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《新型肺炎》新型コロナウイルスの台湾産業に対する影響分析


リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2020年4月16日

機械業界 製造業全般

《新型肺炎》新型コロナウイルスの台湾産業に対する影響分析

記事番号:T00089434

 2019年12月に中国の武漢市で発生した新型コロナウイルスは、2020年4月時点で感染者数が全世界で190万人を超え、死亡者数は12万5,000人を超えた。中国では感染予防のために都市が封鎖されて物流が途絶えたため、製造業は原材料と労働力の不足に加えて、製品が出荷できない状況となった。

 中国は台湾にとって最大の輸出および投資先であり、中台間には長年かけた完全なサプライチェーンが形成されている。また、日本と韓国は主要原材料とキーコンポーネントの輸入先であり、欧米は世界最大の消費市場であることから、各国における新型コロナウイルスの感染状況が台湾の産業と経済を大きく左右するため、今後の動向に注意が必要だ。

 工研院産業科技国際策略発展所(産科国際所)は台湾の各産業と中台間のサプライチェーンの現状、政府や企業の対策を踏まえて、新型コロナウイルスの影響とそれに対する見解を政府と研究機構、企業経営者への参考として提供している。対象は、▽半導体▽ディスプレイパネル▽電子材料▽情報通信▽スマートフォン組立▽プリント基板▽光学レンズ▽発光ダイオード(LED)▽受動素子▽バッテリーとその部品▽自動車部品▽工作機械▽産業用機械設備▽ハイテク機械設備▽石油化学▽特殊化学製品▽風力発電機材料とその部品▽太陽光発電▽医療器具▽バイオ医療――の20の産業だ。

一、産業への影響分析

 中国製造業は中間財の60~85%を国内で 生産、残りを輸入しており、なかでも「その他輸送設備」および「情報電子製品」の自給率が最も低い。中国の情報電子製品製造業は100米ドル相当の製品を生産するために台湾から4.67米ドル、韓国から5.77米ドルの原材料を輸入する必要があり、台湾と韓国からの輸入に大きく依存していることが分かる。

 また、中国製造業のうち、台湾から原材料と中間財を多く輸入している産業には、▽電力設備▽プラスチック・ゴム製品▽化学原材料・製品▽機械設備――がある。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、これらの産業 の工場再開が遅延、もしくは稼働率が低下していることは、台湾とその他国家の対中国輸出に打撃となるだろう。

 工研院は新型コロナウイルスの影響が2020年6月に収束すると仮定した上で、20年第1四半期および20年通年の台湾製造業の生産額を次のように予測している。

1)生産または原材料の調達先を中国に依存している産業は、3カ月以内は原材料および労働力、輸送手段の不足による影響が大きいだろう。▽バッテリーおよびバッテリーモジュール▽太陽光発電製品(バッテリーおよびモジュール)▽コンピュータ組立(パソコンおよびノートパソコン)▽スマートフォン組立――など各産業の2020年第1四半期の生産額は前年同期比30%以上減少すると予測される。

2)中国を主要な販売市場としている産業は、中国市場における需要減少の影響が3か月以上続くだろう。▽工作機械▽産業用機械設備▽石油化学▽ディスプレイパネル――など各産業の2020年第1四半期の生産額は前年同期比10~30%減少すると予測される。

3)自動化率が高い技術集約型産業に対する新型コロナウイルスの影響は低い。短期的には中国における物流断絶の影響を受けるものの、1カ月以内に改善されるだろう。半導体や光学レンズなど各産業の2020年第1四半期の生産額は、前年同期比10%減以下となると予測される。

4)新型コロナウイルスの感染拡大が2020年6月に収束すると仮定した場合、20年下半期には半数以上の産業が受注と生産能力を正常の水準まで回復できるだろう。このため、▽工作機械▽産業用機械設備▽自動車部品▽半導体▽受動素子▽バイオ医療――など各産業の20年通年の生産額は前年比で成長すると予測される。

5)2020年第1四半期の生産額が成長を維持できる産業は、▽受動素子▽バイオ医療▽集積回路(IC)設計――の3つとみられる。受動素子産業はMLCC(積層セラミックコンデンサ)の供給不足が続いていることから、製品価格が高い水準に維持する見通しだ。バイオ医療産業は生産能力の95%が台湾に集中しているため、転注の増加によって生産額が成長する見込みである。また、研究開発を主に台湾で行っているIC設計産業は、第5世代移動通信システム(5G)向けICの需要が高いため、市場需要は弱っているものの、20年通年では生産額は成長すると予測される。

二、まとめ

 新型コロナウイルスの感染拡大は継続しており、中国では4つの直轄市で封鎖措置が実施された。工研院産科国際所は台湾のメーカーが取るべき対策について、次のようにまとめている。

 台湾メーカーはサプライチェーンのリスク管理強化、市場開拓、サプライチェーンの分散を推進すべきである。

1)スイス銀行が行った中国製造業に対する調査によると、米中貿易摩擦の影響を受けて、2018年に中国の輸出を中心とする製造業の30%は生産拠点を▽ベトナム▽マレーシア▽インド▽インドネシア▽タイ――など中国以外の国・地域に移転させ、19年にはさらに30%のメーカーがこれに続いた。とくに、▽情報通信製品▽自動車・自動車部品▽アパレル産業――は積極的であった。

2)世界サプライチェーンが大きく変化する中、台商(海外で事業展開する台湾系企業)は中国に対する依存度を低減させることができる。工研院産科国際所の調査によると、台湾の情報電子産業は新規顧客と市場の開拓を急ぐべきだ。また、電子・電機産業および機械設備産業は原材料と部品調達先を分散させることによって、中国に対する依存度の低減を目指す必要があるだろう。

 

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