ニュース 法律 作成日:2023年4月17日_記事番号:T00108450
知っておこう台湾法有責配偶者とは、不貞行為をするなどして離婚原因を作ったことに責任のある配偶者を指します。
有責配偶者の側から配偶者に対して離婚を請求することができるかという点について、日本の民法には明文の規定がありません。
しかし、日本では、判例上、①夫婦がその年齢および同居期間と対比して相当の長期間別居し、②夫婦間に未成熟の子供がいない場合で、③離婚をしても離婚請求をされた配偶者が苛酷な状況にならない場合には、有責配偶者からの離婚請求も認められる可能性があります(最高裁大法廷昭和62(1987)年9月2日判決)。
これに対して、台湾の民法第1052条第2項では、「前項以外の重大な事由が発生し、婚姻を維持し難い場合、夫妻の一方は離婚を請求することができる。ただし、夫妻の一方が当該事由について責任を負う場合、他方のみが離婚を請求することができる。」旨が規定され、明文で有責配偶者からの離婚請求が制限されています。
一部違憲の判断
当該規定について、23年3月24日、台湾の憲法法廷は、一部違憲であるとの判断を下しました(112年憲判字第4号)。判決理由の概要は以下のとおりです。
ⅰ 一方の離婚請求権を保障した場合、同時に、他方の婚姻を維持する自由に影響を与える。無責配偶者の婚姻を維持する権利を優先的に保障するため、有責配偶者からの離婚請求を制限することは、原則として、婚姻の自由を保障する憲法の規定に違反しない。
ⅱ 民法第1052条第2項ただし書きは、婚姻を維持し難い事由の発生後、相当期間を経過したか、または相当期間継続しているかを問わず一律に有責配偶者からの離婚請求を許さず、事実上完全に離婚の機会を剥奪し、個別の事案において明らかに過酷な状況をもたらすため、婚姻の自由を保障する憲法第22条に違反する。
さらに、憲法法廷は、関連機関が2年以内に本判決の主旨に沿った改正を行わない場合、裁判所は本判決の主旨に基づき裁判をしなければならないと判示しました。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
福田優二弁護士
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