごみの嫌気性処理発電と稲わらのガス化発電によって生産した電力を販売する。発電量は毎年3,377万キロワットアワーに達する見通しで、年間売上高は5億台湾元を見込んでいる。

2、米国・パーパスエネルギー
 米国のパーパスエネルギー(Purpose Energy)が、台湾のメタンガス発電市場に参入する。同社のジェフリー・ガーナー副総裁は、台湾は再生可能エネルギーの買取制度が整っていること、そして処理すべきごみも多いことからメタンガス発電の条件が揃っていると判断したと述べる。食品工場やビール工場、市場から出る生ごみなどの廃棄物、畜産業廃棄物などはいずれもメタンガス発電に適しているという。
 パーパスエネルギーは最新の嫌気性処理発電技術の開発に成功しており、海外市場の開拓を目指している。ガーナー副総裁は、「台湾は市場が開放的で法規も分かりやすく、さらに政府が再生可能エネルギー政策を推進しています。これが台湾をアジア最初の市場として選んだ理由です」と語る。
 同社は米国での実績から、嫌気性処理発電技術を採用すれば電力販売だけでも5年でコストを回収することができるという。再生可能エネルギーの中でもメタンガス発電は最大のポテンシャルを秘める。不要だった廃棄物からさまざまなエネルギーや副産物を生み出ことのできるメタンガス発電は、「石を点じて金と成す(点石成金)」産業だ。
 またメタンガス発電は燃料さえあれば安定した電力供給が可能で、同時に企業や政府の廃棄物処理問題や環境汚染問題を解決できる「一石多鳥」のソリューションでもある。

四、結論
 現在、台湾のメタンガス発電は埋立処分場を利用した方法が多く、その他の方法はモデル設備での研究段階にある。例えば、屏東県は台湾糖業(台糖)、順(月へんに生)実業と共同で大型養豚場におけるメタンガス発電所のモデル工場を計画中だ。技術の向上と政府の奨励措置によって、高額なメタンガス発電のコスト回収は5年まで短縮された。しかし、業者はそれだけではなくコジェネレーションシステムの開発や観光業との連携、有機肥料や液体肥料の製造などメタンガス発電の付加価値を高めねばならない。そしてメタンガス発電をビジネスとして確立させ、廃棄物を環境汚染の象徴からグリーンエネルギーを生む燃料へと生まれ変わらせることを目指すべきなのである。

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