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第415回 ペットが人にけがをさせた場合の飼い主の刑事および民事責任/台湾


ニュース 法律 作成日:2022年2月14日_記事番号:T00101015

知っておこう台湾法

第415回 ペットが人にけがをさせた場合の飼い主の刑事および民事責任/台湾

 かなり知名度がある国民党前副秘書長の張栄恭氏が近所のシェパード「メアリー」にかまれて負傷した事件について士林地方法院(地方裁判所)は2022年1月10日、21年度易字第494号刑事判決を下し、メアリーの飼い主の王氏が刑法第284条の過失傷害罪(過失により人を傷害した者は、1年以下の懲役、拘留または10万台湾元=約41万6,000円以下の罰金に処せられる)に該当すると認定し、55日の拘留に処しました。

犬のノーリード散歩

 張氏が21年2月13日、飼育する小型犬「花花」を連れてコミュニティーの庭園内を散歩していた時に、メアリーが突然、花花に向かって跳び掛かってきて攻撃しました。張氏はメアリーを制止しようと手を出しましたが逆に地面に押し倒され、メアリーは続けて張氏を攻撃し、張氏が腕、膝頭をかまれて負傷する事態となりました。

 裁判官がメアリーの飼い主の王氏は過失傷害罪を構成するとの判決を下した主な理由は以下の通りです。

1、本件では、王氏はコミュニティーの庭園内でメアリーを散歩させている時に、▽メアリーのリードを外し、口輪またはその他の安全装置を付けていなかった、▽常にそのそばに控えることもせずに、メアリーにコミュニティー内を自由に駆け回らせ、近所の他の住人(張氏)のペットを追い掛けるのを放任した──ことにより、張氏がそれを制止しようと前に出た時にメアリーから攻撃され、負傷することとなった。

2、動物保護法第7条では「飼い主はその飼育する動物が理由なく他人の生命、身体、自由または財産を侵害することを防止しなければならない」と定めている。王氏は本条の義務に違反しており、過失があり、当該過失行為と張氏の負傷という結果には因果関係があるため、王氏は過失傷害罪を構成する。

 台湾法では、ペットが人にけがをさせた場合、飼い主には上記の刑事責任があるほか、民法第190条の賠償責任(動物が他人に損害を与えた場合、その占有者が損害賠償責任を負う。ただし、動物の種類および性質に応じて相当の注意を払って監督をしているとき、または相当の注意を払って監督していても損害の発生を免れないときは、この限りではない)もありますので、動物を飼育している人は、必ずそのペットをしっかりと監視するようにしてください。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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