リサーチ 経営 人事労務 台湾事情 作成日:2025年9月3日
日系企業給与動向記事番号:T00123894
2025年日系企業の月給は台湾企業より3千台湾元高い
直近10年間の日台企業の月給推移を見ると、日台間には多少の差額はあるが、全期間を通じて日系企業が台湾企業を上回っている。両者とも緩やかな上昇傾向にある(図1)。
背景の一つに、2016年に就任した蔡英文前総統が掲げた最低賃金の引き上げ政策がある。目標を3万台湾元に設定し、8年間で最低賃金は2万台湾元台から2万7千台湾元台へ上昇、累計で37.3%引き上げられた。
こうした底上げの影響が企業全体の賃金水準にも波及し、日台企業の月給水準も上昇した。
昇給実施率は在台日系企業が99%、台湾企業は50%にとどまる
今年の調査で、昇給を実施しないと答えた在台日系企業はわずか1%だった(図2)。昇給方法には、勤続年数や仕事の成果などに応じて賃金を引き上げる「定期昇給」と、賃金ベースそのものを底上げする「ベースアップ昇給(ベア昇給)」がある。定期昇給は評価結果と連動することが多く、ベア昇給は経済成長や物価上昇などを考慮して行われる。
一方、台湾企業の昇給実施率は50%で、内訳は定期昇給26%、ベア昇給6%、両方を実施する割合8%、さらに人材流出の防止などの目的で研究開発や営業などのキーポジションに限定して行う「特定職の特別昇給」が11%。
2023〜2025年在台日系企業の昇給率は3%台を維持
弊社の調査によると、2025年の在台日系企業の昇給率は昨年と同様に3.3%台だ。2023年は3.1%で、直近3年間大きな変動がなく3%を維持している。
日系企業の昇給率を決定する要因としては、定期昇給では「本人の成果(実績)」、ベア昇給では「消費者物価指数の上昇」が主因である。さらに、両者に共通する要因として「台湾法人の業績実績」と「業界の支給状況」が上位に挙げられている。
日系企業の強みは安定した昇給にある
日台の給与と昇給状況を比較すると、給与水準に大きな差はないが、日系企業は安定的な昇給を行っており、これが労働市場での強みとなっている。
しかし、昇給が一律で成果と連動していない場合には、市場競争の激化や優秀人材の流動化に十分対応できないリスクがある。人材の定着や採用競争力を高めるためには、能力や成果に応じた評価・昇給制度を整え、変化する市場環境に柔軟に対応できる仕組みづくりが重要である。
本コラムで紹介しきれない部分はまだたくさんあるので、ご興味のある方は、弊社が発行した給与レポートにてご確認ください。
※2025年在台日系企業給与レポート:
https://www.ys-consulting.com.tw/research/salesreport/119.html
林芳米
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