リサーチ 経営 人事労務 台湾事情 作成日:2026年7月24日
日系企業給与動向記事番号:T00129616
前回のコラム(https://www.ys-consulting.com.tw/research/129615.html)では、2026年在台日系企業の給与が伸び悩む傾向にある一方、物価高によるベースアップが急増している実態をお伝えしました。今回は、台湾企業との比較データから浮かび上がった、日系企業における「3つの人材流出リスク」について解説します。
日台給与差は年々縮小傾向に
2026年の行政院労働部の最新調査と比較すると、全体平均では月収(日系50,940元 vs 台湾全体49,174元)、年収(日系77.1万元 vs 台湾全体73.7万元)と、日系企業が優位を保っています。しかし、過去10年間の推移を見るとその差額は年々縮小しており、台湾企業に肉薄されているのが現実です。
さらにデータを深掘りすると、日系企業における人材定着の障壁となる「3つの流出リスク」が見えてきます。
リスク1:次世代リーダー(役職者)で生じる逆転現象
一般職の段階では、日系企業の給与が台湾市場を上回っています。しかし、最初の役職である「監督職」へ昇格した途端、台湾全体(62,981元)が日系(56,886元)を逆転します。さらに管理職、経営職へと階層が上がるにつれて、台湾市場との格差は拡大する傾向にあります。
昇進するほど市場価値との乖離が生じやすいこの構造は、手塩にかけて育てた30代前後の次世代リーダー層が社外へ流出する大きな要因となっています。

リスク2:専門職における「年間37万元」のギャップ
ITやエンジニア、財務といった「プロフェッショナル層(専門職)」の処遇にも課題が見られます。台湾市場では職務・スキルベースの「ジョブ型」給与が主流ですが、日系企業は総合職の給与テーブルを適用する傾向が強く、年収ベースで台湾全体より「約37万元」低くなっています。市場相場との乖離は、優秀な専門人材の獲得・定着を難しくしています。
リスク3:製造業における「月給」と「年収」のねじれ
製造業に絞って比較すると、月給では日系(47,241元)が台湾全体(45,830元)を上回りますが、年収で比較すると日系(70.3万元)は台湾全体(73.9万元)を下回ります。日系企業は基本給が安定している反面、業績連動インセンティブや変動賞与での還元が十分でないケースがあり、結果的に年間総報酬である年収では後れを取る要因となっています。

採用後の定着を見据えた制度見直しを
これらのデータが示すのは、採用時には競争力があっても、育成後の定着段階で流出リスクが高まりやすいという現状です。一律のベースアップ昇給や年功序列の評価から脱却し、「役割・責任に応じた報酬(役割等級)」「専門職コースの創設「業績連動インセンティブ(賞与)の強化」など、台湾市場の実態に即した賃金設計の見直しが求められています。
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https://www.ys-consulting.com.tw/research/salesreport/123.html
段婉婷
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