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《新型肺炎》新型コロナウイルスの台湾産業に対する影響——石油化学・ 鉄鋼・自動車


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2020年3月12日

機械業界 製造業全般

《新型肺炎》新型コロナウイルスの台湾産業に対する影響——石油化学・ 鉄鋼・自動車

記事番号:T00088803

 中国で発生した新型コロナウイルスの感染が世界規模で広がっており、産業と経済に影響を及ぼしている。中国は台湾にとって重要な貿易相手国だ(図1と2 参照)。以下、台湾の▽石油化学▽鉄鋼▽自動車――の3つの産業に対する影響を述べる。

一、石油化学産業
 台湾石油化学産業は原油を中東地域から輸入しており、台湾域内の在庫も十分で、かつ関連製品の生産も台湾ですべて行うことができる。しかし、台湾当産業は輸出の45%が中国市場向けだ。中国に最も依存している産業のひとつであり、中国の内需が台湾石化メーカーの業績を左右する。
 台湾石化最大手の台塑集団(台湾プラスチックグループ)は原材料の半分を中国に輸出しており、浙江省寧波市に工場も設置している。現在、中国の工場は正常に稼働しているものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて春節(旧正月、2020年は1月25日)連休後の生産再開が延期したため、顧客からの需要が大きく減少した。また、感染防止措置によってトラック輸送が制限されたため、出荷量も縮小した。中国の物流制限は緩やかになりつつあり、工場も再開しているが、川下の需要回復は当面観察が必要である。

二、鉄鋼産業
 石油化学産業と同様に原材料を生産する鉄鋼産業だが、新型コロナウイルスの影響は石化産業より小さい。中国鋼鉄(CSC)は自動車、建築、機械産業に鋼材を供給している。製品の69%が台湾市場向け、31%が海外市場向けで、目下台湾最大の鉄鋼メーカーである。  CSCの黄建智副総経理によれば、同社は原材料をオーストラリア、ブラジルおよびカナダから輸入しており、中国からの輸入分はないため、原材料の供給が途絶えることはないという。また、CSCは年間1,500万トンの粗鋼を生産しているが、このうち中国へ輸出しているのは全体の4%に当たる70万トンのみだ。今後、新型コロナウイルスの感染がさらに拡大した場合、同社は現在中国に輸出している製品をその他の市場で販売する予定だ。中国各産業の工場が順調に再開するかどうかがかぎとなる。
 世界最大の単一めっきメーカーである燁輝企業(YP)は、主にCSCから原材料を調達している。主力製品である亜鉛めっき鋼板は台湾と中国に生産ラインを設置しており、建築、自動車、家電などの産業に供給している。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、江蘇省と福建省の工場は生産を続けているが、顧客の工場が稼働停止しているため、供給を停止している。また、外部への輸送も制限を受けたことから、生産能力を引き下げざるをえなくなった。しかし、3月に入ってから物流が回復し始め、生産能力は9割以上回復し、外部への輸送もほぼ正常に戻っている。

三、自動車産業
 自動車産業は大量の鉄鋼を使用する。また、新型コロナウイルスが発生した湖北省は中国の重要な自動車生産地のひとつで年間生産台数は250万台、「中国のシカゴ」と呼ばれており、上汽通用、東風本田汽車(東風ホンダ)、吉利汽車などの工場がある。
 台湾自動車産業の中国工場は上海市、湖北省、河南省、浙江省などに設置され、主に中国自動車メーカーのOEM(相手先ブランドによる生産)とメンテナンスを行っている。台湾自動車部品産業の輸出額のうち、中国への輸出額が占める割合は全体のわずか4.8%だ。しかし、中国からの輸入額は全体の21%を占める140億台湾元に達する。中国製品は台湾の自動車メーカーとメンテナンス市場に供給されている。
 例えば、裕隆日産汽車の車種は中国製部品を多く使用している。中国の工場再開が滞れば、一部人気車種の部品供給が途絶える恐れがある。ほか、トヨタの台湾総代理店、和泰汽車も同様の問題に直面しており、もし部品不足となればトヨタ車などを生産する国瑞汽車も影響を受ける。
 中国はかつて自動車市場が好調であったことから、多くの企業が工場を設置した。しかし2018年に米中貿易摩擦が勃発し、さらに今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、自動車部品メーカーは第2のサプライチェーン構築を急いでおり、北米に生産拠点を移してリスク回避を図っている。
 一方、台湾で生産を行い、欧米各国を主要市場とする台湾メーカーに対する新型コロナウイルスの影響は小さい。米電気自動車(EV)大手、テスラ・モーターズのサプライヤ―である和大工業(HOTAインダストリアルMFG)は主力市場が米国と欧州のため、影響は限りがある。和大工業の沈国栄董事長は、現在中国で販売されているテスラ製品も米国で組立を行っているため、大きな影響はないとしている。

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