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第158回 会社は株券を発行する必要があるか?


ニュース 法律 作成日:2016年8月29日_記事番号:T00066094

知っておこう台湾法

第158回 会社は株券を発行する必要があるか?

 弊職は日系企業のために会社法務に関する事務をよく取り扱っている。その中で「会社は株券を発行する必要があるか?」という質問をよく受ける。この問題については、会社の形態次第であるというのが答えであり、有限会社、無限会社または両合会社であれば、法律上「出資金」を有するのみで、「株式」の概念がないため、当然のことながら株券を発行する必要がない。

 会社の形態が株式会社であれば、台湾会社法第161条の1に従って取り扱われる。当該条文には「(第1項)会社の資本金の額が中央主管機関の定める一定金額以上に達した場合、会社の設立登記または新株発行に係る変更登記から3カ月以内に株券を発行しなければならない。中央主管機関の定める一定金額に満たない場合には、定款に別段の定めがある場合を除き、株券を発行しなくてもよい。(第2項)会社の責任者が前項の規定に違反し、株券を発行しない場合、主管機関が期限を定めて発行するよう命じるほか、それぞれ1万台湾元以上5万元以下の過料を科する。期限が満了となっても発行しない場合には、引き続き期限を定めて発行するようを命じるほか、株券を発行するまで、回数につき連続してそれぞれ2万元以上10万台以下の過料を科すこともできる」と規定されている。ここでいう「中央主管機関の定める一定金額」とは、経済部90商字09002254560号書簡によれば「会社の払込資本金額が5億元以上に達する」ことを指す。つまり、払込資本金額が5億元以下の株式会社は、株券を発行するかしないかを自由に決めることができる。

売却の際に大きな違い

 株券を発行することによる実益の一つは、株主が株式を譲渡するに当たり、低税率である証券取引税を納めればよいことにある。例えば、A社の株主甲は1,000万元の価格で甲が保有するA社の株式10万株の売却を希望しているが、A社が株券を発行している場合、甲は当該株式の売却の際、基本的に取引金額の1,000分の3に当たる証券取引税を納めればよい(すなわち、1,000万×1,000分の3=3万元)。一方、A社が株券を発行していない場合、国税局の見解により、甲がその株式を譲渡することは「証券取引」に該当せず、「一般財産取引」に該当するので、1,000分の3である証券取引税は適用されず、利益額に応じた所得税を納めなければならない(甲が外国法人である場合、一般的に20%の所得税率が適用される)。

 従って、日系企業は保有する台湾会社の株式を売却する前に、その会社が株券を発行しているかどうかを必ず確認しなければならない。発行していない場合は、高額な税金負担を回避するため、当該会社に株券を発行させてから株式を譲渡することも考えられる。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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