ワイズコンサルティング・グループ

記事番号：T00090375

　2019年末、中国で発生した新型コロナウイルス（COVID-19）の感染は世界各地に広がった。感染拡大を阻止するため、各国・地域が▽ソーシャル・ディスタンス（社会的距離）の確保▽旅行制限▽店舗の営業制限▽大人数集会の制限▽都市封鎖――などの措置を実施した。
　これによって多くの国・地域の産業と経済活動が打撃を受け、輸出産業である台湾の機械産業にも深刻な影響が及んでいる。 一、アフターコロナの課題
　現在、各国・地域が経済活動を再開するための方法を検討している。これに対し、台湾は次の課題を優先的に解決すべきだ。 １）人と人との接触の減少・回避
　新型コロナウイルスは感染力が強いため、人と人との接触を減少させ、回避することは有効な感染予防策のひとつと考えられている。製造業、サービス業および日常生活では自動化設備を導入して人と人との接触を減少させ、感染を予防することが今後の課題となる。
２）製造業サプライチェーンの再編
　新型コロナウイルスの感染は世界の製造大国に拡大し、多くの産業サプライチェーンが中断した。これまでグローバル化した大手メーカーは、コスト優先のために生産コストが低い国に工場を設置し、在庫を持たない「ジャストインタイム」式の生産モデルを実施してきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くのメーカーがコストとサプライチェーンの安定性のバランスについて見直しを進めており、産業サプライチェーンの再編と生産能力の移転が促進されるとみられる。
二、対策
　以上の課題に対し、台湾機械産業は次の３つを重点として、新たな商機を開拓することができるだろう。
１）自動化・無人化設備と生産ラインの開発
　自動化とスマート化技術を取り入れた生産ラインは、一般の生産ラインより労働力を必要としない。生産現場で人と人との接触を減少させることができ、感染予防につながることから、メーカーの投資意欲は高い。また、労働力不足の国・地域は自動化・スマート化生産ラインの導入によって、安定した感染予防物資の生産能力を確保することができる。
２）自律走行型搬送ロボット
　自律走行型搬送ロボット（ＡＭＲ）はセンサーで周囲の状況を感知できるため、事前に進行ルートをガイドする補助装置（磁気テープなど）を設置する必要なく、特定の作業エリア内における搬送作業を行うことが可能だ。また、ロボットアームを装備すれば貨物の積み卸しに対応できるため、汎用性が高い。さらに、各種センサー（光学、赤外線など）モジュールを内蔵することで、▽パトロール▽身分識別▽体温計測▽消毒――といった作業も行うことができる。
３）積層造形技術の応用
　新型コロナウイルスの感染拡大は世界の製造業に打撃を与え、とくにグローバル化したサプライチェーンの中断が製造業に深刻な影響を及ぼした。このことから、海外に工場を設置するメーカーは生産拠点の調整を進めている。また、サプライチェーンの中断によるリスクを減らすため、在庫の比例を上げるほか、積層造形技術の導入によって一部の部品生産能力を確保することも検討している。積層造形技術のメリットは以下の通りだ。
１）製品開発の時間短縮
２）カスタマイズ製品の需要に対応可能
３）製品・部品の改良（特殊構造、軽量化や部品数の削減により製品信頼度を向上させる
４）高単価部品の修理（軍事、航空宇宙、船舶、発電設備などの高単価・長期稼働設備の部品）
５）サプライチェーンの簡略化（部品在庫の削減）
６）材料使用効率の向上

三、まとめ
　台湾は自動化・無人化生産設備とスマート生産ライン、そして製造業と倉庫業向けのＡＭＲ製品の分野において、優れたソリューションとシステム統合能力を有している。機械メーカーは、引き続き台湾と海外の製造業市場を開拓し、新たな商機を把握すべきだ。また、ＡＭＲのサービス業への応用と積層造形技術のソリューションについても、台湾の関連産業と研究機関はすでに技術を確立している。今後は、現場の需要に応じてソリューションを研究開発し、台湾市場で実用化した後、海外市場への進出を図るべきである。台湾メーカーは、製品の研究開発を推進しつつ、台湾と海外市場の関連規定に従ってビジネスモデルと産業チェーンを構築すれば、市場進出に成功することができるだろう。