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第34回 労働基準法の権利の放棄


ニュース 法律 作成日:2013年11月11日_記事番号:T00046907

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第34回 労働基準法の権利の放棄

 宜蘭地方裁判所は、2013年8月13日に2013年度労訴字第3号民事判決を作成し、和解によって当事者が放棄した権利が消滅させられ、および当事者が和解契約に明らかに定められる権利の効力を取得させられる場合、和解当事者は当該和解契約の拘束を受けなければならないと指摘した。労働基準法第59条に規定される権利は、放棄してはならないわけではないため、和解条件は、当該条項の規定を下回っていても、無効とはならない。

 本件の概要は、以下の通りである。

 原告甲は、被告乙社に雇用されていた。甲は、乙社の在職期間中、乙社によって被告丙社に派遣され、建築現場の工事の業務中、手の指を切断するという労働災害が発生した。甲は「事故の発生後、乙社と和解書を締結したが、当該和解書には『甲は、労働基準法に規定される各種の権利を放棄することに同意する』と記載されておらず、労働基準法第59条には、労働災害に関する使用者の補償責任が規定されており、法律の強行規定のため、当該条項の基準を下回るいかなる約定も無効であり、従って、乙社と丙社は、労働基準法第59条、62条、63条に基づき連帯補償責任を負わなければならない」と主張した。乙社は、「乙社は、和解書における全ての和解条件を履行しており、かつ甲と和解契約書を締結する際、甲は乙社に対してその他の賠償の請求をしてはならないと明確に約定したため、甲は、当然のことながら、乙社、丙社にいかなる連帯補償責任の負担を要求してはならない」と反論した。

 裁判所は審理の上、以下の通り判断した。

和解前の法律関係は主張できない

 和解契約によって当事者が放棄した権利が消滅させられ、および当事者が和解契約に明らかに定められる権利の効力を取得させられ、また和解契約が合法的に成立した場合、当事者は、当該契約の拘束を受け、事後に意思を覆してはならず、和解前の法律関係を再度主張してはならない。なお、労働基準法第59条に規定される権利について、最高裁判所96年度台上字第812号の判決の趣旨を参照すると、労働者が法令または契約に基づいて取得した私法上の権利は、放棄してはならないわけではないため、和解条件は、当該条項の規定を下回る場合であっても、無効とはならない。本件において、甲が乙社と締結した和解契約には、「双方は、これに基づき円満に解決し、互いに民事責任、刑事責任を追及せず、全てにつき異議がないことに同意する」と明確に定められるため、甲は、和解前の法律関係についてさらに主張してはならない。従って、労働基準法第59条等の規定に基づき、乙社、丙社に連帯補償を要求するという甲の主張は、理由がないとして、甲の敗訴判決が下された。

 本判決の結果は、使用者に有利であり、台湾の司法実務においてはあまり見られないことに注意いただきたい。 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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