リサーチ 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2016年4月21日
機械業界 手動工具記事番号:T00063731
世界的な不況が続く中、台湾手工具産業は長年にわたって築き上げた技術力と工業の基礎を基に、生産額と輸出額の成長を維持してきた。しかし世界市場において、中国手工具産業にシェアを奪われつつある。世界経済の厳しい環境、製品の異業種提携といった課題に直面する中、電動・空圧手工具は各分野に注目される領域である。
一、台湾電動・空圧工具産業の輸出入概況
2015年の台湾電動・空圧手工具産業の生産額は過去最高の272億5,000万台湾元で、前年比9.9%増となった。輸出額は世界的な不況の中でも同7.1%増の成長を維持し、262億4,000万台湾元に達した。輸入額は45億7,000万台湾元で、内需規模は55億8,000万台湾元、輸入依存度は81.9%、輸出比率は96.3%、自給率は18.1%であった。当産業の生産額は15年下半期から減少し始めているが、15年通年では増加している。不況下でも成長を維持していることから、当産業の良質な構造と潜在能力の高さがうかがえる。
2016年の世界経済は15年より好転すると予測されており、原材料の国際価格も回復が期待されるが、このような期待は裏切られることになるかもしれない。原油の供給過剰はいまだに改善されず、米国の原油在庫量は高い水準を維持している。さらにイランの原油輸出禁止令が解禁された場合、原油価格回復の障害となるだろう。また世界の工業需要の回復は緩やかで、供給バランスの問題がすぐに解決されることはない。これは当産業メーカーが注意すべき問題である(表1参照)
二、2015年台湾電動・空圧手工具の製品別輸出入概況
2015年の主要輸出製品は、輸出額が高い順に▽その他非回転式手持ち空圧工具、77億5,000万台湾元(29.5%)▽その他手持ち工具用部品、38億3,000万台湾元(14.6%)▽その他回転式手持ち空圧工具、25億2,000万台湾元(9.6%)——であった。輸入主要製品は、輸入額が高い順に▽その他電動手工具、11億台湾元(24.0%)▽その他手持ち電動工具、6億8,000万台湾元(15.0%)▽空圧工具用部品、5億5,000万台湾元(12.0%)——であった(表2参照)。
三、世界経済の手工具産業に対する影響
全世界で産業間の競争が激しくなる中、いかに限りある資源を利用するか、温室効果ガス排出量を削減するかといった問題に対して、台湾金属産業は厳しい挑戦を続けている。今後、台湾金属産業は技術革新とイノベーションを推進し、政府は他国との自由貿易協定(FTA)を締結することで、産業の世界市場における競争力を維持すべきだ。
2016年の見通しとしては、台湾電動・空圧手工具産業の主要輸出先である米国および欧州の経済が安定して回復しているため、輸出額の成長が期待できる。15年10月に国際通貨基金(IMF)が発表した「世界経済見通し」によれば、米国および欧州の経済成長率はそれぞれ2.8%、1.6%となる見通しで、15年の予測値よりそれぞれ0.2ポイント、0.1ポイント増となった。しかしながらその他地域の経済成長率は楽観できない状況で、とくにロシアやブラジルなどの新興国ではマイナスが続き、低迷した経済状況から脱出することは困難と予測されている。また主要国家で量的金融緩和政策が継続して実施されていることに加えて、中国経済の低迷、製品・原材料価格の下落といった多くのリスクがあり、16年の景気回復における不安要素となっている。当産業の関連メーカーもこれらの状況に注意すべきだ。
2016年も台湾電動・空圧手工具産業は安定した成長を維持する見込みだ。生産額と輸出額は小幅ながら増加し、それぞれ295億台湾元、280億台湾元となる見通しである。過去の経験から見ると、当産業は何度も発生した世界規模の金融危機をチャンスに変えて、企業の体質と構造を調整してきた。それでこそ不況という大環境の中で安定した成長を続けてくることができたのである。
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