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第163回 判決に見る2人の検察官の悪行


ニュース 法律 作成日:2014年8月13日_記事番号:T00052082

産業時事の法律講座

第163回 判決に見る2人の検察官の悪行

 台北地方裁判所は2014年7月18日、11年に「家庭内暴力と性的暴力およびセクシャルハラスメントの防止活動に功績のあった人物」として表彰された元台湾高等検察署検察官の陳玉珍氏を、収賄の罪で懲役20年、犯罪所得2,300万台湾元を没収することを公告しました。

賄賂の対価に不起訴

 裁判所が認定した陳玉珍氏の犯罪行為には、99年から06年までの間、賭博性のあるゲームセンター業者の陳永華氏から、毎月25万~35万元を賄賂として受け取っていたことが含まれていました。陳玉珍氏は賄賂の対価として、陳永華氏に関する案件が手元に届いた際、ひとまず判断を保留しておき、同氏の別の案件が手元に届いた後に、保留しておいた先の案件を「不起訴処分」にするという方法で、長年にわたり陳永華氏の案件を不起訴にし続けました。

 当時、陳玉珍氏が所属していた板橋地方裁判所検察署の案件分配に関しては、同じ被告に関する案件(前案件)が終結していない場合、同被告に関する次の案件(後案件)は前案件と同じ検察官が担当するという規定がありました。陳玉珍氏はこの規定を悪用したわけです。

 一方、陳玉珍氏と同じ案件で起訴された郭学廉氏は、陳玉珍氏とは司法官訓練所の同期で、検察官を退職後に弁護士となり、本案件では陳玉珍氏の弁護人も務めました。郭学廉氏は自らの銀行口座のほか、母親の口座を陳玉珍氏に提供し、賄賂受け取り用口座として使用させていた他、陳玉珍氏が勾留された際には、管理していた株券を売り払うなどして、陳玉珍氏の所得を隠匿しました。結果、郭学廉氏については、懲役6月が言い渡されました。

 本案のゲームセンター業者は、11年8月から12年3月の間に、計3回の新聞広告を掲載し、陳玉珍氏の収賄と、賭博をかくまっていたことを暴露しました。また特捜部にも告発しましたが、陳玉珍氏は「誹謗中傷」に当たるとして同業者を告訴しました。結果、陳玉珍氏は12年11月12日に特捜部の取り調べを受けた後、勾留されました。

法律無視に自白強要

 今年6月26日、最高裁判所は、検察官である徐維岳氏に対し、同氏が選挙絡みの贈収賄案件(日本の公職選挙法違反に相当)を違法に訴追したと認定し、有罪判決を下しました。

 最高裁判所の判決によると、徐維岳氏は立法委員の贈収賄事件を担当していた04年12月当時、2番目の兄が経営する画廊職員、張秀嘉氏に匿名告発するよう働き掛け、警察と法務部調査局を率いて、雲林県虎尾鎮の里長であった周世龍氏の自宅を家宅捜索しました。しかし、裁判所に捜査令状を申請しておらず、里長に捜査に同意するよう署名を強制した他、捜査によって得られた証拠が贈収賄の事実を証明するに足りないことを知りながら、里町に「収賄」の罪を認めるよう脅迫しました。

 雲林地方裁判所は里長が罪を認めたとして有罪判決を下しましたが、里町は徐維岳氏にだまされたことに気付いて控訴し、05年11月25日に無罪判決を勝ち取りました。この時、徐維岳氏は別の汚職事件の容疑で05年9月6日に検察により勾留されていました。

徐維岳氏の数々の汚職

 この他、徐維岳氏が関わったとされる事件は以下の通りです:

1)05年3月、徐維岳氏は林志貞氏の依頼を受け、林志貞氏と競合関係にある晏子明氏を著作権侵害で調査した。当該案件に関して、徐維岳氏の所属する雲林地方検察は管轄がないことを知りながら、警察に命じて雲林県斗六市内に住む人物に晏子明氏の製品である言語学習機を購入させた後、晏子明氏に対する捜査令状を裁判所に申請。しかし裁判所が令状発行を認めなかったため、徐維岳氏は自ら逮捕令状に署名し、晏子明氏の会社の製品であるセットトップボックス(STB)を押収した。また、晏子明氏がパスワードをかけてパソコンに保存していた情報を全てハードディスクドライブ(HDD)に移し、林志貞氏に渡した。

2)01年2月、徐維岳氏は李建志氏の自宅を家宅捜索し、レオパード1頭、雄タカ3羽を押収した。李建志氏は当時仮釈放中であったが、第三者に間を取り持ってもらい、徐維岳氏に対して150万元の賄賂を贈った。徐維岳氏は収賄後、李建志氏を不起訴とし、李建志氏が雇っていた運転手を起訴した。

3)04年5月、徐維岳氏は雲林県大埤ゴミ処理場の案件を担当していた当時、被疑者であった李樹吉氏と1番上の兄の経営する骨董品店で会い、李樹吉氏を脅迫した。200万元の賄賂を受け取ったにもかかわらず李樹吉氏を起訴したが、裁判所は無罪判決を下した。

4)00年9月、詐欺事件で被疑者の欧振雄氏が徐維岳氏に依頼。徐維岳氏は担当裁判官と面識があり、40万元で解決できるとうそをついた。欧振雄氏は40万元を支払った後、新聞で自身が起訴されたことを知ったため、徐維岳氏に対して返金を要求、その際のやりとりを録音していた。

 徐維岳氏は一連の汚職事件で、13年6月13日に最高裁判所より懲役20年の刑が言い渡され、同年7月30日より執行されました。また今年6月13日、最高裁判所は刑事裁判の迅速な進行を目的とする「刑事妥速審判法」の規定により、徐維岳氏の職権乱用により起訴された雲林県虎尾鎮里長の周世龍氏の案件は、審理期間が長くなり過ぎたため減刑すべきとして、徐維岳氏を懲役3年4月に処した上で、「中華民国96年罪犯減刑条例」の規定に基づき懲役1年8月に減刑しました。

徐宏昇弁護士事務所

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