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第150回 行政訴訟制度の変革


ニュース 法律 作成日:2014年1月22日_記事番号:T00048247

産業時事の法律講座

第150回 行政訴訟制度の変革

 2011年11月に大改正が行われた台湾の行政訴訟法は、翌12年9月より施行され、1年以上が過ぎました。改正の最大の特徴は、各地方裁判所に「行政訴訟法廷」が設けられ、簡易訴訟事件と交通違反に関する行政訴訟を審理するようになったことです。

 ここでいう「簡易訴訟事件」とは以下のようなものです。

1)税金課徴事件で、税額が40万台湾元以下の案件

2)行政機関裁罰事件で、過料が40万元以下の案件

3)公法上の財産関係に関する訴訟で、目的物の金額が40万元以下の案件

4)行政機関の「告誡」「警告」「記点」「記次」などの軽い行政処分に関する案件

 ただし、知的財産案件の行政訴訟は、たとえ目的物の金額が40万元以下でも、知的財産裁判所によって審理が行われ、簡易訴訟プロセスも適用されません。

簡易訴訟にも口頭弁論

 00年、行政訴訟が一審制から二審制に改正され、「高等行政裁判所」が台北・台中・高雄の3カ所に設立されました。当時は裁判官が足りず、行政訴訟法に簡易案件は口頭弁論を経る必要はないと規定されていました。今回の改正で司法院は、行政訴訟を審理できる裁判官が十分な人数に達したと判断し、各地方裁判所に行政法廷を設け、簡易訴訟での口頭弁論が必須となりました。

 今回の改正により、行政処分に不服のある市民は、近隣の地方裁判所に訴訟を提起し、裁判所に口頭で陳述することができるようになりました。これだけでも政府機関に対する不満を和らげる効果が相当ありますが、もし、地方裁判所の行政法廷が、現在の高等行政裁判所と同様に「却下・棄却」を行い、行政機関の違法、不当処分をはっきりと指摘できないのであれば、「訴え・申し立て」の機能しかないといえるでしょう。

自浄作用は働くか

 交通違反に関する行政訴訟では、原処分機関は起訴状を受け取った後、下した処分が合法・妥当であったか自ら審査し直さなければならないと規定されています。審査の結果、違法または不当と認定された場合は、原処分機関が自ら取り消し、または変更を行った上で、地方裁判所の行政法廷に通知しなければなりません。この制度を考えた人は、このような「自ら見直す」方法で「処分の乱発」を抑制できると考えたのでしょう。

 しかし、もし今回導入された行政法廷が、審理の際に厳格な認定を行わないのであれば、原処分機関の公務員も処分の取り消し・変更を行うことはないでしょう。そうなれば、制度そのものが無意味となってしまいます。

 交通違反関連の審理には口頭弁論はなく、書面審査のみです。また、裁判所が原処分機関の違法や不当を認定した場合でも、当該処分を取り消すことができるだけで、処分内容の変更はできません。

法令違反しか控訴できず

 簡易訴訟事件または交通裁決事件の判決に不服がある場合は、高等行政裁判所に控訴することができます。ただし、控訴理由は「原判決が法令に違反している」ことに限られており、「原判決は不当である」という理由での控訴はできません。また高等行政裁判所の判決は最終判決となり、それに対する上告を行うことはできません。

 同様に、高等行政裁判所が第一審となっている案件の判決については、最高行政裁判所に対して上告を行うことができますが、その理由もまた、「原判決が法令に違反している」ことに限られています。また、最高行政裁判所への上告は、弁護士強制主義(弁護士を訴訟代理人とする)が採られています。

 改正後の満足度調査では、今回の改正に満足していると回答した弁護士は60%にとどまりました。これにより、司法院の評価が高過ぎることが明らかになりました。

徐宏昇弁護士事務所

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