ニュース 法律 作成日:2014年6月25日_記事番号:T00051126
産業時事の法律講座台湾の所得税法には、個人であるか営利事業であるかを問わず、「中華民国を出どころとする所得」には所得税が課せられると規定されています。
数ある「所得」の中で、所得税法は「傷害または死亡に対する損害賠償、および国家賠償法の規定により得られた賠償金」には、所得税を課さない旨の規定を設けています。また、税務主務官庁である財政部は、関連するその他の形態の賠償金について、過去に2つの法律解釈を発布しています:
1)1973年5月14日台財税第33539号函:「訴訟当事者の双方で、一方が訴訟撤回を条件にし、もう一方が損害を受けたために支払いを得たことが確実であれば、損害賠償としての性質を持つため、非課税となる」。
2)94年6月16日台財税第831598107号函:「訴訟当事者の双方が訴訟撤回を条件に和解し、一方がもう一方からの損害賠償を受領した場合、当該損害賠償のうち、債権者の受けた『所受損害(損害)』については損害賠償としての性質があるため、非課税となる;債権者が受けた損害に属さない部分に関しては法の規定により所得税が課される」。
逸失利益は課税対象
ここで言う「所受損害」とは「現存する財産が、損害事実の発生により減少した」部分を指しており、この場合、被害者は賠償金を受領しても財産の増加にはつながらないため、課税の対象とはなりません。一方、その他の部分、例えば「所失利益(逸失利益)」とは、「新たな財産の取得が損害事実の発生により妨げられた」部分を指しており、被害者が賠償金を受領した場合、その財産の積極的な増加を招くため、課税の対象となるわけです。
しかし、各級行政裁判所の判決を見る限り、多くの案件の中で多くの納税義務者が、前述の財政部の解釈を引用し、受領した賠償金が非課税であることを主張しているようです。一方で、国税局は課税をするために、賠償金をできる限りその他の収入、または「所失利益」として解釈する傾向があります。
例えば、01年に起きた課税関連の案件は、▽当事者は土地と建屋を買い手に譲り渡す際に、建屋については政府が建て替えることを知っていた▽その後買い手が契約違反をしたため、売り手は違約金を得た──というものでした。この案件について最高裁判所は12年の最終判決の中で、▽当該売買契約の目的物は土地と「建て替え後」の建屋である▽売り手が得た違約金は、売り手の「元の建屋」が建て替えのために政府によって取り壊されたことに対する損害を賠償するものではない▽そのため課税の対象になる──と判断しました。
外国の個人・事業にも原則課税せず
以上のような原則は、外国の営利事業または個人が台湾で得た賠償金についても同様で、原則として所得税は課されません。しかし、実際に非課税となるかどうかについては、個々の案件を見てみなければ分かりません。
さて、国家の課税を保証するため、所得税法には「扣繳(源泉徴収)」という制度が設けられています。この制度は収入が発生した段階で、一定の割合の金額を国税局に先払いするもので、原則として収入の支払側が台湾の機関・団体・学校・事業である場合は、支払側が源泉徴収を行います。支払側が台湾の機関・団体・学校・事業でなく、かつ受け取り側が海外に居住する外国人、本部が国外にある外国法人、または台湾に定まった営業所がない、もしくは営業代理人がいない外国の営利事業である場合は源泉徴収をする必要はありません。
このような規定の下において、外国の営利事業または個人が台湾で受領した損害賠償金は、たとえ非課税であっても源泉徴収を行わなければなりません。具体的な状況は例えば以下のようなものです:
1)賠償金の支払側が台湾の機関・団体・学校・事業である場合は、支払側が源泉徴収を行わなければならない。金融機関で送金する場合には、送金者が源泉徴収を行った旨を証明する書類の提出を金融機関に求められる。
2)賠償金の支払側が機関・団体・学校・事業でない場合、理論上は源泉徴収をする必要はないが、金融機関で送金をする送金者が台湾の機関・団体・学校・事業の場合、前述同様、送金者が源泉徴収を行った旨を証明する書類の提出を金融機関に求められるため、多くの場合は源泉徴収を行う。
源泉徴収を受けた部分については、所得税の申告時に台湾の税務主務官庁に対して還付を求めることができます。しかし、現在多くの国で台湾での納税の実効性を認めているため、海外の営利事業に関しては台湾の税務主務官庁に還付を求めるのではなく、台湾の税務主務官庁が発行した源泉徴収証明をもって自国の税務主務官庁に当該部分の控除を申告する場合がほとんどです。
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