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第168回 勝訴判決の執行


ニュース 法律 作成日:2014年11月12日_記事番号:T00053768

産業時事の法律講座

第168回 勝訴判決の執行

  民事訴訟の最も重要な目的は勝訴の判決を勝ち取ることですが、台湾の民事裁判においては、勝訴が確定した後の執行プロセスが少々複雑になっています。今回はこれについて紹介したいと思います。

 民事判決は「上訴ができなくなった」時に確定します。上訴ができなくなる場合というのは、通常は最高裁判所への上告が退けられた時のことを指しますが、一部の案件については、最高裁判所への上告を行うことができません。例えば、高等裁判所での裁判で勝訴し、金額が150万台湾元を超えない場合、相手方は最高裁判所へ上告を行うことができません。この場合などは、高等裁判所の判決をもって判決確定となります。

 もう一つの執行可能な判決は、「仮執行宣言を宣告された」判決です。ただ、一部の場合をのぞいて、この種の判決の執行には、担保金の提供が必要となります。

 判決確定後、敗訴側が履行を拒んだ場合、勝訴側は裁判所に対して強制執行を申請しなければなりません。しかし、裁判所を介さずに判決を履行する方が、当事者双方にとって良いことであることは言うまでもありません。

 弁護士を立てて民事訴訟を行った場合、判決確定後に双方の弁護士により判決の履行に関する協定を行うことが最も経済的な履行方法です。この際、双方の弁護士は、履行金額の計算と確認を行いますが、通常、履行される金額には、以下のものが含まれます。

1.本金: 判決主文に記載された金額。

2.利息:台湾における判決の利息は、年利5%で、現在のような低利息時代では、5%の利息は「支払いを渋った人」に対する一種の懲罰の感すらあります。例えば裁判に4年かかった場合、利息だけで20%にもなるわけです。

3.裁判費用:裁判費用は起訴または上訴時に裁判所に納付した費用です。第一審では請求金額の1%、第二、第三審では約1.5%とされています。裁判所は判決で双方が負担する比率を示します。

4.弁護士費用:台湾の法律では、第三審への上告は弁護士強制代理となっているため、弁護士費用も一種の訴訟費用とされており、請求できる訴訟費用は裁判所によって認定されます。当事者が弁護士に支払う上告または答弁費用は高額なものかもしれませんが、最高裁判所が認定する弁護士費用は、通常は3万から5万元となっています。

5.その他の訴訟費用:訴訟プロセス中に支出した鑑定費用などの必要費用も、判決に示された所定の比率で敗訴側が負担することとなります。

6.執行費用:執行費用は、執行金額の0.7%で、敗訴側が進んで履行をしない場合は、この費用も負担することとなります。

 法律実務においては、弁護士は送金額を計算した後に、利子の割引など少しの優待を加えた上で、相手側に金額を通知します。そうすることで、相手側の履行を促そうというわけです。

隠し通せない財産

 それでも敗訴側が履行をしない場合、勝訴側は裁判所に強制執行を申請することになります。すると、裁判所は「国税局」に通知を出し、敗訴側の「収入明細」と「財産目録」を取り寄せます。国税局がこれらの資料を持っているのは、収入と財産は課税の対象となっているからです。そして、収入明細に記載された給与収入から、敗訴側の雇用主を割り出し、給与を差し押さえることができ、利息所得から銀行口座の所在が分かるため、預金の差し押さえができます。また、株の配当金収入から投資の所在が分かるため、株券を差し押さえることができます。さらに、財産目録からは不動産や自動車などの財産を知ることができるので、それらも差し押さえることができます。

 強制執行の申請は、1つの裁判所に行いさえすれば、執行する財産が他の裁判所の管轄にある場合でも、申請を受理した裁判所が他の裁判所へ連絡し、執行してくれます。

 つまり台湾では、敗訴側に財産さえあれば、裁判所が有効な方法で財産を調べてくれるというわけです。過去の案件では、初めは敗訴側が公職に就いていることが分かっただけだったものが、ある年に突然、銀行から500万元を超える利子が払い込まれ隠し財産がばれたというものがありました。

 台湾の法律では、強制執行に協力しない場合、裁判所から拘留命令が出され、自由を失う可能性もありますし、その後の財産調査でもっと不利で意外な結果が出てしまうかもしれません。敗訴側にとって最も良い戦略は、「判決どおりに履行する」これに尽きます。

徐宏昇弁護士事務所

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