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第152回 「動産抵当」について


ニュース 法律 作成日:2016年7月18日_記事番号:T00065298

知っておこう台湾法

第152回 「動産抵当」について

 ここ数年、景気が悪く、商品の買主などの債務者たる会社の財務状況が悪化したため、売主などの債権者が代金などの債権を回収できないといった状況が少なからず発生している。このため、いかにして債権の回収を確保するかが企業にとって非常に重要な課題となっている。

 債務者に対し、その負担する債務について十分な担保物を要求することは、債権の回収を確保する上で有効な方法である。担保の方式については、債務者の建物、土地に対する不動産抵当権の設定以外に、債務者の動産に対する「動産抵当権」の設定もよく見られる。弊職は最近、顧客のために、このような動産抵当権の登記手続を代行した。

 「動産の抵当」とは、動産担保取引法第15条によれば、債務者または第三者に占有を移転せず、担保として供される動産に抵当権者が動産抵当権を設定し、債務者が契約を履行しない場合に抵当権者が抵当物を占有・売却できる。また、その売却によって得た代金について、ほかの債権に優先して弁済を受けるというものである。

動産の抵当は債務者が占有

 動産抵当権と動産質権の違いは、主に次の3点である。

一.前者における動産は債務者が占有したままであるが、後者では債権者が動産を占有しなければ質権が失効してしまう。

二.前者では債権者、債務者が動産抵当の設定に関する書面契約を締結しなければならないが、後者では書面契約を締結する必要がない。

三.前者は主管機関に登記して初めて発効するが、後者は登記を行う必要がない。

 実務においては、債務者が法人である場合、動産抵当権の設定によって債務の担保を提供することが多い。その理由は、担保物が機械などの生産力を有する道具で債務者が占有しているとき、その機械を利用して生産を行うことができれば債務者の弁済能力が向上する一方、動産抵当権者にしてみれば、債務者が期間内に債務を弁済しなかった場合、債権者がその担保物を引き取り、競売にかけ、それによって得た金銭を弁済を獲得できるためである。債権者が先に裁判所の許可を取得した後でなければ競売を行うことができない不動産抵当に比べ、動産抵当はかなり便利であると言える。

 もっとも、動産抵当権の設定登記に当たっては、かなり多くの契約書や申請文書が必要となるため、迅速に行うには経験のある法律事務所に依頼されることをお勧めする。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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