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第270回 労働者のストライキについて


ニュース 法律 作成日:2019年2月18日_記事番号:T00082022

知っておこう台湾法

第270回 労働者のストライキについて

 中華航空(チャイナエアライン)は、一部のパイロットが2月8日よりストライキに入ったため、200便以上が欠航となりました。台湾最大の航空会社である同社の大規模な欠航により、影響を受ける乗客、旅行業者らは数十万人規模に上るため、今回のストライキは台湾中の注目を集めました。

 「ストライキ」とは、労使争議処理法第5条第5号によれば、労働者が実施する、労務提供を一時的に拒否する行為を指します。台湾法上、労働者はストライキ権を有することが基本的に認められていますが、以下の制限を受けなければなりません。

一、「調整事項に関する労使争議」が存在すること。

 労使争議処理法第5条第2号、第3号によれば、労使争議とは「権利事項に関する労使争議」(労使当事者双方が法令、労働協約、労働契約の規定に基づき行う、権利義務に関する争議を指す。例:雇用主による労働者の不当解雇など)および「調整事項に関する労使争議」(労使当事者双方が労働条件について継続維持または変更を主張する争議を指す。例:労働者による労働条件改善要求など)を指す。

 なお、労使争議処理法第53条によれば、「権利事項に関する労使争議」は訴訟などの手続きを通して解決しなければならず、「調整事項に関する労使争議」についてのみストライキを起こすことができる。

二、事前に政府主管機関に労使調停を申請し、かつ、調停が不成立であること。

 根拠:労使争議処理法第8条(「労使争議につき調停、仲裁または裁決の期間において、使用者は当該労使争議事件に起因して営業を停止し、業務を停止し、労働契約を終了しまたは労働者に不利となるその他の行為をしてはならず、労働者は当該労使争議事件に起因してストライキまたはその他の争議行為を実施してはならない」)。

三、労働組合の組合員の無記名投票を実施し、全組合員の過半数の同意を得ていること。

 根拠:労使争議処理法第54条第1項(「労働組合は、労働組合の組合員の直接、無記名の投票および全組合員の過半数の同意を経ていない場合、ストライキを宣告できない」)。

厳しい批判の対象に

 メディア報道によれば、中華航空のパイロットによる今回のストライキは、法律上、上記の要件に適合する適法なストライキです。しかし、第三者である乗客、旅行業者にも重大な損害を与えているため、その合理性については社会から厳しく批判されました。

 労働者がストライキに入ると、会社、顧客、ひいては第三者に重大な損失をもたらすことが多いため、社内で労使争議が発生した場合は、ストライキの発生を防ぐため、労働法や交渉テクニックに習熟した法律の専門家に前もって相談すべきです。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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