日本政府が提供する英アストラゼネカ（ＡＺ）製の新型コロナウイルス感染症ワクチン124万回分が４日午後２時前、日本航空（ＪＡＬ）JL809便で桃園国際空港に到着した。市中感染が急拡大し、ワクチン調達が急務となる台湾に対し、日本が真っ先に支援の手を差し伸べた。中央社電などが伝えた。

中央流行疫情指揮中心（中央流行疫情指揮センター）指揮官の陳時中・衛生福利部（衛福部）長は４日午後２時の記者会見で、ワクチンが先ほど到着したと報告し、日本に感謝するフリップボードを掲げた（指揮センターYouTubeより）

　茂木敏充外相は４日午前の記者会見で、日本で製造したアストラゼネカ製ワクチン124万回分を、無償で台湾側の窓口機関、台湾日本関係協会を通じて台湾に提供すると発表した。茂木外相は、台湾は近ごろ感染拡大がみられるが、当面ワクチン調達が厳しい状況にあると説明した上で、「10年前の東日本大震災の際に台湾の方々がいち早く、多くの義援金を送ってくれ、日本の人々に鮮明な記憶が残っている。台湾との重要なパートナーシップ、友情を踏まえた提供だ」と語った。

ワクチンを載せたＪＡＬ航空機は、予定時刻より30分以上早く桃園空港に到着した（４日＝中央社）

　日本側の発表後、台湾から感謝のコメントが相次いだ。蔡英文・総統は、自由と民主の価値を共有するパートナーからのスピーディーな支援に感謝すると表明した。外交部は、日台の防疫対策分野での協力を強化し、共に困難な状況を乗り切ろうと表明した。謝長廷・駐日代表は、日本航空が台湾に運ぶワクチンを成田国際空港でうれしく見送ったと、フェイスブック（ＦＢ）に投稿した。

　日本メディアの報道によると、日本から提供されたのは、日本国内で当面、公的な接種に使用しない方針のアストラゼネカ製ワクチン。台湾に複数回に分けて提供する予定で、総量は調整中という。

　安倍晋三・前首相が、台湾への迅速なワクチン提供を推し進めたとされる。日本メディアによると、謝・駐日代表が24日、米国のヤング駐日臨時代理大使らを東京都内の代表公邸に招いた際に、同席していた日本の政界関係者の中に、安倍・前首相の補佐官を務めた薗浦健太郎・衆議院議員が含まれ、台湾へのワクチン提供について話したようだ。ヤング駐日臨時代理大使もこれを支持したという。

中国の妨害懸念

　日台の政府からの公式発表が到着当日までなかったのは、中国による妨害の恐れがあったためとされる。

　日本から台湾へのワクチン提供検討が報じられた後、中国外交部が、感染対策を名目とした政治的パフォーマンスや中国への内政干渉に強く反対する、新型コロナワクチン提供を政治の道具にすべきでないと表明していた。

　一方、黄偉哲・台南市長は３日夜にフェイスブックで、日本政府の日台友情に感謝し、台南市政府は台南在住の日本人約800人を優先接種対象に含めるとの考えを示した。

米国のワクチン提供先、台湾も

　米バイデン大統領は３日、新型コロナワクチン共同購入の国際的な枠組み「COVAX（コバックス）ファシリティー」を通じ、1,900万回分を他国・地域に提供すると発表した。うち700万回分がアジア向けで、台湾、インドなど20カ国・地域に配分される。台湾への配分量はまだ決定していない。

日本語で感謝の言葉が綴られた（衛生福利部）

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