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《新型肺炎》新型コロナウイルスの台湾加工出口区に対する影響分析


リサーチ 台湾事情 その他 作成日:2020年4月30日

機械業界 電子・半導体

《新型肺炎》新型コロナウイルスの台湾加工出口区に対する影響分析

記事番号:T00089706

 2019年12月、中国の武漢市で新型コロナウイルスが発生した。年明け1月は春節(旧正月)連休があったため、帰省と旅行目的で大勢の人が長距離移動したことから、韓国、日本、シンガポールおよび欧米各地などへ次々と感染が拡大した。
 現在、中国および各国政府は都市や国境の封鎖、自宅隔離、工場停止などの措置を実施し、感染拡大を抑えようとしている。そして、これらの措置が厳格化する中、世界経済への影響も徐々に大きくなっている。
 中国は台湾にとって最大の輸出・投資市場であり、台湾と中国の間には長年をかけて細かく分業化されたサプライチェーンが確立されている。また、日本と韓国は台湾にとって重要な原材料とキーコンポーネント輸入相手国だ。さらに、欧米各国は世界最大の消費市場であることから、新型コロナウイルスによる影響がいつまで続くかは台湾の産業と経済に大きな影響を与えるため、今後注意が必要である。

一、台湾加工出口区の産業への影響分析
 中国製造業は原材料の60〜85%を中国で調達しており、残りの40〜15%を輸入している。台湾と中国間のサプライチェーンで供給関係が最も密接な産業は、▽情報通信電子産業▽プラスチック・ゴム製品産業▽機械設備業——があげられる。次は「情報通信電子産業」のうち、加工区の半導体産業と電子部品産業について、新型コロナウィルスの感染拡大による影響を分析・説明する。
半導体産業
 台湾半導体と電子部品メーカーは初期、中国を生産の中心としていた。しかしこの10年、中国では不動産価格と人件費が高騰、さらに環境保護規制が強化されたことから、台湾メーカーは工場を東南アジアに移転させている。とくに2019年は、米中貿易摩擦の影響によってこの動きが加速した。
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国では政府が都市封鎖を実施したことから、多くの工場が稼働を停止し、物流も中断した。台湾加工出口区(輸出加工区)内のメーカーで中国に工場を設置している企業は、在庫調整と東南アジア工場の稼働率を上げることで新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えた。
 例えば、加工出口区メーカーの代表的な存在である日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング、ASEH)は生産能力の60%を台湾に移転させ、中国の生産能力を全体の5%にとどめている。主要な中国工場は長江デルタ地域に設置しており、2020年2月末には完全再開した。同社が20年第1四半期に発表した情報によると、20年第1四半期の工場稼働率は75〜80%を維持しており、新型コロナウイルスの打撃は少なく、川下メーカーにも大きな影響はないとみられる。
電子部品産業
 中国は「世界の工場」と呼ばれ、スマートフォンやノートパソコン、ローエンド情報通信設備などの90%が中国で生産されている。主要な産業クラスターは▽蘇州▽崑山▽東莞▽深圳――に位置する。2020年第1四半期、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国では複数都市の封鎖が実施された。人と貨物の移動が制限され、工場の稼働再開も遅延したため、川上の電子部品サプライヤーの出荷が打撃を被った。これが受動素子メーカーの国巨電子(YAGEO)とプリント基板メーカーの楠梓電子(WUS)などの生産にも影響を及ぼした。
 しかし、世界各国で第5世代移動通信(5G)のインフラ整備と関連技術の研究開発が進んでいることから、受動素子(積層セラミックコンデンサー、MLCC)などのキーコンポーネントメーカーは、今後も商機が期待できると予測される。

二、対策とアドバイス
新たな生産拠点の設置と生産ラインのスマート化
 中国の一部地域の情報通信技術(ICT)産業は、生産能力が短期間で復旧する見込みがない。加えて、米中関係がさらに悪化していることから、新型コロナウイルスが収束した後、両国の貿易摩擦は再燃する恐れがある。このため、中国に工場を設置している加工出口区メーカーは生産ラインを他国に分散するか、スマート生産ラインの構築に力を入れることによって、中国の工場と労働力への依存度を引き下げるべきだろう。
産業構造の転換とハイエンド製品の研究開発
 新型コロナウイルスの感染は、中国から欧米へ広がっている。世界最大の消費市場である米国もトランプ大統領が緊急事態を宣言したことから、国内の人と貨物の流通は制限されて消費力が大きく弱まった。今後、台湾加工出口区のICTメーカーは厳しい状況に直面するだろう。このため、台湾メーカーは産業構造の転換を加速させて労働力集約型から脱却し、政府の方針に合わせてスマート製造を発展させるべきだ。また、ハイエンド製品の研究開発に注力することによって、ブルーオーシャン市場の開拓を狙う必要がある。
サプライヤーのリスク評価とサプライチェーンの調整
 既存のサプライチェーンの規模や品質から考えると、中国市場と強いつながりのある加工出口区メーカーが中国市場から撤退することは困難である。このため、メーカー各社はサプライチェーン評価とリスク管理の専門チームを立ち上げ、需要やコスト、サービスと可能な対策を分析・評価することによって、原材料の供給不足への対策を再確認すべきだ。また、グローバルとローカルにおけるサプライチェーンを見直し、サプライヤーを分散させることで、産業環境の「ニューノーマル化」への対応能力を備える必要があるだろう。

機械業界-電子・半導体

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