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【ワイズリサーチ】中韓FTAが台湾工作機械業界に与える影響


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2014年12月11日

機械業界 電機機械

【ワイズリサーチ】中韓FTAが台湾工作機械業界に与える影響

記事番号:T00062757

一.中国の工作機械市場

 国内需要が拡大を続けている中国は、2009年から工作機械の輸入と消費において世界最大の市場となっている。13年の中国の工作機械輸入額は111.88億米ドルで、全世界の工作機械輸入額の29%を占めた。中国は台湾、韓国、日本の工作機械業界にとって輸出戦略の要となる市場である。

 08〜13年、中国工作機械業界の総輸入額に対して台湾からの輸入額は10%程前後を占めた。一方、韓国からの輸入額は6%前後であった。14年第1四半期〜第2四半期は、台湾からの輸入額が総輸入額の11.6%(9.75億米ドル)、韓国からの輸入額が5.8%(4.9億米ドル)であった。

 08〜14年の中国工作機械業界の輸入額推移は図1の通りである。台湾は中国工作機械業界にとって日本、ドイツに次いで第3位の輸入相手国であり、4位の韓国とはシェア4〜5%の差がある。


二.中国工作機械市場における台湾製品と韓国製品

 2013年における中国市場の台湾工作機械の製品別輸入額を見てみよう。まずマシニングセンタが3.66億米ドルで対台湾輸入総額の31.27%を占めており、最も割合が高かった。次いで鍛造・成形工作機械が2.17億米ドル(18.08%)、旋盤が2.09億米ドル(17.89%)であった。
 

 上記3製品は中国工作機械業界の対台湾輸入総額の約70%を占めており、また台湾工作機械業界の総輸出額の約30%を占めている。

 一方、13年における中国市場の韓国工作機械の製品別輸入額だが、上位3位の製品は台湾と同じくマシニングセンタ、鍛造・成形工作機械、旋盤であった。輸入額は対韓国輸入総額に占める割合が高い順に、▽マシニングセンタ、2.75億米ドル(40.84%)▽鍛造・成形工作機械、1.94億米ドル(28.88%)▽旋盤、0.72億米ドル(10.63%)——であった。上記3製品は、中国工作機械業界の対韓国輸入総額の80%を占めている。

 13年より以前、中国市場における台湾工作機械の輸入額は各製品いずれも韓国製品を上回っていた。しかし14年1月~9月には韓国製の鍛造・成形工作機械の輸入額が1.87億米ドルで、台湾製の鍛造・成形工作機械の輸入額を超えた。

 上記のデータから、台湾と韓国の工作機械は品質レベルと市場ポジションが似ていることが分かる。中韓FTA(自由貿易協定)により、台湾工作機械業界は対中国市場輸出が打撃を被るのみならず、世界シェアにも悪影響が及ぶ恐れがある。

三.中韓FTAによる影響

 台湾と韓国が中国市場へ輸出している工作機械の品目はほぼ同じである。台湾と中国が締結したECFA(両岸経済協力枠組協議)で17種類の台湾工作機械製品がアーリーハーベスト対象品目となりゼロ関税であるものの、制御装置が原産地規則に制限されているほか約55項目の工作機械製品に5~15%の輸入関税がかけられている。中韓FTAは台湾工作機械業界に悪影響を与えるだろう。中韓FTAの締結によって、韓国工作機械の輸出が中国からの制限を受けなくなり全てゼロ関税となった場合、中国市場における韓国工作機械業界と競合国の差は広がり、日本工作機械業界も市場シェアと輸出価格の面で打撃を被る可能性がある。

 もし中国と韓国がマシニングセンタ、鍛造・成形工作機械、旋盤に対する関税低減を決定したら台湾工作機械業界にも影響が及ぶだろう。ただし中国政府は工作機械産業を国防産業の基礎と見なしているため、自国の工作機械業界の支援・保護政策を継続していくことは必至である。中韓FTAの結果と影響がどうなるか、今後も観察が必要であろう。

四.台湾の工作機械業界の方向

 中韓FTAの締結は、中国市場における台湾工作機械の競争力に悪影響を与えると見られる。特に低付加価値製品は市場シェアが奪われていくだろう。この状況に対応するため、研究開発技術を強化して製品の差別化を行い、産業競争力を強化することが必須の課題となる。

 具体的な例を挙げれば、中国市場では経済発展に伴って自動化装置と生産ラインの需要が拡大しているため、工作機械メーカーはターンキーソリューションを提供する必要がある。工作機械を生産するだけではなく、ロボットアームなど必要とされる自動化装置を統合し、既存の工作機械の応用範囲を拡大させる。そうすることで製品の付加価値を高め、台湾工作機械の競争力も強化されていくだろう。

 また台湾工作機械大手メーカーにとっては、韓国の工作機械メーカーの技術力はまだ十分ではないと言える。韓国は自国の自動車産業が発展しているため、旋盤分野の技術実績は台湾より上であるが、中韓FTAが台湾のミドル~ハイクラスの工作機械に与える衝撃には限りがあるだろう。むしろ中韓FTAより2013年から続く円安のほうが台湾工作機械業界に与える影響が大きいと見られる。

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