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第457回 台湾法上の強要罪/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年1月9日_記事番号:T00106876

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第457回 台湾法上の強要罪/台湾

 メディアの報道によりますと、洪という男が2022年8月に、台南市の某モーテルの前で、友人のために荘という男に対し借金返済の催促をした時、荘が相手にしようとせず、自分の車を運転して立ち去ろうとしたため、洪はその車のドアを押さえつけ、荘がドアを開けて車に乗れないようにしました。

 荘が刑事告訴を提起した結果、台南地方法院(台南地方裁判所)は、審理した上で、洪の行為は、車のドアを開け、車を運転して立ち去るという荘の権利を妨害したと判断し、22年12月下旬に、洪は強要罪を構成し、45日間の拘留とするとの判決を下しました。

台湾における強要罪

 強要罪は、台湾の刑法第304条第1項において「暴行、脅迫により、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した場合、3年以下の有期懲役、拘留または9000台湾元(約3万9000円)以下の罰金に処する」と規定されています。

 本罪の成立には、次の条件が満たされる必要があります。

1.主観的に、他人に義務のないことを行わせ、または他人が権利を行使するのを妨害しようという故意を具備している

2.客観的に、暴行、脅迫という強制行為(▽直接強制行為、例えば甲が乙の手をつかみ、乙が立ち去らないようにすること、▽間接強制行為、例えば甲が乙のオートバイをロックしたため、乙がそのオートバイに乗って立ち去ることができなくなること──が含まれる)がある

 本件において、洪は荘がその場を離れることを阻止する権利を有していないにもかかわらず、車のドアを押さえつけることで、荘が立ち去らないようにした(間接強制行為)ため、強要罪を構成するとされました。

 強要罪の実務における応用範囲は極めて広く、「甲が騒音を立て、隣近所の乙の睡眠を妨害すること」、「甲が脅迫により以前交際していた女性乙に自分との復縁を要求すること」、「甲が故意にドアをロックしたため、ルームメイト乙が部屋に戻れなくなること」など、過去においてはいずれも強要罪を構成すると裁判所に認定されたことがあります。

 つまり、強要罪を構成する条件が緩いため、他人から不当な手段により何かをするようまたは何かをしないよう強制された場合、自己の権利を守るため、強要罪の刑事告訴を提起することも検討することができます。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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