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第366回 図利加害目的の個人情報収集/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年1月11日_記事番号:T00094108

知っておこう台湾法

第366回 図利加害目的の個人情報収集/台湾

 会社がその事業活動において、個人情報を取り扱う場面は多いですが、法律上、個人情報の収集・利用には、厳しい制限があります。

 個人情報保護法(以下、法令名を省略します。)第6条第1項では、法律に明文の規定がある場合などを除き、病歴、医療、遺伝子、性生活、健康診断、犯罪記録の個人情報を収集、処理または利用してはならないとされています。

 また、第19条第1項によると、その他の個人情報を収集または処理する場合であっても、特定の目的が必要とされ、かつ、▽法律の明文がある場合▽当事者と契約関係またはそれに類似する関係にある場合▽当事者の書面による同意を得た場合──など同項各号の要件を満たす必要があります。

 第41条によると、自己もしくは第三者の不法の利益を図ることまたは他人の利益を害することを意図し、上記第6条第1項や第19条の規定に違反し、他人に十分な損害を与える場合、5年以下の有期懲役に処され、100万台湾元(約370万円)以下の罰金を併科される可能性があります。

非財産的権利の侵害にも刑罰

 2020年12月9日、最高法院刑事大法廷は、弟が兄の同意を得ずに、兄が加入している保険会社から兄の債権証書や株式などに関する情報を取得したことについて、兄がプライバシー権侵害を理由に告訴した事案において、第41条に規定される「利益」の範囲についての統一見解を示しました。

 この見解によると、「自己もしくは第三者の不法の利益を図る」の部分については、財産上の利益に限られるものの、「他人の利益を害する」の部分については、財産上の利益に限られません。

 したがって、後者については、プライバシー権などの非財産的権利も含まれることになり、このような権利を害することを意図して、個人情報を収集・利用した場合には、第41条に規定される刑事責任を負う可能性があります。

 以上のように、個人情報の収集・利用について財産上の利益を得る目的がなくとも、刑事罰を受けるリスクがあるため、個人情報の取り扱いについては、十分に注意を払う必要があります。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

福田優二弁護士

福田優二弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

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