ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

《新型肺炎》新型肺炎の台湾テクノロジー企業に対する影響


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2020年2月20日

機械業界 製造業全般

《新型肺炎》新型肺炎の台湾テクノロジー企業に対する影響

記事番号:T00088537

一、市場概況
 中国・湖北省武漢市で発生した肺炎などの症状をもたらす新型コロナウイルスの感染が拡大している。台湾のテクノロジー企業も中国に拠点を構える企業が多いが、中国市場の売上高比重や武漢市に拠点を置く顧客からの受注金額はメーカーによって異なるため、業績への影響は各社でばらついている。現時点では感染状況の見通しが立たないため、今後の施工需要や設備出荷への影響は引き続き観察が必要だ。一方、台湾市場では半導体産業の投資増加、Uターン投資による自動化生産ラインの需要拡大、海外企業による投資の成長といった要因から受注が伸びている。これによって中国市場での損失をある程度補うことができるだろう。

二、メーカー概況
聖暉工程科技および朋億
 聖暉工程科技(アクター)はクリーンルーム用の機電・空調設備を手がける。施工の進度によって売上高に反映させる額が決まるため、感染拡大が抑制できなければ進度が遅れ、売上高にも影響が及ぶ。(2面に続く)短期的には、第1四半期は例年非需要期であること、感染状況の見通しが立たないことから、売上高は前年同期比で減少すると予測される。
 現在、聖暉工程科技の台湾および中国市場での受注額はともに成長しており、子会社の朋億(ノバ・テクノロジー)も含めると前年同期比2割増の100億台湾元に達し、台湾市場での受注が中国市場よりも伸びている。台湾企業のUターン投資の拡大、海外企業による投資の成長が要因で、8億~10億台湾元の大型受注が増えている。中国市場での受注は半導体関連が多く、パッケージング・テスティング(封止・検査)メーカーの投資、中国資本の窒化ガリウム工場投資、上海のシリコンウエハー工場投資などがある。しかし、施工の進度によって売上高に反映させる額が決まるため、とくに中国顧客の案件は観察が必要だ。
 全体的にみると、聖暉工程科技の2020年の連結売上高は受注増が恩恵となり、18年と同水準の140億台湾元で前年比10%成長となる見通しだ。20年の上半期と下半期では、下半期のほうが好調と予測される。

漢唐集成
 漢唐集成(ユナイテッド・インテグレーテッド・サービシズ、UIS)はハイテク産業向けクリーンルーム施工が主要業務であり、中国市場での売上高は全体の10~20%で、この半分を武漢の子会社の売上高が占める。同子会社の売上高が全体に占める割合は比較的小さいため、現時点では受注は大きく減少していない。今後、感染が拡大すれば施工の進度が影響を受け、売上高にも響くとみられる。
 現在、漢唐集成の受注は台湾メーカーが中心で、多くが半導体大手の投資により発生した設備需要である。2020年の売上高は、上半期と下半期は横ばいにとどまるが、通年では台湾市場での受注増を受けて前年比で成長する見込みだ。

世禾科技
 半導体および光電設備の精密洗浄事業大手の世禾科技(SHT)は、中国市場での売上高が全体の2~3割を占める。中国では深セン、合肥、廈門、東莞、成都に営業拠点を展開しているが、春節(旧正月)期間はシフト制で生産に当たったため、感染拡大の影響は大きくなかった。
 新型ウイルスの感染が最も深刻な武漢には華星光電や長江儲存などの顧客があり、合肥工場が生産を手がけている。しかし、合肥工場は顧客が分散しており、武漢の顧客からの売上高は総売上高の2割以下だ。さらに、世禾科技はその他の拠点で対応することも可能であるため、売上高への影響は制御できる範囲内にとどまる見通しである。
 中国では年内の感染状況の見通しが立っていないため、世禾科技の中国市場での売上高も現時点では前年比で横ばいとの予測だ。一方、台湾市場では大手顧客が先進製造プロセスによる生産を開始し始めたため、売上高が大きく成長している。全体的に見ると、2020年の連結売上高は前年比で増加するとみられる。

京鼎精密科技
京鼎精密科技(フォックスセミコン・インテグレーテッド・テクノロジー)は半導体製造プロセス設備と自動化設備のモジュールおよび部品の研究開発、製造、販売を行う。売上高の8割は半導体設備で、残りを自動化設備とシステムインテグレーションが占める。現在、最大の顧客は米国半導体設備メーカーで、売上高は全体の8割以上に達しており、2番目の顧客は鴻海グループだ。京鼎精密科技は中国で上海と昆山に生産拠点を設置しており、米国半導体設備メーカーのほか、台湾のファウンドリーに製品を供給している。武漢の顧客はないため、感染拡大の影響は少ない。
 米国半導体設備メーカーからの受注は続いており、半導体市場も成長しているため、京鼎精密科技の2020年の売上高は17年と同水準の80億台湾元以上となることが期待される。

盟立自動化
 盟立自動化(Mirleオートメーション)は情報システム、ロボット生産ライン、液晶ディスプレイ(LCD)パネル設備、産業用コンピュータとプログラマブルロジックコントローラ(PLC)、自動倉庫などを生産する。情報システムは台湾積体電路製造(TSMC)、LCDパネル設備は台湾と中国のパネルメーカー、産業用ロボットは東風裕隆汽車や北方賓士など中国メーカー、産業用コンピュータは工作機械メーカーが主な顧客だ。同社の総売上高に占める中国市場の売上高は約6割で、残りは台湾市場が占める。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、顧客の工場再開の見通しが立たない中、受注案件の進度が影響を受けている。さらに、例年の非需要期に当たることから、第1四半期の売上高は減少すると予測される。
 幸い、武漢の顧客は1社だけで、受注金額は総売上高の5%に満たない。また、出荷も第2四半期からであるため、影響は少ない見通しだ。
 このほか、中国パネル産業は工場設置のピークが過ぎたため、盟立自動化のパネル設備の受注は前年同期比で減少している。しかし、台湾市場では物流産業の物流センター計画に加えて、半導体産業の自動化設備の需要拡大、さらに受注も増加していることから、パネル産業からの受注減を補うことができそうだ。2019年、中国市場での売上高は全体の約6割だったが、20年は台湾市場での受注増を反映して5割以下に なるとみられる。

三、まとめ
 台湾メーカーは米中貿易摩擦の影響を受けて、中国市場の売上高比重を引き下げてリスク回避を図ってきた。そのため、現時点では新型コロナウイルスの感染拡大の受注に対する影響は大きくない。注意すべき点は、中国の工場再開が遅延したことによる出荷の延期、そして中国で都市封鎖などの措置が拡大した際のサプライチェーンへの影響であろう。このほか、中国市場の縮小による世界経済への影響も、今後注目すべき問題だといえる。

機械業界-製造業全般

2週間無料モニター募集中!

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。