ナンシー・ペロシ米下院議長が2～3日に訪台したことに猛反発し、中国が4日正午～7日正午の4日間、台湾周辺の空海域6カ所で実弾射撃を含む軍事演習を実施し、3〜7日で中国軍機延べ110機が台湾海峡に設定された台湾と中国の事実上の停戦ラインとされる中間線やその延長線上を越えた。中国の国営テレビ局、中国中央電視台（中国中央テレビ、CCTV）は7日、いわゆる「台湾海峡の中間線」など存在せず、中国軍は今後、中間線の東側で戦闘機や戦艦の訓練を常態化すると報じた。中国軍は8日、同日も台湾周辺の海空域での軍事演習を実施していると発表した。中央社電などが報じた。

基隆港に停泊するミサイル艇。国防部は、敵情を厳密に把握しており、空域での偵察や海軍艦艇の配置などを実施していると説明した（6日＝中央社）

　台湾の国防部は6日、中間線越えが相次いでおり、台湾本島を攻撃する想定の演習だと指摘。陸・海・空軍があす9日から、南西海空域での演習や、屏東地区での重砲射撃訓練などを開始する。

　国防部によると、中国軍の訓練期間中に中間線やその延長線上を越えた軍機の飛行は、▽4日、22機、▽5日、30機（49機が台湾周辺を飛行）、▽6日、14機（20機が台湾周辺を飛行）、▽7日、22機──。

　海上では、5日、ミサイル駆逐艦「長春」が中間線を越え、高雄市の南西の外海まで航行した。7日には、台湾周辺海域で訓練していた14隻の一部が中間線を越え、台湾の接続水域の24海里（約44キロメートル）に侵入した。接続水域への侵入は、過去70年余りで初めて。

　また無人機（ドローン）が、離島の金門地区に▽4日、4機、▽5日、7機、▽7日、1機──飛来した。

　弾道ミサイルの発射は、初日の4日だけだった。台湾国防部の発表によると、中国軍が台湾周辺海域に発射した弾道ミサイルは11発。日本防衛省の推定によると、4発が台湾上空を飛翔し、1発は台北市の上空を飛翔した。

　中国中央テレビは7日、今回の軍事訓練の成果について、弾道ミサイルが台湾本島上空を初めて越えたほか、空軍や海軍が中間線を越え、台湾の海岸線などに接近したと伝えた。

　中国の海事局（CMSA）は6日、黄海南部で6〜15日に実弾射撃訓練を実施し、渤海で8日から1カ月間、軍事演習を実施するため、海域への侵入を禁止すると発表した。

日本はじめ40カ国が声援

　台湾の呉釗燮・外交部長は5日、英BBCのインタビューで、台湾の防衛は台湾に責任があり、他の国家に戦闘参加を求めることはないが、防衛のための武器や装備を提供してほしいと呼び掛けた。

　外交部は同日、中国がミサイル発射や中間線越えで、台湾海峡の現状を変更し、インド太平洋地域の平和を破壊していると非難する声明を発表した。また、台湾と国交のある友好国や、理念の近い40カ国以上の行政や立法機関など各界の友人が台湾に声援を送っていると説明した。例として、日本の岸田文雄首相が5日、ペロシ下院議長と会談し、台湾海峡の平和と安定の維持を支持し、中国に軍事演習の中止を求めたと指摘した。

　ペロシ下院議長は、岸田首相との会見後の記者会見で、アジア歴訪の目的は現状の変更ではなく、米国の上下両院は台湾海峡の平和と現状の維持を強く支持していると語った。

　アントニー・ブリンケン国務長官は5日、カンボジアの首都プノンペンで開催された日米中ロと東南アジア諸国連合（ASEAN）など計18カ国が参加する東アジアサミット（EAS）外相会議で、中国の軍事演習には正当な理由がなく、明らかな挑発行為だと批判。米国の中国、台湾に対する政策に変更はなく、米国軍の戦艦は今後も台湾海峡を航行すると説明した。

邦人退避に課題

　ETtoday新聞雲などが、日本経済新聞の報道を基に報じたところによると、シンクタンク日本戦略研究フォーラム（JFSS）の主催で6〜7日、防衛相経験者や国会議員、自衛隊の元幹部などによる台湾有事を想定した机上演習が開催された。中国が軍事行動に踏み切った場合の邦人退避の備えなどが課題として上がった。

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