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第30回 企業経営者の商品提供時における警告義務


ニュース 法律 作成日:2013年9月16日_記事番号:T00045921

知っておこう台湾法

第30回 企業経営者の商品提供時における警告義務

 台湾高等裁判所は2013年7月2日に下した12年度上字第419号民事判決において、消費者が商品を正常に使用しないことにより危害が発生する可能性がある場合であっても、危害が発生する可能性が周知されているものではなく、かつ、当該正常に使用しない可能性が企業経営者に予見し得るものであるときは、企業経営者は依然として警告する義務を負う、と指摘した。

 本件の概要は以下の通りである。

 11歳の児童である甲が、ある日ファストフード店・丙においてセットメニューを購入し、テイクアウトして甲の母・乙の車に乗った際、ファストフード店の紙袋の底部が突然破けホットティーがこぼれ、甲は腹部にⅡ度の熱傷を負った。甲は、ファストフード店の店員・丁がカップのふたをしっかりと閉めずにホットティーを紙袋に入れて甲に渡し、また、丙が商品または包装用紙袋の目立つ場所に警告表示等をしていなかったと主張し、丙、丁に対して損害賠償を請求した。

 丙、丁は、当該ファストフード店で販売しているホットドリンクについて、一般的なファストフードチェーン店の販売方法や包装と差異はなく、消費者が正常に使用しない場合を除き、消費者に傷害を負わせることはなく、まして、ファストフード店が紙コップの表面に消費者に対して熱傷に注意する内容の警告メッセージを表示したり、注意の呼び掛けをしなかったとしても、当該警告メッセージなどの目的は消費者を口内の熱傷から守るためであり、本件甲の腹部の熱傷とは関係なく、よって丙、丁は甲の傷害に責任を負う必要はないと弁明した。

 裁判所は審理の上、以下の通り判断した。
丁が人をして熱傷させるに足るホットティーを販売する際は、当該丙の標準的な作業手順の定めに基づき、テープを使用してコップ本体とふたを固定させなければならないが、注意を怠り、甲にホットティーを渡す際に、こともあろうにコップ本体とふたをテープで固定しておらず、甲がテイクアウトしたものを自家用車に持ち込んだ後に、ふたがカップ本体から外れてしまい、ホットティーがこぼれて本件熱傷事故を引き起こした。また、丁はこのような結果が発生する可能性を予見できなかったわけではないため、丁は善管注意義務を果たしておらず、過失があり、損害賠償を負わなければならない。

企業への警告義務

 裁判所はまた、以下についても指摘した。

 企業経営者は消費者保護法第7条の規定に基づき、その提供する商品が市場に流通・参入し、またはサービスを提供する場合、その時点での科学技術または専門レベルに基づき合理的に期待できる安全性に合致していることを確保する責任を有する。従って、消費者が正常に商品を使用しないと危害が発生する可能性がある場合、危害が発生する可能性が周知されているものではなく、かつ、当該正常に使用しない可能性が企業経営者に予見し得るものであるときは、企業経営者は依然として警告する義務を負う。本件において、丙は紙コップ、包装用袋等に適当な警告をしていなかったため、消費者保護法に違反し、賠償責任を負わなければならない。

 本件の裁判官は企業経営者の責任を厳格に認定したため、飲食業を経営する外国企業は特に注意しなければならない。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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