ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

《新型肺炎》2020年の台湾機械産業の動向と新型肺炎の影響


リサーチ 台湾事情 作成日:2020年2月27日

機械業界

《新型肺炎》2020年の台湾機械産業の動向と新型肺炎の影響

記事番号:T00088566

一、市場概況

 新型コロナウィルス(COVID-19、以下「新型肺炎」)の感染拡大が全世界に広がっている。国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエワ専務理事は、新型肺炎の感染拡大は2020年の全世界の経済にダメージを与えるだろうと警告した。台湾の輸出と消費もその影響を受けているが、台湾経済研究院(台経院、TIER)は、もし感染拡大が3カ月続いたとしても域内総生産(GDP)は0.5ポイント以上下落することはなく、03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)まん延時ほどの影響はないとしている。

 台湾機械工業同業公会(TAMI)の柯拔希理事長は、感染拡大は短期的なもので、産業への影響は限りがあるとみている。また、人口の高齢化、スマート化、自動化などから生まれる需要が影響を受けることはなく、短期的にはバイオテクノロジー産業のワクチン関連、医療用品産業のマスク生産などの機械需要が成長するとの見方を示した。例えば、マスク製造装置メーカーの権和機械(NCM)と長宏機械は、工作機械業界団体の台湾区工具機零組件工業同業公会(TMBA)の協力を受け、部品や労働力不足などを改善し、マスク製造装置の納期が25日へと従来の2カ月から短縮できた。なお、世界各国からもマスク製造装置の発注が予想されるため、マスク製造装置メーカーの売上成長が見込まれる。

 さらに、新型肺炎の感染拡大を受けて、生産拠点を1カ所のみとするのはリスクが高いと判断した多くのメーカーが台湾での新工場設置、あるいは東南アジア諸国連合(ASEAN)への工場移転を進めており、設備需要が拡大している。

 

二、産業の動向 

クラウド導入で工作機械のデジタル化を促進

 TAMIは2018年からメーカーの「スマートマシンボックス(SMB)」導入を推進している。これは生産設備を統合して加工情報を可視化するだけでなく、設備の稼働率や状況のモニタリングなど情報収集を行うもので、管理の速度と正確さを大幅に向上させる。次の目標は、公的なクラウドコンピューティングの発展だ。情報をスムーズかつ安全に扱えることを前提に、メーカーはレンタルまたはシェア方式で利用してコストを抑えながら、アプリケーションソフトウェアの導入や開発を加速させることができる。これにより、遠隔操作による生産情報の収集と伝達、故障や部品交換時期の予測を強化する。

 今後、TAMIは機械産業における工業グレードのセンサー、人工知能(AI)を用いた分析センサーおよびモジュールのフィードバックシグナルなどの発展を支援する。機械加工の作業状況を把握し、精度の向上と時間の短縮を実現する。

 

スマート機械投資を推進する政策の改定

 中小企業のスマート機械導入を加速させるため、立法院は2019年6月に「産業創新条例」の改定内容が通過した。その改定内容で、スマート機械を以下のように定義している。

 1)ビッグデータ、AI、モノのインターネット(IoT)、ロボット、高精度管理、デジタル化管理、バーチャルリアリティ(VR)統合、3Dプリントあるいはセンサーなどスマート技術を使用している。

 2)設備のデジタル化とネットワーク化を通じて、生産情報の可視化、故障予測、精度の補償、自動パラメーター設定、自動制 御、自動スケジュール設定、サービスソフトウェアの応用を行い、柔軟性のある生産あるいは複数の生産ラインによる生産のスマート化を支援する。

 また、同条例は「SMB」を導入して生産の最適化を図ったメーカーのみが投資税額控除を申請できるとしている。期限は2021年までの3年間だ。

 このほか、2020年に第5世代移動通信(5G)が全面的に商用化されることを受けて、5G関連の設備や製品の導入、あるいはその他の設備に5Gを追加する場合の投資税額控除を22年まで延期する。19年1月1日まで遡り、20年の税申告に適用することが可能だ。これにより、経済部は1兆4,000億台湾元の投資がもたらされると予測している。

 

輸出受注に対する関税と為替の影響

 機械製品は台湾の輸出品目の70%を占める。2020年の台湾機械産業の業績を左右するのは為替レートと関税だ。台湾当産業は日本および韓国と競合しているが、近年各国が量的金融緩和政策(QE)を実施して通貨が下落し、台湾元が強くなっている。また、米中貿易摩擦の影響で中国では拠点を国外へ移転させる産業が増えたため、人民元のレートが下落して台湾元のレートが高くなった。このため、20年第1四半期は多くの輸出受注を失うとみられる。

 TAMIがまとめた最新の税関統計によると、2019年の台湾機械設備の輸出額は276億6,501万米ドルで前年比7.5%減となった。このうち、工作機械は30億6,387万米ドルで同16.2%減少している。

 さらに、台湾は各国との自由貿易協定(FTA)締結の進展がみられないのも問題だ。過去10年、機械産業の輸出を支えてきた主要市場である中国との海峡両岸経済協力枠組み協議(ECFA)に対しても見直しの声が上がった。これについて、TAMIは以下のように述べている。「短期内で台湾が欧州や米国、ASEANなど主要な輸出相手国・地域とFTAを締結することは困難だ。また、各国の関税課税や現地生産への投資などの貿易障壁もあり、機械製品の輸出受注を徐々に失っていく恐れがある。中央銀行など関連機関は、為替政策を実施して輸出競争力を挽回すべきだ」

機械設備の自給率向上

 台湾機械産業は世界市場の開拓のほか、輸入代替も進めていくべきだろう。台湾は機械設備の輸出も多いが、同時に大量の設備を輸入しており、貿易赤字となっている。2019年の中華民国税関統計によると、台湾機械産業の輸入額は374億1,696万米ドルで前年比30.2%増だった。主に光電、通信、情報、半導体などのハイテク産業の製品が多く、なかでも半導体、IC、パネル用製造プロセス設備が全体の55.7%で最も多い割合を占めた。もし輸入額を半分に減少させることができれば、台湾機械産業は生産額2兆台湾元の目標達成に近づく。台湾メーカーはこの点に関して、さらなる努力をすべきだ。

 TAMIは、今後ハイテク企業は電子設備メーカーと密接な提携を通じて、前工程製造プロセスにおけるナノメートルスマートテスト技術、そして共通の超精密エナジービーム製造プロセスモジュールの重要技術を発展させるべきだとしている。これが台湾メーカーの先進パッケージングとマイクロLED(発光ダイオード)の応用分野における技術力を高め、政府が推進する設備の自給率向上、そしてUターン投資した台湾メーカーの台湾製設備の採用比率を高めることにつながる。

 

四、まとめ

 中国における新型肺炎の感染拡大は収束のめどが立っておらず、製造業の景気回復を遅らせるだろう。専門家は、感染拡大は5~6月がピークで、その後徐々に落ち着くとみている。中国機械産業は新型肺炎の感染防止のために工場の操業を停止しており、出荷ができない状況だが、台湾に生産拠点がある機械メーカーに受注が流れてくる可能性がある。また、台湾では各政策によって機械産業の部品に対する需要が拡大しているため、TAMIは2020年の台湾機械産業の生産額は前年比5%成長すると予測している。

機械業界

2週間無料モニター募集中!

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。