ナンシー・ペロシ米下院議長（民主党）が2〜3日に訪台し、中国は1996年の台湾海峡危機を上回る規模となる台湾周辺海空域6カ所での軍事演習実施や、台湾からの食品輸入停止など経済制裁とみられる措置を発動した。蔡英文・総統は3日、台湾は軍事的脅威には屈しないと強調。米国議会から多くの代表団が訪れているが、友人同士の行き来は自然で正常なことで、軍事演習など必要なく、台湾はいつでも建設的な対話を受け入れると述べた。4日付経済日報などが報じた。

台湾海軍のフリゲート艦などが高雄市の左営軍港に停泊し、万一の事態に備え、出動の準備に入った（3日＝中央社）

　中国軍は4日正午から、台湾本島を取り囲む▽北部、▽北東部、▽北西部、▽東部、▽南部、▽西南部──の6カ所で軍事演習を開始した。7日正午までの予定だ。台湾軍関係者は、弾道ミサイル「東風」を発射する可能性が高く、台湾本島を越えて東部の海域に落下するなら対応しないが、本島に近い位置に落下するなら、パトリオットミサイルで迎撃せざるを得ないと指摘した。

　ジェイク・サリバン大統領補佐官（国家安全保障担当）は2日、中国がペロシ下院議長の訪台を理由に侵略行為を行うのであれば、その責任は中国側にあると強調した。米国には自身の利益を守る権利があり、中国が今後数日間に何をするにしても、警戒を続けると説明した。また、国家安全保障会議（NSC）のジョン・カービー報道官は、北京当局の反応は米国の予想の範囲内だと指摘した。

ペロシ下院議長は3日午後6時ごろ台湾を離れ、約19時間の滞在を終えた（3日＝中央社）

航空150便、航路変更

　台湾の王国材・交通部長は3日、中国軍の3日間の演習実施により、台北への国際航路18本が遮られ、1日当たり延べ約150便の航空機が迂回（うかい）する必要が生じるため、飛行時間が長くなるものの、影響は大きくないと指摘した。桃園国際空港によると、4〜5日に入境、出境、乗り継ぎする旅客は2万7000人以上。

　王・交通部長は、海運については、航空便のような固定の航路がなく、航港局が3日正午に船舶に注意喚起したと説明した。

食品類輸出停止、打撃8億元も

　行政院は3日夜の緊急記者会見で、中国当局がペロシ下院議長の訪台と前後し、台湾の食品メーカー100社余りの製品や、▽かんきつ類、▽チルド保存のタチウオ、▽冷凍マアジ──の輸入を一時停止すると発表したことについて、年間の輸出量で1万5000トン、生産額で約8億台湾元（約35億6000万円）の打撃になると説明した。うち、かんきつ類が8000トン、2億7000元で最も打撃が大きい。

　蘇建栄・財政部長は、加工済み食品の輸出額は、台湾の輸出総額の約0.1％で、打撃は非常に小さいと説明した。

　また、中国が3日からコンクリートの材料となる天然砂の台湾への輸出を一時停止したことに対し、台湾の経済部は、過去2年、海外から輸入した天然砂は使用量全体の1％未満で、中国からの輸入も少なく、問題はないと指摘した。

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