ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第155回 著作権法の刑罰規定が大幅改正へ


ニュース 法律 作成日:2014年4月9日_記事番号:T00049630

産業時事の法律講座

第155回 著作権法の刑罰規定が大幅改正へ

 経済部智慧財産局(知的財産局)は4月3日、現行の著作権法の多項目にわたる改正法案を公表しました。知的財産局によると今後公聴会を開催し、各界の意見を取り入れた上で本改正案に再度修正を加えるとのことです。

 今回の改正案の最大の目玉は、現行法では「最低6カ月」と最低刑期が設けられている「盗版光碟(CD、DVDを含む海賊版光学ディスク)」の有期刑規定が削除されるという点でしょう。

 知的財産局の説明によると、現行法が海賊版ディスクの刑罰に上述の制限を設けているのは、規定を行った当時、台湾の光学ディスクの年間生産枚数が世界の8割を占めており、また当時は夜市(ナイト・マーケット)や折り込み広告などでも海賊版ディスクが販売されていたことなどが原因でした。

 しかし、ここ数年は光学ディスク産業が大きく衰退し、また警察が重点的に摘発などを行った結果、近年は光学ディスクの摘発数は大幅に減少し、2012年には前年比78.61%減、13年には同24.34%減少しました。

 また、現在では海賊版ソフトウエア・映画・ゲームの流通は、従来の光学ディスクではなく、違法ダウンロードによるものが主で、最低刑期規定の必要性はなくなったと判断され、今回の改正法案で同規定を削除することを求めるに至ったわけです。

改正後は3年以下の有期刑に

 この改正法案が成立すると、海賊版ディスク販売に関する罪は盗版(海賊版)に関する一般規定が適用され、最低刑期の規定のない3年以下の有期刑となります。

 知的財産局がこのような判断をしたのは理由があります。現行の著作権法では、海賊版ディスクの作成および販売は、それぞれ最低6カ月の有期刑となっています。このため、もし警察がネットオークションなどで1回だけ海賊版ディスクを販売した個人出品者や、自らが使用したゲーム機を中古として販売する際に海賊版ディスクをおまけとして贈呈した個人出品者を摘発した場合でも、裁判所は最低でも6カ月の有期刑を下さなければなりません。

 また、台湾の法規定により、6カ月以下の有期刑は罰金で代替可能ですが、6カ月以上の有期刑の場合、被告は必ず服役することになります。現行法の規定では、裁判所は、1回だけ海賊版ディスクを販売した被告に対して一般的に6カ月の有期刑を下す一方で、海賊版ディスクを店舗で販売したり、工場で製造するなど情状が重大ではない場合、通常は3年以下の有期刑である著作権法に従い6カ月以下の有期刑を下すことができるのです。このため、海賊版ディスクの最低刑期規定が、刑罰上の不公平を生んでいることは明らかです。

 もう1つの改正理由である「盗版行為のバーチャル化・ネットワーク化による盗版光碟市場の萎縮」についても、実情に基づいた判断といえるでしょう。

中台をまたぐ新たな著作権侵害も

 しかし、知的財産局は著作権侵害に関する新たな傾向である「海峡両岸(中台)をまたいだ盗版活動」には、まだ気付いていないようです。

 「海峡両岸をまたいだ盗版活動」の例は業者が台湾のオークションサイトのアカウントを取得した後に海賊版商品を台湾で出品し、消費者が落札した後で中国から着払いで台湾に送るというものです。

 また、配送業者の説明によると、配送業者は着払いの支払いを受けた後、出品者の台湾における協力者の架空口座に振り込むか、中国の配送同業者との間で費用を相殺後に中国にいる出品者に残りの費用が支払われているようです。

 通常、警察がこの種の案件を摘発した場合、着払いの費用を受け取った配送業者、または協力者が事情を知っていたこと、つまり受け取った費用が海賊版商品の販売による所得であることを知っていたことを証明できないため、無罪になります。もちろん、中国にいる出品者はなんのおとがめも受けません。

 もう1つの「海峡両岸をまたいだ盗版活動」は中国のインターネットサイトで海賊版ゲームの無料ダウンロードを提供し、台湾の店舗でダウンロードに必要なパスワードロックを解除する技術サービスを提供するというものです。消費者はゲーム機などの装置を店舗に持ち込みパスワード解除を行えば、サイト上の海賊版ゲームを利用できます。このような方式のものは、店舗で行われるパスワードの解除行為について摘発を行うことはほぼ不可能です。

 「海峡両岸をまたいだ盗版活動」が盛況な原因は、中国と台湾で使用されている言語が近いため、意思の疎通に問題がないためです。著作権者には憎んでも憎み切れない、警察と検察には無力を感じさせるこの問題の解決は、本来であれば著作権法の改正時に検討されるべきものですが、今回は何ら審議が行われませんでした。
食堂のテレビ放送も違法になるか

 また、今回の改正案では、海賊版ディスクに関する改正以外にも、「真正品の並行輸入」は、刑事責任は負わないが、民事上の侵権責任を負うと明文規定されました。また、改正案には「再公開伝達」の定義が加わり、「既に公に伝達または転送された著作内容を、モニターなどの設備を通して公衆に再伝達する行為(例えば、食堂内のテレビで現在放送中の番組を流する行為)」とされた他、同行為に対して3年以下の有期刑規定も設けられました。

 しかし、このような規定の内容は「違法でない」と判断している裁判所の現在の見解と真っ向から抵触します。このような改正が本当に行われるのか、仮に改正された場合、裁判所はどのような判決を出すのかなど、今後の動向から目が離せません。

徐宏昇弁護士事務所

TEL:02-2393-5620 
FAX:02-2321-3280
MAIL:hubert@hiteklaw.tw  

産業時事の法律講座