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第313回 刑事付帯民事訴訟


ニュース 法律 作成日:2019年12月16日_記事番号:T00087425

知っておこう台湾法

第313回 刑事付帯民事訴訟

 いわゆる「刑事付帯民事訴訟」とは、刑事訴訟手続きに付帯して提起する民事訴訟を指します。

検察の起訴後に提起

 例えば、甲がトラックを運転中に不注意で乙をはねて後遺障害を負わせた場合、乙は甲に対し「過失重傷害罪」による刑事告訴を提起し、検察官に甲の犯罪行為に対する調査を行わせ、刑事訴訟手続きを開始させることができます。検察官が「過失重傷害罪」により甲を起訴した後、乙はさらに当該罪を審理する地方裁判所の刑事法廷に対し「刑事付帯民事訴訟」を提起し、医療費、リハビリ費用など民事上の損害賠償を甲に請求することもできます。

 台湾法における刑事付帯民事訴訟についての重要な規定は以下の通りです。

刑事訴訟法(以下「本法」という)第487条第1項:「犯罪により損害を受けた者は、刑事訴訟手続きに民事訴訟を付帯して提起し、被告および民法により賠償責任を負う者に対し、その損害を回復するよう請求することができる」

 例えば上記の例では、罪を犯した者は甲のみですが、民法上は甲の雇用主も従業員の不法行為に対し損害賠償責任を追わなければなりません。従って、乙が付帯民事訴訟を提起する場合、甲と一緒に甲の雇用主も被告とすることができます。

本法第488条:「付帯民事訴訟の提起は、刑事訴訟の起訴後、第二審の弁論終結までにこれを行わなければならない。ただし、第一審の弁論終結後、控訴を提起するまで、提起することはできない」

本法第499条第1項:「刑事訴訟で調査された証拠は、付帯民事訴訟でも調査を経ているものと見なす」

本法第500条:「付帯民事訴訟の判決は、刑事訴訟の判決により認定された事実に依拠しなければならない」

時間・費用の節約に

 被害者が刑事付帯民事訴訟を提起する主なメリットは次の二つです。

1.同じ手続きで刑事、民事の紛争を同時に解決し、訴訟を行う時間を大幅に節約することができる

2.被害者が加害者に対し損害賠償訴訟を別途提起する場合、被害者は裁判費用(およそ請求金額の1%)を納付する必要があるが、刑事付帯民事訴訟の裁判費用は免除される

 請求金額が莫大(ばくだい)である場合、刑事付帯民事訴訟を提起することは、被害者にとって最善の訴訟戦略になると言えます。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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