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第394回 詐欺罪/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年8月30日_記事番号:T00098103

知っておこう台湾法

第394回 詐欺罪/台湾

 台北地方検察署は8月23日、有名建築会社の責任者である宋と、不動産販売会社の責任者である張を詐欺罪で起訴しました。2人は台湾の不動産業界で知名度が高いため、本件は大きな注目を集めています。

有名マンションと誤認

 台北地方検察署の起訴概要は以下の通りです。

 宋、張・両被告は2010年、新北市深坑区で「帝品苑」建設プロジェクトを進めた際、当該建築物の地下1階から地下3階まで全てが駐車場であり、有名な高級住宅「帝宝」とは無関係であることを明らかに知りながら、消費者に対し「『帝品苑』は地下1階にフィットネスルーム、ビリヤードルーム、親子プレイルーム、交流室、カラオケ(KTV)など豪華な施設がある」、「『帝品苑』は『帝宝』と同じグループの商品である」など不実の情報を提供し、消費者に真実であると信じさせ、深坑区の当時の市価の2倍以上の高値で当該不動産物件を販売しました。

 また、宋、張・両被告は、その犯罪行為を隠すため、わざわざ「コミュニティー緑化基金」の名目で、不動産販売所得のうち2,360万台湾元(約9,300万円)を管理委員会に渡し、さらに「地下1階の各種施設の設置を管理委員会の名義で委託すること」を要求。もし詐欺が発覚した場合には管理委員会に責任転嫁しようとしました。

 宋、張・両被告は上記の手段で5億3,000万元の不当利益を獲得しました。

 16年、新北市政府工務局は「帝品苑」の地下1階の公共施設が全て駐車スペースを占用した違法建築であることを発見。使用禁止および全面撤去を要求しました。これにより住民は宋、張・両被告に対し詐欺罪による刑事告訴を行いました。

 注目すべき点は、台北地方検察署が本件受理後、1人目の担当検察官が、本件は単純な民事紛争に過ぎないと判断し、宋、張・両被告を不起訴処分としたことです。しかし、被害者の不服申し立てにより、不起訴処分は高等検察署によって破棄され、台北地方検察署の2人目の検察官の再捜査により、今年8月下旬にようやく本件が起訴されました。

民事訴訟も勝訴

 「詐欺罪」の法律の根拠は、刑法第339条第1項「自己または第三者による不法な所有を、意図的に不正に他者に交付した場合、5年以下の懲役、拘留、50万元以下の罰金を科す、もしくはこれらを併せて処する」です。

 実務上、刑事上の詐欺罪が成立する場合、被害者による民事訴訟も基本的に勝訴します。

 台湾において、「帝品苑」のように駐車スペースなどの公共施設を不法に流用する建設プロジェクトは多く、本件の判決結果により、ほかの建設プロジェクトの住民が建築業者の責任を追及する可能性があります。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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