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第232回 従業員による会社のファイル削除


ニュース 法律 作成日:2018年4月23日_記事番号:T00076640

知っておこう台湾法

第232回 従業員による会社のファイル削除

 今年3月下旬、新竹地方検察署は、某社の従業員(女A)が会社のコンピューターに保存されたファイルを削除した行為について、刑法第359条の「正当な理由なく電子記録を削除した罪」(他者のコンピューターまたはその関連設備の電子記録を正当な理由なく取得、削除または変更したことにより、公衆または他者に損害を与えた場合、5年以下の懲役または拘留、もしくは20万台湾元以下の罰金に処す、またはこれを併科する)で起訴した。

 本件の概要は以下の通りである。

1.5万件を故意に削除

 女Aは、B社の研究開発(R&D)部門のマネジャーであった。B社は、2014年3月以降、女AがB社が開発中の製品のソースコード、回路基板図、規格などの営業秘密データを、B社の同意を得ずにUSBなどの装置に保存した後、B社の競合相手に渡していたことに気付いた。B社はこれを理由として、14年6月に女Aを解雇した。

 女Aは6月某日、B社で退職手続き・引き継ぎを行っている際、同僚が見ていない隙を狙って、B社のコンピューター上に保存された製品研究開発関連ファイル約1万5,000件を削除した。

 B社が女Aを刑事告訴し、新竹地方検察署は刑法第359条の「正当な理由なく電子記録を削除した罪」で、女Aを起訴した。

刑事付帯民事訴訟

 女Aが削除したファイルはいずれも元に戻すことができず、B社に甚大な損害をもたらしたため、B社は女Aに対し別途、刑事付帯民事の損害賠償訴訟を提起した。

 刑事訴訟法第487条以下の規定によれば、犯罪により損害を受けた者は、検察官が犯罪容疑者を起訴した後、付帯民事訴訟を提起し、損害賠償を請求することができる。付帯民事訴訟を提起するメリットは、原告(被害者)が一般民事訴訟を提起する際に納付しなければならない裁判費用(およそ請求額の1%)を支払う必要がないことである。また、犯罪容疑者の犯罪行為は既に検察官の調査、認定を経ているため、付帯民事訴訟において被害者が勝訴判決を獲得する確率は非常に高い。

 弊職はよく日本企業を代理し、従業員の不正行為について刑事告訴や付帯民事訴訟を提起しています。何かお困りのことがあれば、いつでも弊所までご相談ください。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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