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第172回 台湾法における「営業秘密」について


ニュース 法律 作成日:2016年12月19日_記事番号:T00068084

知っておこう台湾法

第172回 台湾法における「営業秘密」について

 先日のメディア報道によれば、鴻海科技集団(フォックスコン)の子会社、群創光電(イノラックス)の主管およびエンジニア計48人がライバルである中国の彩虹光電に転職したことに鴻海の郭台銘董事長が激怒し、当該離職従業員48人に対しイノラックスの営業秘密の漏えいに関する法的責任を追及する旨の内容証明郵便を送付した。この事件は企業における営業秘密の重要性を顕著に示している。

 「営業秘密」について、営業秘密法第2条には以下の通り明確に規定している。「本法における営業秘密とは、方法、技術、製造工程、配合、プログラム、設計または生産、販売または経営に用いることができるその他の情報で、以下の要件に該当するものを指す。1.当該情報に通常関わる人が知らない。2.その秘密性により、実際のまたは潜在的な経済的価値を有する。3.所有者がすでに合理的な秘密保持措置を取っている」。

海外への意図的漏えいはさらに重罰

 従業員が会社の営業秘密を漏えいした場合、民事上の損害賠償責任が発生するほか、刑事責任が発生することもある。営業秘密法第13条の1第1項には「意図的に自己もしくは第三者の不法な利益のために、または営業秘密の所有者の利益を損ねて、以下の事由のいずれかに該当する場合、5年以下の懲役または拘留に処するものとし、100万台湾元以上1,000万元以下の罰金を併科することができる。1.窃盗、不法占有、詐術、脅迫、無断複製またはその他の不正な方法により営業秘密を取得し、または取得後、さらに使用、漏えいした場合。2.営業秘密を知っており、または保有しており、授権を経ずにまたは授権の範囲を超えて当該営業秘密を複製、使用または漏えいした場合。3.営業秘密を保有しており、営業秘密の所有者から削除、廃棄しなければならない旨を告知されたが、営業秘密を削除、廃棄しなかった、または隠匿した場合。4.他者が知っている、または保有する営業秘密が前3号に定める事由に該当することを明らかに知りながら取得、使用または漏えいした場合」と規定されている。さらに同法第13条の2第1項には「意図的に外国、中国大陸、香港またはマカオにおいて使用し、前条第1項の各号の罪を犯した場合、1年以上10年以下の懲役に処するものとし、300万元以上5,000万元以下の罰金を併科することができる」と規定されている。従って、イノラックスの離職従業員が彩虹光電にイノラックスの営業秘密を漏えいした場合、その刑事責任はさらに重くなる。

 離職従業員が会社の営業秘密を漏えいすることを防止するには、社内のコンピューターシステム、文書等の秘密情報の管理を強化するほか、法律上有効な方法として、雇用契約に競業避止条項および秘密保持条項を盛り込む、社内規定に台湾法に沿った秘密保持条項を加える、営業秘密法に関する社内講習会を行うなどの方法がある。貴社の営業秘密を保護するため、台湾の法規を熟知した法律の専門家のアドバイスを受けることをお勧めする。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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