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第595回 遺言の方式


ニュース 法律 作成日:2025年11月24日_記事番号:T00125473

知っておこう台湾法

第595回 遺言の方式

 台湾の渉外民事法律適用法(以下、「台湾国際私法」といいます)第58条では、相続の準拠法は、被相続人(亡くなられた方)の本国法とされています。このため、日本人が長年台湾に居住し、台湾に遺産がある場合であっても、法定相続分(民法で定める遺産の相続割合)等は日本法に準拠して判断することになります。また、台湾国際私法第60条により、遺言の成立や効力についても同様に日本法が準拠法となります。

■台湾居住の日本人の遺言

 しかし、遺言作成時の自筆の要否や押印の要否といった遺言の方式(形式的な要件)については、台湾国際私法第61条に別途規定があり、以下のいずれかの法に適合していれば、遺言およびその撤回は有効とされています。

①遺言作成地の法

②遺言者の死亡時の住所地法

③遺言が不動産に関係する場合、当該不動産の所在地法

 このため、台湾に居住する日本人が台湾で作成した遺言が日本法の遺言の形式的な要件を満たしていなかったとしても、上記①~③の法に定められた要件を満たしているのであれば、台湾法上、当該遺言は有効と判断されます。

■台湾法の要件を満たすか

 また、日本の「遺言の方式の準拠法に関する法律」第2条では、遺言の方式が次のいずれかの法に適合するときは有効である旨が規定されています。

①行為地法

②遺言者が遺言の成立または死亡の当時国籍を有した国の法

③遺言者が遺言の成立または死亡の当時住所を有した地の法

④遺言者が遺言の成立または死亡の当時常居所を有した地の法

⑤不動産に関する遺言について、その不動産の所在地法

 このため、台湾に居住する日本人が台湾で作成した遺言は、日本法の遺言の形式的な要件を満たしていなかったとしても、台湾法の要件を満たしていれば、日本法上も有効であると解されます。

 以上のように、遺言の形式的な要件については比較的広く有効性が認められますが、日本法や台湾法で定められた形式的な要件のいずれかを満たす必要があるため、遺言を作成する場合は、事前に専門家に相談することをお勧めいたします。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

福田優二弁護士

福田優二弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。

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