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第364回 犯罪被害者補償/台湾


ニュース 法律 作成日:2020年12月21日_記事番号:T00093790

知っておこう台湾法

第364回 犯罪被害者補償/台湾

 台湾に留学していたマレーシア籍の女子大生が2020年10月下旬に、梁という台湾籍男性に強姦(ごうかん)、殺害された事件は、台湾、マレーシア双方の高い関心を集めました。メディアの報道によると、犯人には賠償するのに十分な資産がない可能性があることから、被害者の遺族が11月に「犯罪被害者補償」を台湾政府に申請したとされています。

犯罪被害者補償とは

 いわゆる「犯罪被害者補償」制度とは、犯罪事件発生後、加害者の経済力不足または行方不明などの理由により、被害者やその家族が往々にして賠償を得られないことを踏まえ、台湾政府が被害者保護法の規定に基づき、犯罪行為により死亡した者の遺族、重傷を負った者または性暴力犯罪の被害者に対して金銭による補償を行う制度をいいます。

 犯罪被害者補償の項目および金額の上限に関しては、以下の三つに分かれています。

1.死者の遺族に対する補償金

 これには次のものが含まれます。

(1)被害者が負傷したことにより支出した医療費。最高40万台湾元(約145万円)

(2)被害者が死亡したことにより支出した葬儀費用(最高30万元)

(3)被害者が死亡したことにより履行できない法定扶養義務(最高100万元)

(4)慰謝料(最高40万元)。

2.重傷害補償金

 これには次のものが含まれます。

(1)被害者が負傷したことにより支出した医療費(最高40万元)

(2)被害者が重傷を負ったことにより喪失もしくは減少した労働能力または増加した生活面での需要(最高100万元)

(3)慰謝料(最高40万元)

3.性暴力補償金

 これには次のものが含まれます。

(1)被害者が負傷したことにより支出した医療費(最高40万元)

(2)被害者が性暴力を受けたことにより喪失もしくは減少した労働能力または増加した生活面での需要(最高100万元)

(3)慰謝料(最高40万元)

 被害者やその遺族は、犯罪発生地に所在する地方検察署に対して申請を行わなければなりません。本件マレーシア籍女子大生殺害事件については、高雄の橋頭地方検察署(地検)により受理され、審査が行われることになります。弊職が被害者を代理して補償を申請した経験によれば、一般的に、申請後、約6~9か月程度で賠償を獲得することができます。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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