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第304回 橋梁崩落時の政府の賠償責任


ニュース 法律 作成日:2019年10月14日_記事番号:T00086290

知っておこう台湾法

第304回 橋梁崩落時の政府の賠償責任

 宜蘭県の有名なランドマークである「南方澳跨港大橋」が10月1日、突然崩落しました。6人が死亡、20人余りが重軽傷を負い、3隻の漁船が破損する重大事故となり、台湾社会の注目を集めました。南方澳大橋は台湾政府が建設した施設であるため、本件事故の被害者とその家族は、政府に賠償を請求できます。

公務員の行為への賠償責任

 国家賠償法(以下「本法」という)では、政府の賠償責任を次のように規定しています。

第2条
第1項 本法における公務員とは、法令に基づき公務に従事する者をいう
第2項 公務員が職務執行に際し公権力を行使するときに、故意または過失により、不法に人民の自由または権利を侵害した場合、政府は損害賠償責任を負わなければならない。公務員が職務執行を怠ったために人民の自由または権利が損害を受けた場合も同様とする
第3項 前項の場合において、公務員に故意または重大な過失があるとき、賠償義務を負う機関はその者に対し求償権を有する

 従って、例えば、警察が銃器を使用する際の不注意により、罪のない民衆を射殺した場合、同条による政府の賠償責任が発生します。

公共施設に対する賠償責任

第3条
第1項 公有の公共施設の設置または管理において欠陥があり、そのために人民の生命、身体または財産が損害を被った場合、政府は損害賠償責任を負わなければならない
第2項 前項の場合において、損害の原因に対し責任を負うべき者がいるときは、賠償義務を負う機関はその者に対し求償権を有する

 例えば、今回崩落した南方澳大橋は本条に規定する公有の公共施設であり、本法第9条第2項に基づき、当該橋梁(きょうりょう)を管理する「台湾港務公司(TIPC)」が被害者とその家族に対し損害賠償責任を負わなければなりません。本件事故の原因は依然調査中で、橋梁の設計に瑕疵(かし)があることが最終的に確認された場合、TIPCは、被害者に賠償した後、本法第3条第2項の規定に従い、橋梁を設計した建築士事務所に賠償を請求することができます。

 また、今回の橋梁崩落事故では外国人労働者も死亡しました。本法では外国人の賠償請求権を除外していないため、当該死者の遺族は同様に、TIPCに損害賠償を請求することができます。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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