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第475回 セクシュアルハラスメント/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年6月12日_記事番号:T00109441

知っておこう台湾法

第475回 セクシュアルハラスメント/台湾

 最近、台湾で知名度が高く、良いイメージを持たれている多くの政治家などがセクシュアルハラスメント(セクハラ)行為をしたと告発されたことから、「セクハラ」の問題は全台湾が注目する焦点となっています。

セクハラの定義

 セクシュアルハラスメント防止法(以下「本法」といいます)第2条によりますと、「セクハラ」の定義は次のとおりです。

 「他人に対しその意思に反して実施する性または性別に関する性侵害犯罪以外の行為であって、次に掲げる状況のいずれかに該当するもの。

一、当該他人が当該行為に従うことまたはこれを拒否することを、その仕事、教育、訓練、服務、計画、活動に関する権益の獲得、喪失または減少の条件としている。

二、文字、図画、音声、映像もしくはその他の物品を展示または放送する方式により、または差別、侮辱する言動により、または他の方法により、他人の人格・尊厳を害し、または他人に恐怖心を抱かせる、敵意を感じさせるもしくは他人の気分を害する状況をもたらし、またはその仕事、教育、訓練、服務、計画、活動もしくは正常な生活の進行に不当な影響を与えている。」

 従って、当該政治家などが指摘された行為には「突然女性に対しキス、ハグをする、尻を触った」、「女性に対し『あなたがたまに私の身体のわがままを聞いてくれさえすれば、あなたの理想をかなえる手伝いをしてもいい』と言った」などがありますが、これらは全て本法のセクハラに該当します。

セクハラの責任

 本法によりますと、セクハラの責任には次が含まれます。

1、民事責任。本法第9条は「(第1項)他人に対しセクシュアルハラスメントをした者は、損害賠償責任を負う。(第2項)前項の場合において、財産上の損害ではないとしても、相当の金額の賠償を請求することができ、その名誉を侵害された者は、名誉回復のための適切な処分を請求することもできる」と規定しています。

2、行政責任。本法第20条は「他人に対しセクシュアルハラスメントをした者は、直轄市、県(市)の主管機関が1万台湾元以上10万元以下(約4万5000円以上45万円以下)の過料に処する」と規定しています。

3、刑事責任。本法第25条第1項は「セクシュアルハラスメントを意図し、他人が抗拒できないことに乗じてキス、ハグをしたり、その臀部、胸部またはその他身体のプライベートゾーンを触ったりする行為をした者は、2年以下の有期懲役、拘留に処し、または10万元以下の罰金を科しもしくは併科する」と規定しています。

 しかしながら、セクハラ事案の立証は相当困難であり、実務においては、加害者が認めない限り、セクハラ事案が成立することは少ないです。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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