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【ワイズリサーチ】「生産力4.0」時代の新戦略


リサーチ 経営 その他 作成日:2015年8月13日

機械業界 電機機械

【ワイズリサーチ】「生産力4.0」時代の新戦略

記事番号:T00062892

ドイツが「インダストリー4.0」の推進に全力を挙げ、米国が「サイバーフィジカルシステム(CPS)」、中国も「中国製造2025(中国製造業10ヵ年計画)」による製造業の強化を図るなど、世界各国が革新的なハイテク技術を活用した生産のインテリジェント化を進めている。こういった中、台湾でも同様に製造業の全面的な構造改革とアップグレードが急務となっている。

生産力4.0が製造業のインテリジェント化を加速させる

 国内の高齢化と労働力不足問題に応じ、台湾の製造業は革新的なハイテク技術を応用した変革を進め、生産への大規模なロボット導入によるさらなるオートメーション化、およびクラウド・コンピューティングの活用、さらにモノのインターネット(IoT)の概念を加えることで新たな発展が求められている。こういった状況の中、呉明機・経済部工業局長は今年、行政院が開催した「生産力4.0科学技術発展戦略会議」において講演を行い、「台湾の製造業者の大部分は中小企業が占めることから、生産のインテリジェント化を目指す『生産力4.0計画』を推進する上で、ITおよびオートメーション化の基礎を備えた中堅企業を優先的に選定し、中衛体系(大規模メーカーを中心とし、多くの中小メーカーが分業で生産を担う体系)を通じてモデルケースの複製、拡散を進め、中小企業の高付加価値化と生産力の向上を図り、産業構造全体の最適化につなげたい」と語った。
また張善政・行政院副院長は、「ドイツのインダストリー4.0、米国の先進製造パートナーシップ(AMP)計画と同様、行政院が打ち出した生産力4.0は製造業における製造を中心とする従来の考え方から脱却し、台湾産業が技術面ばかりを重視し、サービス面の価値を軽く見るような状況を払拭することで付加価値の向上をめざすものとなっている」と強調。

 例えば、台湾積体電路製造(TSMC)のIC設計に関する情報プラットフォームは独自のサービス付加価値運用モデルを含んでおり、同社を単純な半導体製造業者にとどまらない存在に変え、今日の成功を築き上げた指摘した。また、タイヤメーカーは製品にスマート型のセンサーを取り付けることでビッグデータ解析やモノのインターネット(IoT)を通じて走行中のパンクを事前に警告し、交通事故の減少を実現することができると語り、こういった革新的なハイテク技術を活用した付加価値の向上が、競争力を生み出す重要な要素となるとの考えを示した。

 なお台湾の製造業は1980年代、労働力の削減に向けた自動化の導入がスタート。その後、生産ライン全体のオートメーション化、電子化が進められた他、企業資源計画(ERP)面においても顧客管理システム(CRM)、サプライチェーン・マネジメント(SCM)などの手法が確立された。さらに台湾では現時点で既に、工作機械産業、金属加工産業および3D(3次元)プリントを中心とする新興製造業などインテリジェント化技術の豊かな基礎が築かれている。

ハイテクが促す工作機械産業の革新

 台湾の工作機械産業では従来より国際競争力の向上に向け、制御装置の自主開発を通じた産業構造の改革、アップグレードが進められてきた。

 例えば、台湾のオートメーション化設備大手、台達電子(デルタ・エレクトロニクス)は近年、クラウド・コンピューティング、モノのインターネット(IoT)、ビッグデータ分析などの技術を活用して十全なヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)およびオープンプラットフォーム方式の制御装置を提供し、工作機械メーカーに革新的で差別化可能な新たな能力を注入している。
 また資訊工業策進会(資策会)中区産業服務処はIT技術を活用して工場全体のデータを収集し、CNCセンサー信号を校正する技術を開発。その性能は世界的大手メーカーの製品の95%の水準に達する一方で、コストは大幅に低減。台湾の工作機械産業に大きな恩恵をもたらしている。

金属加工産業の高付加価値化

 また工作機械産業に加え、近年では金属加工産業でもハイテク技術を通じた高付加価値化が進められている。金属工業研究発展中心(金属センター、MIRDC)によると、台湾の金属加工関連メーカーは高付加価値化に向け、人工関節、脊椎インプラント、骨釘など医療器材分野への参入を積極化している他、医療機関の技術革新にも協力している。

 例えば、金属センターと成功大学医学院付設医院(成大医院)は3年前に電磁気と磁気熱を利用した使い捨て針を開発。金属センターが有する精密加工技術により針の直径を0.8ミリメートルに縮小した他、精密接合技術により異なる材料を安定した接合を実現。さらに電気化学を応用しためっきにより固着防止性能を備えた、透磁率の高い表面処理を施し、治療の利便性および安全性を高めた。

 また同センターと沛承節能科技は共同でラジオ波によるしわの除去モジュールを開発。オープンソースのオペレーティングシステム(OS)を採用することで モバイル機器のソフトウエアを通じた治療器具の操作や治療過程の記録・保存、分析、医師および患者への情報伝達が可能となった。沛承節能科技の籃建国総経理は、「現在市場に出回っているしわ取り器は主に米国と韓国から輸入しているが、旧式のOSは拡張が難しく、アップデートも少ない。このため当社と金属センターおよび成大医院は今回、ラジオ波によるしわの除去モジュールを共同開発した」と語り、これにより台湾で独自に開発されたハイエンド・メディカルコスメ機器による巨大市場の開拓を進めたいとの抱負を示した。

金属3Dプリンターが製造業のアップグレード促進

 従来型産業がハイテクを通じた変革を図る一方で、3D(3次元)プリント技術の進歩も台湾の製造業のアップグレードの鍵を握る要素となっており、既に具体的な成果が見られるようになっている。工業技術研究院(工研院)主導により設立されたレーザー産業の集積地「レーザーバレー」の試験量産工場では先ごろ、台湾独自の技術によるレーザー金属3Dプリンター第1号およびその材料を発表した。同装置は金属粉末をレーザーで溶かし、積層することで10×25センチメートルの立体物を製作することができ、積層ピッチは50ミリミクロン、製品の精密度は99%に達する。複雑な構造の金属製服飾品や金型、医療器材とその部品に応用可能で、かつ輸入設備に比べコストを半分に抑えることができる。

 工研院・南分院の徐紹中執行長は、「当院の金属3Dプリンター発表会には台湾吉而好、唐草設計、漢鉑珠宝、点睛設計などデザイン関連会社9社が出席。デザイナーから提供された2Dおよび3Dの設計図を工研院が3Dプリンターで具現化した」と強調した。なお金属製アクセサリーの場合、同プリンターを使用すれば2〜7工程を短縮できる上、正確な材料コストの計算が可能で、さらに受注から作成までわずか半日間しかかからず、特にオーダーメイド製品や在庫を作らないインターネット販売品の製造に適しているという。また徐執行長は、外国製の金属3Dプリンターは価格が2,000万〜3,000万台湾元に上るが、将来、工研院の技術を関連メーカーに移転し、業界で材料、生産、試作サービスの提供が可能になれば、1,000万元に抑えることができ、台湾メーカーの商機獲得に大きく貢献すると強調した。

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